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健保ニュース 2019年9月中旬号

健保組合の平成30年度決算見込
拠出金大幅減で一時的収支改善
保険料率は過去最高の9.21%

健保連は9日、記者会見を開き、「平成30年度健保組合決算見込の概要」を発表した。それによると、30年度の経常収支差引額は3048億円(前年度比1697億円増)で、黒字決算となることがわかった。これは、前期高齢者納付金及び退職者給付拠出金の大幅な減少による影響が大きく、こうした一時的な要因を除けば黒字額は圧縮される。赤字組合数は423組合で前年度より157組合減少したものの、依然として全組合の3割を超えている。平均保険料率は前年度に比べ0.043ポイント増の9.210%となり、過去最高となった。これで平均保険料率は11年連続の増加となる。

高齢者医療への拠出金額は3兆4537億円、義務的経費(法定給付費と拠出金の合計)に占める拠出金割合は46.36%で、依然として高水準となっている。さらに、拠出金割合が50%以上の健保組合は397組合と、全組合の28.5%を占めており、拠出金負担が健保組合財政を圧迫している構図に変わりはない。

被保険者数1675万人 総加入者数2958万人

30年度の健保組合決算見込は、31年3月31日に現存する1391組合の決算見込状況を集計した。30年度は、新設7組合、解散6組合、合併消滅4組合で、健保組合数は前年度に比べ3組合減少した。

被保険者数は1675万1937人で、前年度に比べ23万9007人(1.45%)増加した。一方、被扶養者数は同16万6282人(1.28%)減の1282万6938人となった。これに伴い、扶養率は同0.02人減の0.77人となり、過去最低を記録した。

被保険者数と被扶養者数を合わせた総加入者数は2957万8875人(同7万2725人、0.25%増)となった。また、被保険者のうち、短時間労働者被保険者数(31年3月末)は、約2万人(12.1%)増加し、21万8128人だった。

保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は37万2409円で前年度比1970円(0.53%)増、平均標準賞与額は114万7658円で同1万7542円(1.55%)増と、月額及び賞与額とも増加した。月額と賞与額を合わせた被保険者1人当たり年報酬総額は561万6566円(同4万1182円、0.74%増)となった。

保険料率の負担状況
事業主分が初の5%超

平均保険料率(一般保険料率+調整保険料率)は9.210%で、前年度比で0.043ポイント増加した。9%以上の健保組合は922組合と全組合の66.3%を占めた。料率を引き上げたのは169組合(全組合の12.1%)で、平均の引き上げ幅は0.612%だった。2年連続で料率を引き上げた組合も36組合あり、そのうち12組合は料率を引き上げたにもかかわらず2年連続で赤字決算となっている。協会けんぽの平均保険料率10.0%以上の健保組合は312組合(前年度比2組合減)で、全組合の22.4%を占めている。

保険料率の負担状況をみると、事業主分5.007%、被保険者分4.203%となり、初めて健保組合の事業主負担分が協会けんぽ平均の5.0%を上回った。事業主負担分が5.0%超の組合数は635組合(全組合の45.7%)にのぼる。

拠出金が2.1%減少
前期、退職者が大幅減

30年度決算見込の経常収支状況をみると、経常収入総額は前年度比1903億円(2.32%)増の8兆3906億円、経常支出総額は同207億円(0.26%)増の8兆859億円で、経常収支差引額は3048億円の黒字を計上。これで5年連続の黒字決算となった。

黒字幅が前年度比で1697億円増加した要因は、被保険者数や平均月額・賞与額の増加とともに、保険料率の引き上げにより経常収入が2.3%増加したのに対し、経常支出は拠出金総額の大幅な減少や診療報酬のマイナス改定による法定給付費の伸びの抑制などで0.3%の増加にとどまったことが影響した。

収入面をみると、経常収入総額の98.6%を占める保険料収入は8兆2730億円で、前年度に比べ1884億円(2.33%)増加した。健保連では、保険料収入増の要因について、▽被保険者数の増加1121億円増(増加分の59.5%)▽平均月額の増加345億円(同18.3%)▽平均賞与額の増加256億円(同13.6%)▽保険料率引き上げによる増加162億円(同8.6%)─と分析している。

被保険者1人当たりの保険料収入額は49万3854円で、前年度に比べ4262円(0.87%)増加した。これを19年度の1人当たり額(38万3612円)と比較すると、11年間で11万242円も増加したことになる。

一方、支出面は、法定給付費が3兆9955億円で、総加入者数は増加したものの、診療報酬のマイナス改定(▲1.19%)の影響を受け、前年度比738億円(1.88%)の増加にとどまった。被保険者1人当たり額は23万8508円で、同1015円(0.43%)増加。また、加入者1人当たり額は13万5078円で、同2166円(1.63%)増となった。

後期高齢者支援金や前期高齢者納付金などの「支援金・納付金等(拠出金)」の合計は3兆4537億円で、同728億円(2.06%)減少した。拠出金の主な内訳は、▽後期高齢者支援金1兆8928億円(同604億円、3.30%増)▽前期高齢者納付金1兆5396億円(同545億円、3.42%減)▽退職者給付拠出金211億円(同788億円、78.89%減)─などとなっている。

健保連では、後期高齢者支援金は全面総報酬割の導入や後期高齢者数の増加などで前年度に比べ増加したが、前期高齢者納付金は診療報酬マイナス改定による前期高齢者1人当たり給付費の伸びの抑制が見込まれたことや2年前の28年度精算分で追徴が発生しなかったことなどが影響し、減少。退職給付拠出金は、27年度から退職被保険者の新規適用がなくなり、対象者が急減したことで大幅な減少となったと分析した。このため、退職者拠出金による一時的な影響を除けば、拠出金総額は60億円(同0.2%)の増加に転じると推計した。

被保険者1人当たりの拠出金額は20万6165円で、前年度に比べ7394円(3.46%)減少した。後期高齢者支援金は11万2988円(同2021円、1.82%増)、前期高齢者納付金9万1905円(同4634円、4.80%減)、退職者給付拠出金1259円(同4792円、79.19%減)となっている。

また、保健事業費は、総額で同122億円(3.60%)増の3509億円、被保険者1人当たり額で同440円(2.15%)増の2万948円と、高い伸びを示している。保健事業費総額は法定給付費の1割近くに相当しており、厳しい財政状況のなかでも、健保組合が保健事業の推進に積極的に取り組んでいることが伺える。

現行制度導入前と比較
料率は1.9ポイント増

現行の高齢者医療制度創設前の19年度と直近の30年度決算見込を比較すると、保険料収入は、この11年間で総額2兆2228億円増加した。この間の健保組合の平均保険料率は、19年度7.308%から30年度9.210%と1.902ポイント(26.03%)増加し、同期間の協会けんぽの引き上げ幅1.8ポイント(8.2%→10.0%)を上回っている。

保険料率の引き上げ幅を個別組合でみると、協会けんぽの1.8ポイント増を超える健保組合は730組合で、さらに2ポイント以上の引き上げは673組合、3ポイント以上の引き上げも173組合あった。

また、支出面を比較すると、この11年間で、保険給付費は、総額で7990億円、被保険者1人当たり額で3万5513円増加。拠出金に至っては、総額1兆1316億円、被保険者1人当たり額で5万8936円増と、大きく増加している。

義務的経費に占める拠出金割合をみると、19年度は同割合が50%以上の健保組合が99組合(全組合の6.5%)であったのに対し、30年度では397組合(同28.5%)と大幅に増加しており、拠出金負担の増加が組合財政悪化の大きな要因となっていることがわかる。

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