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健保ニュース 2019年10月上旬号

厚労省が平成30年度概算医療費を発表
マイナス改定で0.8%増に鈍化
日数は3年連続減、単価は小幅な伸び

厚生労働省は9月26日、医療保険と公費負担医療の年次速報値である「平成30年度医療費の動向(メディアス)」を発表した。総額は42兆5712億8498万円で、前年度から0.8%増加した。医療機関の稼働日が若干少なく、これを補正すると同0.9%増にわずかに上振れするが、自然体で年2%程度ずつ伸びる最近の傾向に比べると低調だった。人口減少による0.2%の押し下げ効果があったほか、高齢化に伴う増加が1.1%にとどまったことに加え、診療報酬のマイナス1.19%改定が影響した。いわゆる医療の高度化分は1.1%増だった。受診延日数は3年連続で減少した。1日当たり医療費は診療報酬のマイナス改定により小幅な増加となった。

概算医療費には労災給付や全額自費払いの費用などが含まれておらず、1年遅れて取りまとめられる国民医療費の約98%に相当する。

平成30年度の1人当たり医療費は前年度比1.0%増の33万6728円で、伸び率が同1.5ポイント鈍化した。診療報酬改定のほかには、医療費に影響を及ぼす大きな制度改正はなかった。

受診延日数は同0.5%減の25億4453万日、1日当たり医療費は同1.3%増の1万6730円となった。

被用者本人で高い伸び
国保は加入者減で低下

75歳未満の医療保険適用分は、同0.2%減の総額24兆459億3199万円で、このうち被用者保険が同2.1%増の13兆975億6308万円、国民健康保険が同2.7%減の10兆9483億6891万円だった。

被用者保険は、1人当たり医療費が16万9070円で、同1.4%増加するとともに、堅調な雇用環境や適用勧奨などを反映して加入者数が同0.7%増の7747万人となった。とくに被保険者本人で加入者数の増加が目立ち、扶養家族では逆に加入者数が前年度を下回ったため、本人の総額が同2.7%増だったのに対し、家族の総額は概ねヨコバイで推移した。

一方、国保は1人当たり医療費が35万3457円で、同1.3%増加したものの、加入者数が3098万人で、被用者への移行と高齢化により同3.9%減少した。

被用者保険と国保を合わせた未就学児は、1人当たり医療費が同1.8%増の22万237円と、比較的大きく上昇したにもかかわらず、少子化で加入者数が同2.5%減の649万人となり、総額が同0.8%減の1兆4298億8077万円に抑えられた。

75歳以上の医療保険適用分は、1人当たり医療費が93万9325円で、同0.3%減少したが、加入者数が1746万人で、引き続き高齢化が進展して同2.7%増加し、総額が同2.4%増の16兆3961億2455万円となった。

公費負担医療は、概ね前年度並みの総額2兆1292億2845万円にとどまった。

大学病院が1施設4%増
診療所は眼科で高い伸び

診療種類別にみると、医科は前年度比1.5%増の31兆8637億6191万円で、このうち入院が同2.0%増の17兆3043億7075万円、入院外が同1.0%増の14兆5593億9116万円となった。歯科は同1.9%増の2兆9711億8595万円、調剤は同3.1%減の7兆4745億6454万円、訪問看護は同17.0%増の2617億7258万円だった。

医科は、受診延日数が同0.7%減の21億419万日、1日当たり医療費が同2.3%増の1万5143円となった。入院は受診延日数が同0.4%減の4億6702万日、1日当たり医療費が同2.4%増の3万7052円。入院外は受診延日数が同0.8%減の16億3717万日、1日当たり医療費が同1.9%増の8893円で、入院は入院外に比べて受診延日数の減少が小さく、1日当たり医療費の増加が大きかった。

病院の1施設当たり医療費は同2.9%増の27億7384万円で、大学が同4.2%増の188億8457万円、公的が同2.8%増の55億5446万円、法人が同2.4%増の17億8816万円、個人が同4.0%減の7億1687万円と、大学の伸びが大きかった。

診療所の1施設当たり医療費は同0.1%増の1億165万円だった。伸びが大きい診療科は、眼科が同2.4%増の1億1459万円、耳鼻咽喉科が同1.8%増の8626万円、産婦人科が同0.7%増の7178万円で、皮膚科の7536万円と整形外科の1億3177万円がヨコバイ、内科が同0.3%減の1億340万円、外科が同1.2%減の1億323万円、小児科が同1.6%減の6753万円となった。

歯科は、受診延日数が同0.1%減の4億1722万日とほぼヨコバイだったが、1日当たり医療費が同2.1%増の7121円だった。

1施設当たり医療費は、歯科病院が同3.9%増の9341万円、歯科診療所が同2.2%増の4174万円だった。

薬局薬剤料4.5%減

調剤は、医薬分業の進展などから処方せんが同0.6%増の8億4361万枚となった一方、診療報酬改定で1枚当たり医療費が同3.6%減の8860円と大きく落ち込んだ。

薬局1施設当たり医療費は同4.3%減の1億2895万円だった。
 電子請求分レセプトから調剤医療費の動向を分析したところ、薬局の実質的な経営原資である技術料は、薬学管理料が同8.6%増加したものの、調剤料が微減し、さらに基本料が同2.6%減少し、全体で同1.0%増にとどまった。調剤医療費の4分の3を占める薬剤料は、薬価引き下げが響いて同4.5%減となった。

内服薬の処方せん1枚当たり薬剤料は同5.7%減の5273円だった。これを分解すると、処方せん1枚当たり薬剤種類数が同0.3%減の2.8剤、1種類当たり投薬日数が同2.3%増の24.1日、1種類1日当たり薬剤料が同7.4%減の78円となる。投薬日数の延びが続くなかで薬剤種類数の減少と薬価改定で単価が著しく下がり、薬剤料が抑制された。

薬剤総額が大きい内服薬は、循環器官用薬の8238億円、中枢神経系用薬の7895億円などで、伸び率は腫瘍用薬の同10.7%増が最高だった。

後発医薬品の数量割合は30年度末に77.7%で、前年度末から4.7ポイント上昇した。後発品80%以上の薬局の割合は同19.6ポイント上昇の55.8%になった。

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