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健保ニュース 2020年10月中旬号

財政審分科会が社会保障を議論
財務省案 後期2割「広範囲」に適用
定額負担拡大は保険財政へ寄与

財務省は8日、財政制度等審議会・財政制度分科会で、医療分野を含む社会保障制度の見直し案を示した。このなかで、全世代型社会保障への転換を図る観点から、原則1割負担となっている現行の後期高齢者の医療費の自己負担については、「可能な限り広範囲」で2割を導入することを提案した。導入の時期は、団塊の世代が後期高齢者入りする「2022年度初までに改革を実施できるよう、施行時期を定めるべき」とした。

政府の全世代型社会保障検討会議が昨年末にまとめた中間報告では、一定所得以上の後期高齢者の自己負担を2割とする方針が示されたが、2割が適用される対象者の所得基準は決まっていない。検討会議は年末に最終報告をまとめる予定で、2割対象者の所得基準と合わせて、外来受診時定額負担の仕組みなど医療保険制度改革の具体化が主要論点となっている。

財務省が同分科会に提出した資料で、現状のままでは、2022年以降、現役世代が後期高齢者医療を支えるために拠出している支援金が一層増大し、「現役世代の保険料負担がますます重くなる」と予測。現状の給付と負担の関係は、「現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」として、こうした構造が是正されないことを問題視している。

長期化する新型コロナウイルス感染症との関連も考察し、▽患者のレセプトの状況から、新型コロナに伴う受診控えは一時的なもので、特に後期高齢者医療への影響は他制度と比べて相対的に小さい▽年金収入は減少していない─と指摘した。

また、後期高齢者医療など負担のあり方全般については、所得のみならず、金融資産の保有状況も勘案して負担能力を判定するための、具体的な制度設計を検討すべきと主張した。

3割が適用される後期高齢者の現役並み所得の判定基準については、世帯収入520万円以上(単身383万円以上)も合わせて要件としていることから、課税所得が145万円以上と現役並み所得に該当しても、現役並みと評価されないケースがあると指摘し、対象範囲を拡大する観点から、世帯収入要件の見直しを求めた。これにより3割の対象者を増やす考えだが、現役並み所得の医療給付費には、公費が投入されておらず、公費相当分も含めて9割を現役世代の支援金で賄っている。

こうした財政構造を維持したまま、現役並み所得の範囲を拡大すると、後期高齢者医療制度に占める公費負担の割合が減少する一方、支援金が増大することとなり、健保連は、現役並み所得の判定基準見直しに伴う現役世代の負担増に反対を表明している。

このほか、財務省は、制度改革の論点となっている受診時定額負担の拡大について、全世代型社会保障検討会議の中間報告に沿って検討する方向で提言した。

紹介状なしで大病院を外来受診すると、患者は初診で最低5000円、再診2500円の定額負担を支払わなければならず、この定額負担の費用は病院の収入となっている。大病院の範囲は特定機能病院と令和2年度から400床以上だった地域医療支援病院の範囲を200床以上に拡大した。

検討会議の中間報告では、対象病院を200床以上の一般病院に拡大するとともに、定額負担の額を増やして、増額分は病院の収入に充てず、医療保険の負担を軽減する仕組みに改める方針を示した。財務省は、「明確な形での医療保険財政へ寄与となるよう制度的対応を構ずるべき」と主張した。

同分科会は、11月下旬を予定する来年度予算編成に関する建議の取りまとめに向けて議論を深めており、この日は、財務省の見解をベースにして社会保障の総論、医療、子ども・子育て、雇用の各分野を議論した。

会合終了後、同分科会の増田寛也会長代理は記者会見し、医療費の増加傾向を指摘したうえで、「制度の根幹、抜本的な部分をどうするのかという議論を緩めてはいけない」との考えを強調した。

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