健保ニュース
健保ニュース 2025年6月中旬号
健保組合への財政支援など
自民議連 皆保険堅持を政府に提言
福岡厚労相「現役世代の負担に配慮」
自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」の鈴木俊一会長(総務会長)をはじめ5人の議員が4日、厚生労働省に福岡厚労相を訪ね、「国民皆保険制度の堅持に向けた提言」を手渡し、健保組合に対する財政支援などの要望の実現に向けて取り組むよう申し入れた。福岡厚労相は健保組合が果たす役割の重要性を踏まえ、社会保障の改革工程に沿って取り組むにあたり、現役世代にとって過度な負担にならないよう配慮が必要との考えを示した。議連は引き続き、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や来年度予算案への要望の反映に向けて活動する。議連は6日、加藤財務相にも同じ提言を手渡した。
福岡厚労相を訪ねたのは、鈴木会長、上川陽子副会長(前外相)、村井英樹幹事長(前官房副長官)、大岡敏孝幹事(元環境副大臣)、田畑裕明事務局長(元総務副大臣)の5人。健保連の佐野雅宏会長代理と鷹野英樹総務理事が随行した。
申し入れ後、田畑事務局長は記者団に対し、「健保組合の財政状況は厳しいとの認識の下、議連として要望の実現を訴えた」と述べた。
福岡厚労相からは、健保組合の役割の重要性を十分認識した上で、改革工程に基づく取り組みを進めるにあたり、「とりわけ現役世代の過度な負担にならないようにする観点が非常に重要だ」という発言があったと説明した。
また、健保組合への財政支援については、昨年度から措置された高齢者拠出金負担への支援拡充などを踏まえ、「8年度予算でもしっかり対応できるよう努力する」と述べたという。
田畑事務局長は、議連と福岡厚労相の面談が「前向きな、いい意見交換だった」と振り返り、「骨太の方針や来年度政府予算に要望を反映させるよう、引き続き議連として働きかけたい」と話した。
佐野会長代理は、「現役世代の負担軽減に向け、様々な施策をお願いしたい」と述べた。
提言は高齢化による医療費増大などにより、「現役世代に偏重した負担構造のまま、給付と負担の格差が拡大していけば医療保険制度の崩壊につながりかねない」と危惧し、将来を見据え、不断の見直しに取り組むよう求めている。
具体的には、①年齢によらない負担能力に応じた国民負担への見直し②保険給付範囲の見直し③医療・介護の提供体制のさらなる総合的改革④現役世代の負担軽減につながる歳出改革の徹底と公費負担の見直し──などを進めるべきだとし、「国民皆保険の堅持に向けて、あらゆる手段を講じて取り組む」よう政府に提言した。
あわせて、「現役世代の負担軽減は喫緊の課題」という認識の下、「医療保険制度の中核を担う健保組合の安定した運営の確保が不可欠」だとして、健保組合への財政支援を要望した。
提言は5月13日に開かれた同議連の第9回総会で、健保連からのヒアリングと、出席議員との意見交換を踏まえ採択された。
加藤財務相への申し入れは鈴木会長、上川副会長、村井幹事長、田畑事務局長の4人が行い、健保連からは佐野会長代理と伊藤悦郎常務理事が随行した。(「提言」の全文は次の通り)
厚生労働大臣
福岡 資麿 殿
国民皆保険制度の堅持に向けた提言
令和7年6月4日
国民皆保険を守る国会議員連盟
わが国の社会保障制度の中核をなす国民皆保険は、すべての国民が必要な医療を受けられる仕組みとして、1961年以降、長きにわたり運営されてきた。しかし、今、その基盤が揺らぎつつある。一つは人口構造の大きな変容である。少子高齢化に伴い人口減少が進み、2040年にかけて高齢化率は約35%に上昇し、医療費は70兆円超に達することが見込まれている。さらに、今後、医療に加え、介護や子育て施策の需要が高まることも予想される。現役世代に偏重した負担構造のまま、給付と負担の格差が拡大していけば医療保険制度の崩壊につながりかねない。
国民皆保険は、国、国民、保険者、医療提供者など多くの関係者が参画することによって支えられている。当然、関係者間の利益が相反するケースはある。しかし、すべての関係者が国民皆保険の危機的現状を直視し、将来を見据え、不断の見直しに取り組むべきだ。具体的には、①年齢によらない負担能力に応じた国民負担への見直し、②保険給付範囲の見直し、③医療・介護の提供体制のさらなる総合的改革、④現役世代の負担軽減につながる歳出改革の徹底と公費負担の見直しなどを進めるべきである。
政府においても、国民皆保険制度の堅持に向けて、あらゆる手段を講じて取り組むことを提言する。
また、現役世代の負担軽減は喫緊の課題であり、そのためには医療保険制度の中核を担う健康保険組合の安定した運営の確保が不可欠である。健康保険組合に対する支援は現役世代の支援につながり、ひいては全世代型社会保障構築につながる。このため、高齢者拠出金負担や高額薬剤など医療費の高額化に伴う健保組合の財政悪化、および、国の施策推進に貢献する健康保険組合に対し必要な財政支援を講ずるよう要望する。