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健保ニュース 2023年9月上旬号

6年度診療報酬改定の基本方針
社保審・医保部会が議論着手
佐野副会長 適正化、効率化の視点重視

社会保障審議会医療保険部会は8月24日、令和6年度診療報酬改定の基本方針策定に向けた議論に着手した。

この日の会合では、厚生労働省が前回の振り返りとして、診療報酬改定の流れや4年度改定の基本方針を提示し議論した。

診療報酬改定は、年末の予算編成過程を通じ内閣が決定した改定率を所与の前提として、医療保険部会・医療部会で策定された「基本方針」にもとづき、中央社会保険医療協議会で具体的な点数設定等にかかる審議を行い実施される。

社保審医療部会も8月25日に「基本方針」の議論に着手しており、12月上旬に両部会の意見を集約するスケジュールとなっている。

前回改定の基本方針は、▽新興感染症等にも対応できる医療提供体制の構築など医療を取り巻く課題への対応▽健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現▽患者・国民に身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現▽社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和─の4点を改定に当たっての基本認識とした。

こうした基本認識の下、①新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築②安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進③患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現④効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上─の4項目を改定の基本的視点として提起。①と②は重点課題に位置づけた。

健保連の佐野雅宏副会長は、「前回改定の基本方針の検証が必要」と指摘し、「引き続く重要課題として残っているものと、状況が変わっているもの等を整理するべき」との考えを示した。

前回改定に引き続く重要課題としては、「団塊の世代の後期高齢者への移行が進み、医療費が今後ますます増加する一方、支え手が減少していくという厳しい見通しを踏まえれば、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保が不可欠と考える」と強調。

また、「入院医療、外来医療は、依然として効率的で効果的な医療提供体制が構築されたとは言えない状況」と問題提起し、「次期改定で取り組みを強化、加速すべき」と要望した。

さらに、「これまで長らく賃金、物価が伸びないなかで医療費が増加し続けてきたことを踏まえると、適正化、効率化の視点は極めて重要だ」との認識を示し、「後発医薬品、長期収載品に関わる見直しや、国民、患者の視点から医療DXを医療の効率化、質の向上へと確実に進めていく視点も必要」と訴えた。

一方、新型コロナウイルス感染症については、「感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類感染症になったことや、6年に1回の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定ということを踏まえても、前回改定とは異なる要素として重視すべき」と言及した。

横本美津子委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は、「少子高齢化が進行し、制度の支え手である現役世代の減少が顕著であるなか、前回の基本方針と同様、社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和は引き続き重要だ」と述べたうえで、中長期的な視野から医療需要の変化に備えた提供体制の見直しを促す改定とするよう要請した。

また、「企業は成長と分配の好循環の実現に向けて、構造的な賃上げに取り組んでいる」と指摘。経済、財政の調和という観点からも、現役世代の負担増に十分配慮し、好循環を阻害しないような解決を求めた。

猪口雄二委員(日本医師会副会長)は、政府の「骨太方針2023」で、「同時改定では物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、患者・利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な対応を行う」と明記されたと言及。

そのうえで、「食事療養費については26年間、見直しが行われておらず、ほとんどの病院が給食部門は赤字であり、給食業者も提供困難となっているという現実がある」とし、「骨太方針2023にもとづいた6年度の同時改定が実現されるよう求める」と要求した。

また、新型コロナウイルス感染症に限らず、新たな新興感染症にも対応できる感染症対策を診療報酬上で評価することの検討が必要との考えを示した。

袖井孝子委員(NPO法人高齢社会をよくする女性の会副理事長)は、「診療報酬改定は基本的に供給側の視点が重視される」と主張し、「日本の医療において患者の権利、人権、尊厳、意思決定という視点が非常に欠けている」と発言。

そのうえで、「医療は、単に提供すればよいというものではなく、誰のため、何のための医療であるかをもう少し考えていただきたい」と強く訴えた。

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