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健保ニュース 2025年6月下旬号

骨太の方針を閣議決定
社会保障費に物価動向反映
後期支援金含め現役世代の負担抑制

政府は13日、重要課題や予算編成の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。予算編成において、社会保障費については、高齢化による伸びに「経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算する」と明記した。医療保険制度については、後期高齢者支援金を含め「現役世代の負担上昇の抑制を図りつつ、給付と負担の見直し等の総合的な検討を進める」方針を掲げた。一方、医療・介護・障害福祉分野の賃上げに向け、次期報酬改定などで的確に対応するとした。

骨太の方針は、13日に首相官邸で開かれた経済財政諮問会議(議長・石破首相)などの合同会議での取りまとめを踏まえ、持ち回り閣議で決定された。

政府は同日、骨太の方針のほかに、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」、「規制改革実施計画」、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」、「地方創生2.0基本構想」も併せて閣議決定した。

石破首相は合同会議で、「経済全体のパイを拡大する中で、物価上昇を上回る賃上げを普及、定着させ、現在と将来の賃金、所得が継続的に増加する成長型経済の実現を目指す」と表明し、「賃上げこそが成長戦略の要」と力を込めた。

また、経済を成長させながら財政健全化に取り組むことで、災害などの有事に備えた財政余力を確保しつつ、将来の経済、財政、社会保障の持続可能性を確保するとした。

予算編成にあたっては、昨年の「骨太の方針2024」で、「2027年度まで、歳出改革努力を継続しつつ、経済・物価動向等を踏まえ、各年度の予算において適切に反映する」としていた。

今年の骨太の方針は医療機関の経営状況や税収の伸びを踏まえ、これまでの改革を通じた保険料負担の抑制努力を続けつつ、経営の安定や現場で働く人の賃上げに確実につながるよう的確に対応するとした。

こうした考えに基づき、社会保障費について、高齢化による伸びに経済や物価の動向などを踏まえた対応に相当する増加分を加えるとした。

全世代型社会保障構築へ
自公維の合意を反映

主要分野ごとの重要課題と取り組み方針の筆頭には、全世代型社会保障の構築を掲げ、「本格的な少子高齢化・人口減少が進む中、技術革新を促進し、中長期的な社会の構造変化に耐え得る強靭で持続可能な社会保障制度を確立する」とした。

医療・介護従事者の賃上げに向け、次期報酬改定をはじめ的確に対応するため、24年度診療報酬改定による処遇改善や経営状況の実態を把握、検証し、年末までに結論を得られるよう検討する。

加えて、OTC類似薬の保険給付のあり方の見直しや病床削減など、自民、公明両党と日本維新の会の合意を踏まえた項目も盛り込まれた。年末までの予算編成過程で検討し、早期に実現可能なものは来年度から実行するとした。

また、現役世代が急速に減少し、高齢者数がピークを迎える40年ごろを見据えた中長期的な視点からも、「現役世代の負担を軽減しつつ、年齢に関わりなく能力に応じて負担し、個性を生かして支え合う「全世代型社会保障」の構築が不可欠」と強調。改革工程を踏まえ、医療・介護DXなどの実現を目指すとした。

医療保険制度については、給付と負担の見直しのほか、高額療養費制度について、長期療養中の患者など関係者の意見を丁寧に聞いた上で、今秋までに方針を検討し、決定するとした。

また、妊娠・出産・産後の経済的負担軽減のため、26年度をめどに標準的な出産費用の無償化に向けて対応するとした。妊婦健診の公費負担促進や「出産なび」の機能充実、小児周産期医療体制確保に向けた医療機関の連携・集約化・重点化を含めた必要な支援を行うほか、安全で質の高い無痛分娩を選択できる環境整備も盛り込んだ。

このほか、今年の通常国会で成立した年金改革関連法を踏まえ、さらなる被用者保険の適用拡大を進める。

医療・介護提供体制
2040年を見据え対応

医療提供体制では、40年ごろを見据え、医療と介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるように、質が高く効率的な医療提供体制を全国で確保するとした。具体的には、医療需要の変化を踏まえた病床数の適正化やかかりつけ医機能が発揮される制度整備、医療の機能分化・連携、医療と介護の連携などを進める。

また、地域医療構想については、医療機関機能と病床機能の明確化や国、都道府県、市町村の役割分担など、年内に国がガイドラインを策定し、各都道府県の新たな地域医療構想策定を支援する。

介護提供体制は、40年以降を見据え、地域医療構想を踏まえた医療と介護の連携や介護予防の推進、介護テクノロジー導入による生産性向上などに取り組む。

介護保険制度は、利用者負担の判断基準見直しなど給付と負担の見直しに関する課題について検討し、年末までに結論を得るとした。

予防・健康づくり
コラボヘルスを支援

予防・健康づくり、重症化予防に関しては、さらなる健康寿命の延伸でウェルビーイングの向上を図り、性別や年齢にかかわらず生涯活躍できる社会を実現するとした。データヘルス計画に基づくコラボヘルスや、保険者のPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)や健康経営と共同した効果的な取り組みを支援するほか、働き盛り世代の職域でのがん検診を普及させるため、受診率や精度管理の向上の取り組みを推進する。

また、更年期障害や骨粗しょう症など、総合的な女性の健康支援の推進も盛り込んだ。これには、MRIを活用するなど女性の負担にも配慮した乳がん検診の推進など、がん検診の受診率向上に向けた取り組みも含まれる。

少子化対策については、こども・子育て加速化プランの本格実施のために、改革工程に基づく歳出改革を徹底して財源を確保する。併せて、26年度からの子ども・子育て支援金徴収の円滑な導入に向け、国民の共感を得られるように制度の意義や支援金の使途を周知するほか、危機的な少子化の現状を踏まえ、官民が連携して社会全体でこども・子育て世帯を支える意識を醸成するとした。

12月の円滑移行へ
マイナ保険証の利用促進

賃上げを起点とした成長型経済の実現に向けては、「「投資立国」及び「資産運用立国」による将来の賃金・所得の増加」を掲げた。この中で、23年に決定された「医療DXの推進に関する工程表」に基づき、医療・介護DXの技術革新の迅速な実装により、全国で質の高い効率的な医療・介護サービスが提供される体制構築のために必要な支援をしつつ、政府を挙げて強力に推進する姿勢を示した。

このため、医療DXの基盤であるマイナ保険証の利用を促進しながら、12月の経過措置期間終了後、円滑にマイナ保険証を基本とした仕組みに移行する。

全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報共有サービスの普及や電子処方箋の利用拡大、PHRの利活用を進めるなど、支援策の具体化を検討し、普及を促進するとともに、介護情報基盤の整備や診療報酬改定DXを進めるとした。

このほか、医療DXの運営に係る母体になることを踏まえた社会保険診療報酬支払基金の抜本改組に関しては、今年の通常国会に提出された医療法改正案に盛り込まれていたものの、成立に至らなかったことから、再度骨太の方針に書き込まれた。

各省庁は今年と昨年の骨太の方針に基づいて、中長期的な経済財政の枠組みに沿って26年度予算を編成する。骨太の方針では、「その際、重要な政策の選択肢を狭めてはならない」としている。

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