健保ニュース
健保ニュース 2025年6月中旬号
オンライン診療の「補助行為」
規制改革答申 報酬上の評価を明確化
政府の規制改革推進会議(議長・冨田哲郎JR東日本相談役)は5月28日、地方創成や賃金向上・人手不足対応などを柱とする答申をまとめ、石破首相に提出した。答申は、オンライン診療を受ける患者に対し、看護師が医師の指示に基づき行う点滴や注射といった補助行為について、診療報酬上の評価を明確化することが必要だと指摘し、厚生労働省に今年度中の検討・措置を求めた。
補助行為については、現行の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、「D to P with N」(患者が看護師といる場合のオンライン診療)で実施する場合、「医師は看護師に指示することで予測された範囲で治療行為や新たな症状への検査が可能」とされている。
ただ、同会議の下に設置された健康・医療・介護ワーキンググループでは、▽診療報酬が算定できないものがあり、実質的に実施が困難▽点滴、注射、血液検査、尿検査などの補助行為を診療報酬上算定可能にしてもらいたい──との意見が挙がっていた。答申はこうした実態を踏まえ、「診療報酬の算定方法には不明確な部分がある」と明記した。
オンライン診療の医療法上の定義については、今国会に提出された医療法改正案に盛り込まれ、手続きや提供施設に関する規定の整備が図られる。
オンライン診療は、現行指針を前提とした医事法制の解釈運用では、▽公民館での実施も医師非常駐の診療所開設届が必要となる▽巡回車を使った巡回診療には回数制限がある▽巡回車には住所がなく診療所として開設できない──などといった課題があり、普及が進まない要因となっていた。
こうした課題の解消に向け、医療機関の届出義務、実施基準、オンライン診療受診施設の定義などを制度化するための検討が昨年度中に進められた。
さらに、オンライン診療の運用拡大とともに地域ニーズに応じるための選択肢が増えると見通し、厚労省に活用実態の情報収集と事例公表を求めた。今年度に開始し、9年度まで継続する。診療所や自宅だけでなく、職場や介護事業所、オンライン診療専用車両、公民館など具体的な場所に適した活用実態を示す。
また、穿刺血(指先から採取する微量な血液)を検体に用いた検査薬のOTC化を可能とする基準について、8年度に実態調査を踏まえて検討するよう求めた。
OTC化については、厚労省の薬事審議会医療機器・体外診断薬部会が3月に行った「「低侵襲性の穿刺血など血液検体を用いた検査薬」の一般用検査薬への転用等に関するとりまとめ」において、「現時点では時期尚早」と結論づけられている。
これに対し、答申は、生活習慣病や性感染症などを早期に発見、受診・治療する環境を整備するため、まずは厚労省が「とりまとめ」で「課題」とされた項目を調査し、それを基にさらに検討を深めるべきとした。
併せて、セルフケア・セルフメディケーションに関する消費者ニーズを背景に、「研究用」と称する薬機法未承認の検査キットが販売され、容易に入手できる現状にあると指摘。消費者が薬機法の承認を受けた体外診断用医薬品と誤認することや、検査性能が不確かな検査キットの使用による重症化・感染拡大を防ぐ観点から、ガイドラインを作成し、事業者に準拠するよう要請するとした。
このほか、24時間対応が可能な薬局がない地域において、訪問看護師による薬剤提供を想定した訪問看護ステーションに配置できる医薬品の拡充(7年措置)を明記した。
答申は、政府が閣議決定する「規制改革実施計画」に反映される。