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健保ニュース 2023年2月上旬号

河本専務理事が情勢報告
医療保険制度改革関連法案に主張反映
健保補助金の制度設計に対応

健保連の河本滋史専務理事は1月20日の理事会で、最近の情勢を報告した。今後の主要スケジュールとして、昨年末に決定した医療保険制度改革の内容を盛り込んだ法案が、通常国会へ2月に提出され、4月前後に審議されることを想定。現役世代の負担軽減という主張がキープされるよう、関係議員と連携し、国会での質疑や附帯決議への反映へ的確に対応していくと強調した。さらに、8月の令和6年度予算概算要求に向けて、430億円増額された健保組合の補助金にかかる詳細な制度変更も並行して進むことを見通し、厚生労働省をはじめ関係省庁と調整を行っていく意向を示した。(河本専務理事の情勢報告要旨は次のとおり。)

保険証廃止の検討へ
健保組合に協力要請

今後の主要スケジュールについて、6月21日まで150日間を会期とする通常国会が1月23日に開会する。

厚生労働省関係は6件の法案提出が予定されており、昨年末に固まった医療保険制度改革の関連法案のほか、感染症対策の司令塔機能として「国立健康危機管理研究機構法案(仮称)」も予定されている。

医療保険制度改革の関連法案は、「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(仮称)」で、予算関連法案として2月に国会へ上程、4月前後の審議が想定される。

具体的な内容の1点目は出産育児一時金にかかる後期高齢者医療制度からの支援金の導入で、出産育児一時金の財源の一部を後期高齢者にも負担してもらう。

2点目は、後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率を見直し、後期高齢者の保険料と現役世代の拠出金におけるバランス、分担のなかで、後期高齢者の保険料負担を増やす。

3点目は、前期財政調整制度における報酬調整の導入で、前期高齢者納付金の3分の1部分に報酬調整を導入する。

さらに、かかりつけ医機能が発揮される制度整備も盛り込んでいる。
 国会での法案審議にあたっては、現役世代の負担軽減という、われわれの主張がしっかりキープされるよう、関係議員と連携し、国会での質疑、あるいは附帯決議への反映に向けた働きかけも必要に応じ行っていきたい。

法案の成立後には、詳細な制度設計の検討が進む。例えば、かかりつけ医機能が発揮される制度整備は、かかりつけ医機能報告制度の創設等の具体化に向け関係審議会で検討される。

また、今回の医療保険制度改革で増額された健保組合向けの補助金の詳細な設計にも対応する必要がある。

政府の「骨太の方針」は、例年6月の半ばくらいに決定されるが、先般、岸田文雄首相が3月末を目途に異次元の少子化対策を取りまとめるよう小倉將信こども政策担当相に指示した。

それを「骨太の方針」に盛り込むため、1月19日に「こども政策の強化に関する関係府省会議」が開催された。財源問題も含め議論の動向を注視していく。

介護保険制度改革に向けた自己負担2割の対象範囲拡大や所得の高い第1号被保険者の保険料引き上げなどは、医療保険制度改革で後期高齢者の保険料負担増に伴い、半年先送りされたと想定されるが、確実な実施へ後押しする対応を図る。

8月末を締め切りとする政府の6年度予算概算要求に向けた動きは春頃から進んでくる。増額される健保組合への補助金であるプラス430億円の詳細な制度変更も並行して進むことから、厚労省をはじめ関係省庁と調整を行っていく。

そのほか、ICT関係では、4月から医療機関のオンライン資格確認義務化がスタートする。1月8日時点でカードリーダーの申し込みは98%に達しているが、運用開始施設はまだ44%に留まる。

厚労省は、進捗遅れの要因として、システムベンダーの対応能力不足によるシステム改修遅れと説明し、2月までに院内システム改修の契約をしたが、ベンダーの理由で3月末の期限に間に合わない時は最大で9月まで義務化を猶予する経過措置が設けられた。

また、来年下期の健康保険証廃止の検討も進んでくる。
 健保連は昨秋、マイナカード保険証一体化対応チームを設置した。また、昨年末に政府の検討会の下に設置された専門家ワーキンググループにもメンバーとして参加している。

この件については、健保組合の皆さんと緊密な情報交換を行いながら、現場の課題をワーキンググループの場でも主張し、迅速に課題を解決する必要がある。皆さんの協力をお願いする。

1月26日から電子処方箋の運用が開始される。スタート時点での運用期間は極めて短く、オン資導入機関の7割という政府の普及目標と大幅な乖離が発生しそうだ。

健保連は社会保障審議会医療保険部会でも、電子処方箋の国民・患者向けのPR、対応施設のわかりやすい公開、導入効果の情報開示とPDCAを回した継続的な改善を求めているが、今後もしっかりフォローするとともに、普及促進をマスコミや政治に強く訴えていきたい。

未だに詳細なスケジュールが明らかでない部分も多いが、全容が判明次第、速やかに健保組合に知らせるとともに、関係委員会等でも必要な対応を議論する考えだ。

5年度の健保組合拠出金
後期、前期、介護とも増加

令和5年度の健保組合の拠出金について、1月13日の政策委員会で厚生労働省から説明を受けた。

4年度は2年度の新型コロナウイルス感染症禍の受診控えの精算戻りで一時的に拠出金が大幅に減少したが、5年度の後期高齢者支援金は全体で4年度の6兆3600億円に対し6兆8800億円で5100億円増加。前期高齢者納付金も4年度の3兆5300億円に対し3兆5800億円と500億円増加する。

このうち、健保組合の拠出金は、後期高齢者支援金が1700億円、前期高齢者納付金が700億円それぞれ増える。後期高齢者支援金は4年度から概算が1000億円増え、精算戻りが600億円減り、2兆1400億円。前期高齢者納付金は4年度から概算が400億円、精算も300億円増え、1兆5100億円となる。

後期高齢者支援金と前期高齢者納付金の合計額は3兆6400億円で、3兆6500億円だった3年度並みの水準となった。

5年度の健保組合の介護納付金は1兆400億円で、4年度から400億円増加し、過去最大となる。内訳は、概算1兆1600億円、精算▲1200億円だった。

健保組合の医療費動向
コロナ禍で高い伸び継続

令和4年10月診療分の1人当たり医療費をみると、被用者保険は前年同月比4.06%増で、稼働日数を補正すると、同6.46%増となる。

健保組合は同4.47%増で、稼働日数を補正すると同6.87%増となり、高い伸びが継続している。

新型コロナウイルス感染症にかかる医療費は489億円で、第7波のピークは過ぎたが、依然として高いレベルにある。4年4月から9月までの半年間で、被用者保険のコロナ医療費は3500億円に達し、このうちの大部分を診療報酬上の特例措置が占めている。

今後、新型コロナウイルス感染症を2類から5類に見直す等の議論も出てきているが、そういったなかで診療報酬上の特例措置もしっかり見直していく必要がある。

4年8月の概算医療費の補正後伸び率は、前年同月比0.7%増となっている。新型コロナウイルス感染症の第7波の影響で、被用者保険は同5.3%増加する一方、国保や後期高齢者はあまり伸びていない。

第7波のなかで伸びが低いのは、現役世代を中心に医科入院外が大幅に増える一方、高齢者を中心に医科入院が減っているためだ。

1人当たり医療費でみても、補正後伸び率は被用者保険の同5.6%増に対し、75歳以上は同3.1%減となっている。

診療種類別の医療費は、医科入院が同6.4%減少する一方、医科入院外は同8.9%増加。
 医科入院と医科入院外の1人当たり医療費の伸びを保険種類別にみると、医科入院は全体が同7.0%減で、伸び率は全年齢層でマイナスとなる。一方、医科入院外は被用者保険の同21.8%増、未就学者の同27.5%増に対し、75歳以上は同4.2%増と大きな差が生じている。

医科診療所の1施設当たり医療費(補正後伸び率)を診療科別にみると、小児科が同52.4%増、産婦人科が同40.9%増、耳鼻咽喉科が同27.2%増と大きく増加しており、小児科、耳鼻咽喉科は新型コロナウイルス感染症、産婦人科は不妊治療にかかる医療費の影響と想定される。

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