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健保ニュース 2020年6月中旬号

中医協が薬価調査で意見聴取
関係業界 「実施する状況にない」と表明
診療側委員も見送りを要望

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会は10日、令和3年度からの毎年薬価改定に向けた2年度医薬品価格調査(薬価調査)の実施について、関係業界から意見を聴取した。

卸売業界と製薬業界の代表者からは、いずれも、「薬価調査を実施する状況にない」との意見が表明され、診療側委員からも実施の見送りを求める意見が続出した。

2年度薬価調査の実施の可否は、政府が7月に策定予定の「骨太方針2020」で決まる見込みだが、中医協では政府の判断に先行し、6月中に調査の実施方法について了承を得る必要がある。

期限が目前に差し迫るなか、中医協の議論は調査の実施の可否に終始し、調査内容の方向性は不透明なまま次回会合の検討へ持ち越されることとなった。

日本医薬品卸売業連合会は、仮に、薬価調査を実施することとした場合、▽現下の状況は中間年の薬価調査を実施するとされた前提とは大きく異なる▽新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波が発生した場合、薬価調査に対応できなくなりかねない▽薬価調査の結果に疑問があり、今後の流通改善に重大な悪影響を及ぼす─等の問題が生じると指摘。そのうえで、「中間年の薬価調査を実施できる状況ではない」と強く訴えた。

日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会は、3団体連名の意見として、▽新型コロナウイルスによって医療現場は甚大な影響を受けており、平時とは大きく異なる厳しい状況にある▽製薬企業・業界は、新型コロナウイルスへの有効で安全な治療薬やワクチンの研究開発に優先的かつ迅速に取り組まなければならない─等を踏まえれば、「今回の薬価調査・薬価改定を実施する状況にはない」との認識を示した。

診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「通常の医薬品流通とは異なる現状にあり、販売側・購入側とも薬価調査を実施できるような環境にはなく、仮に実施したとしても、薬価改定に必要な市場実勢価格を適切に把握することは困難ということが理解できた」と述べ、関係業界の意見を尊重した。

今村聡委員(日本医師会副会長)は、「現状のなかで、正しい薬価改定を行うことができないので延期すべき」という専門家としての意見を政府の骨太方針に反映することが中医協の役割であると主張。

一方、健保連の幸野庄司理事は、「中医協で薬価調査を実施しないという結論を決めるのは妥当な方法ではない」と指摘し、現状でも実施可能な調査内容の検討や、その調査を実施した場合に与える影響等を取りまとめるのが中医協の役割との考えを示し、議論は平行線を辿った。

2年度薬価調査の実施について、厚生労働省は、「本日の意見や今後の新型コロナウイルスの発生に伴う医療機関・薬局・卸への影響、医薬品の取引状況等を注意深く見極めつつ判断する必要がある」と言及。

一方、薬価調査の内容は6月の中医協で了承を得て実施の準備を進めることも必要との認識を示し、そういった点を踏まえつつ、薬価専門部会にどのような形で資料を提案したらよいのか検討していくとした。

なお、薬価専門部会から2年度薬価調査や関係業界からの意見聴取に関する報告を受けた総会では、診療側の委員から、2年度薬価調査の実施の見送りを求める意見が続出した。

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