健保ニュース
健保ニュース 2026年5月合併号
経済同友会が提言
中長期的視点の診療報酬改定に転換
社会保険医療を消費税課税対象に
経済同友会(山口明夫代表幹事)は4月23日、「持続可能で強靭な医療システムへ~7つの危機に立ち向かう2つの改革~」と題した提言を発表した。「短期的サイクル」「閉鎖性」「財政交渉偏重」といった現行の診療報酬改定を、「中長期ビジョン型」に転換することが不可欠だとして、「中長期のマスタープランに基づく診療報酬改定」を打ち出し、社会保険医療を消費税の課税対象にすることと、地域別の診療報酬制度の導入を主張した。
提言は医療の持続可能性を脅かす「7つの危機」が迫っているとし、「漸進的な改善にとどまる政策では、もはや現行制度の維持は困難だ」と指摘。新興感染症や地政学リスクなど有事を見据えた強靭な体制構築を見据え、「制度の根幹に踏み込んだ抜本的な改革の断行が不可避だ」と主張している。
7つの危機への「具体的施策の方向性」を整理するとともに、既存の制度の根底にある前提条件や運用の枠組みを抜本的に再構築(パラダイムシフト)すべきとする2つの基幹改革をまとめた。
7つの危機は、①医療機関経営の危機─地域医療崩壊の危険水域②医療費膨張と財政硬直化の危機─負担限界が迫る国民皆保険③医療提供体制の構造的危機─病院過多、機能不明瞭、再編停滞④医療従事者の不足、偏在の危機─「量」と「質」両面の低下⑤有事対応の危機─感染症、医薬品供給不足、地政学リスク⑥医療機関へのサイバー攻撃の危機─診療継続と医療情報を脅かす新たな脅威⑦制度ガバナンスの危機─診療報酬に過度に依存した意思決定構造──。
具体的な施策の方向性として、②は「EBPMに基づくワイズ・スペンディングと応能負担の徹底による給付と負担のメリハリ付け」を挙げた。③は「各圏域の特性に即応した柔軟な施策展開を可能とする制度設計」、⑦は「診療報酬のみならず、税制措置、補助金、規制改革を重層的に組み合わせた、中長期的な視座に立つ医療制度改革プロセスの再構築」など。
2つの基幹改革は、中長期のマスタープランに基づく診療報酬改定と医療安全保障の実行力強化。
マスタープランの策定は、関係省庁や有識者らが参加する首相直轄の会議体を新設して策定する想定。医療制度全般を俯瞰した5~10年サイクルの計画で、給付と負担の均衡や医療と介護の連携を含む「医療提供体制のあるべき姿」、医療安全保障などを盛り込む。
加えて、診療報酬改定の「原則、方向性、中期目標」も示し、2年に1回の改定を、「マスタープランに基づく『機動的な短期調整』として再定義」する。
具体的な提案は、社会保険医療を消費税の課税対象にすることと、「地域別診療報酬制度」の導入の2つ。
前者は、医療機関に生じる控除対象外消費税について、診療報酬で補てんされているものの、「補てんのばらつき」が顕在化していることを課題に挙げた。特に、高額な医療機器を購入する一般病院や急性期拠点病院で補てん不足が顕著だと分析した。
こうした構造的な不公平は、高度医療の維持や設備更新を阻害し、地域医療の質の低下を招きかねないと危惧し、「診療報酬から消費税補てん分を切り離し、社会保険医療を課税対象に転換する税制改正を検討すべき」と主張した。
後者は地域ごとの人口構造や医療需要などの乖離を踏まえ、全国一律の診療報酬体系で均質なサービス提供を維持することには限界が生じていると指摘。地域の実情に応じた柔軟な制度運用を可能にするため、地域別診療報酬制度の導入を提起した。
全国共通の「基礎診療報酬」を国が、地域固有の加算・減算措置を反映する「地方裁量診療報酬」を都道府県がそれぞれ決定する2階建ての構造への再編を唱えた。
医療安全保障については、サイバーセキュリティー対策の強化と感染症への対応を促した。