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健保ニュース 2020年11月下旬号

後期高齢者「現役並み所得」
基準見直しは引続きの検討課題

医療保険部会は12日、後期高齢者の医療費で3割自己負担が適用される「現役並み所得」の判定基準の見直しについて、引き続きの検討課題として、今回は結論を見送ることとした。

現役並み所得者と判定される現行の基準は、単身で課税所得が145万円以上(年収約383万円以上)の後期高齢者が対象で被保険者の約7%(約130万人)を占める。

令和元年度ベースの現役並み所得者の医療給費は約9000億円。ここには公費50%が投入されておらず、公費相当分の費用4500億円を含めて、全額を現役世代が負担する後期高齢者支援金で賄っている。

後期高齢者医療制度の財源構成は、本来、後期支援金50%、公費50%だが、現役並み所得者には公費が入らないため、制度全体では47%の公費負担割合にとどまる。

現役並み所得の基準の見直しは、政府の新経済・財政再生計画改革工程表で検討課題に掲げられており、3割負担の対象者を拡大することが論点となっている。

ただ、公費が入っていない現役並み所得の基準を見直して対象者を増やすと、その分、公費負担が縮小し、逆に後期支援金が増大することになる。健保連の試算では、現役並み所得者を現在の人数から1%分拡大すると、後期支援金が約670億円増加する。

厚労省は、現役並み所得者の医療給付費に公費が投入されていない現状を踏まえ、この日の同部会で、基準の見直しに伴い「現役世代の負担が増加することに留意する必要がある」と指摘。現役世代への負担転嫁を回避するには、「現役並み所得者への医療給付費に公費負担を導入する場合、数千億円の財源が必要となる」と財源確保も課題にあげた。

また、現役並み所得の算定基礎となる現役世代の収入については、直近で平成30年度のデータは把握可能だが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている令和2年度の収入は把握できていないとし、これらの点を踏まえて、引き続きの検討課題とすることを提案した。

健保連の佐野雅宏副会長は、「今回はやむを得ない」としたうえで、対象範囲の拡大そのものには賛成であり、早期に見直すべきと主張。今回、基準を変えないにしても、現役並み所得者に公費が投入されない現行の仕組みを見直す必要性を強調した。制度見直しが行われるまでの間の財政支援の必要性も重ねて要請した。

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