健保ニュース
健保ニュース 2025年6月中旬号
特定機能病院のあり方検討会
要件見直し 大学病院本院以外に着手
「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」(座長・松田晋哉産業医科大教授)は5月29日、大学病院本院以外の特定機能病院の承認要件の見直しに向けた議論に着手した。
厚生労働省はこの日の会合に、特定機能病院の承認要件の一つである「高度の医療の提供、開発及び評価、並びに研修を実施する能力を有すること」について、現在の対応状況を示した。対応状況は特定機能病院を大学病院本院が属する「総合型」と、がんや循環器など特定領域に対応する「特定領域型」に分けて比較した。
入院実績から高度医療の提供状況をみると、特定領域型が悪性腫瘍で多くの患者を受け入れる一方、総合型は誤嚥性肺炎や股関節・大腿近位骨折の患者の受け入れに加え、救急搬送の受け入れ実績も高かった。
研修の実施は、特定領域型は臨床研修医や専攻医の受け入れが少なく、総合型は研修実績が少なかった。なお、大学病院本院以外の特定機能病院では、卒前教育や医師派遣は想定されていない。
特定機能病院は高度医療の提供や人員配置、構造設備などを要件に、厚労相が承認する。今年1月時点で全国に88施設あり、うち79施設が大学病院本院、9施設が大学病院本院以外となっている。
同検討会は先行して大学病院本院の承認要件のあり方について議論し、2月の前回会合で見直しの方向性を取りまとめた。
取りまとめでは、現在の承認要件をすべての大学病院本院が満たすべき「基礎的基準」として整理した上で、個々の大学病院本院が地域の実情も踏まえて自主的に実施する取り組みを「発展的(上乗せ)基準」として評価する仕組みとした。
その際、大学病院本院が医学生の卒前・卒後教育の流れを踏まえた医師派遣機能を担っている点を評価し、「医師派遣」を承認要件に追加することとした。
健保連の松本真人理事の代理で参考人として出席した伊藤悦郎常務理事は、「特定機能病院は、他の医療機関では対応が困難な医療を幅広く提供し、先進性と網羅性を満たすことが重要」との考えを示した。
研修や教育、医師派遣の実施は基本と述べ、「大学病院本院の基礎的基準と同じレベルで機能を兼ね備えていることが不可欠」と主張した。
また、制度の見直しに言及し、「地域医療に支障が出ることがあれば、経過措置の設定もやむを得ない」としつつ、「見直しは必要最低限の期間と内容に限定すべき」との考えを示した。
吉川久美子構成員(日本看護協会常任理事)は、類型別にみると、求められる機能への対応状況に大きな差異がみられると指摘し、「特定機能病院として取り扱うのは大学病院本院のみとすべき」との考えを示した。また、見直しによって特定領域型が承認要件から外れた場合も、「専門領域での高度医療提供に対する評価は必要だ」と指摘した。
長尾能雅構成員(名古屋大病院副病院長)は、特定機能病院として承認されるための管理・安全面の変革や専門領域の体制維持への努力が報われなければならないと主張し、「承認から外された場合にも、受け皿としての評価は必要」と述べた。