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健保ニュース 2025年6月中旬号

協会けんぽ調査研究フォーラム
ビッグデータ活用し政策提言
重点的な受診勧奨に効果

全国健康保険協会(北川博康理事長)は5月27日、東京都内で第11回「協会けんぽ調査研究フォーラム」を開催した。

冒頭であいさつした北川理事長は、加入者約4000万人のレセプト・健診などのビッグデータを分析して得た研究成果を、効果的な加入者の健康づくりに反映させることで医療費適正化を実現する方針を示し、「今後は、政策提言にも反映させたい」と話した。

また、「加入者の健康を守ること、医療保険制度の持続性の確保を図ることは、保険者にとって喫緊の課題だ」と述べ、協会けんぽの「保険者機能強化アクションプラン」を実践し、データ分析に基づく課題の抽出や解決に取り組むとした。

特に第2期(2022~24年度)の最終報告について、3年間の研究成果を踏まえた事業活用への提案を行いたいとし、実践的な知見を提供する場になることを期待した。

フォーラムでは、第4期(24~26年度)1年目・3期(23~25年度)2年目の中間報告7件、2期(22~24年度)最終報告5件、協会けんぽ3支部による研究報告が行われた。

2期最終報告に登壇した飯塚敏晃氏(東京大大学院教授)は、「予防医療が本人と家族に及ぼす効果に関する研究」を報告した。

協会けんぽでは、生活習慣病の重症化予防対策として、健診結果(血圧、血糖、脂質)で「要治療」「要精密検査」と判断されながら医療機関を受診していない人に受診を勧奨している。

この受診勧奨の効果を検証したところ、「健康状態が悪い者」を対象に受診勧奨を行うと、1年後の健診で大きな「健康改善」が見られることがわかった。飯塚氏は、対象を効果が期待できる人に絞った重点的な受診勧奨を提案した。

研究では、受診勧奨基準値に着目した。糖尿病の一次勧奨値は空腹時血糖値126mg/dlとされるが、「ギリギリ上」または「ギリギリ下」に該当する対象者を抽出し、勧奨の有無による影響を分析した。

受診を勧奨された人の1年後の健診結果をみると、血糖値、LDLコレステロール値が改善した。また、運動などの生活習慣にも改善がみられた。

さらに、受診勧奨の効果が、対象者の属性によって違いがあるか分析を進めた。このうち大きな特徴がみられたのが、健康状態の違いによる影響だった。

初回の健診結果を踏まえ、健診・問診項目ごとに「良い」から「悪い」までのグラデーションを付け、健康状態を測る指標とした。次に、糖尿病の一次勧奨値が1年後の健診で改善していたかどうか、改善度に応じた4段階の「健康改善」の指標に設定し、分布を調べた。

この結果、初回の健診で「健康状態が悪い」とされたグループの人たちが、健康改善度が最も高いところに多く分布しており、「健康」な人よりも「不健康」な人への受診勧奨の効果が高いことがわかった。

また、3期の2年目中間報告に登壇した野村恭子氏(秋田大大学院教授)は、「就労女性の性に関する健康と労働生産性の実証研究」について経過報告した。

女性特有の疾患を月経困難症、月経前症候群、更年期障害、生殖がんと定義した上で、それぞれの受療率や更年期障害治療薬の服薬、併存疾患、労働生産性の指標(離職率)を勘案し、リスク因子を検討したことを説明した。次年度は、傷病手当金との関連分析を進める。

協会けんぽは、令和4年度から外部有識者を活用した調査研究事業を実施しており、今回は第2~4期の計12班の有識者が報告した。

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