HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2025年5月合併号

健保ニュース

健保ニュース 2025年5月合併号

中医協・6年度改定の特別調査
受付割合0.11% リフィル処方箋の普及低調
患者、医師への周知が課題

中央社会保険医療協議会は4月23日の総会で、診療報酬改定結果検証部会から、「令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(6年度調査)」として、「長期処方及びリフィル処方箋の実施状況調査」の報告を受けた。

リフィル処方箋の薬局での受付回数は6年7月診療分で8万9153回、全処方箋の受付回数に占める割合は前年同月比0.03ポイント増の0.11%にとどまった。

病院と診療所にリフィル処方箋の課題を聞いたところ、いずれも「患者への制度の周知が十分でない」が最も多く、「医師への制度の周知が十分でない」が続いた。患者調査(郵送)でも、リフィル処方箋の制度を「知らなかった」が41.1%と最多となり、「制度の内容まで知っていた」が33.2%、「名称だけ知っていた」が22.2%だった。

長期処方は症状が安定している患者に対し、医師が薬剤の処方日数の長期の処方(例えば、特定疾患処方管理加算では28日以上を評価)を行うことができる。一方、リフィル処方箋は4年度改定で新設されたもので、医師と薬剤師の適切な連携の下で一定期間内に最大3回まで反復利用できる。

6年度改定では、▽特定疾患処方管理加算はリフィル処方箋を発行した場合にも算定可能とする▽かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料に、医師の判断でリフィル処方や長期処方の活用が可能なことを患者に周知することを追加する──といった見直しが行われた。

調査は1月に実施し、病院・診療所527施設(回答率26.4%)、医師428人、保険薬局438施設(同43.8%)、患者(郵送922人、インターネット3000人)から回答を得た。

長期処方・リフィル処方箋の普及状況を①4年7月診療分②5年7月診療分③6年7月診療分──のNDBから分析した。

薬局での受付回数は、長期処方は、3445万7482回(全処方箋の受付回数に占める割合49.1%)②3514万4849回(同47.1%)③3713万1496回(同47.9%)──だった。一方、リフィル処方箋は、①4万761回(同0.06%)②6万3136回(同0.08%)③8万9153回(同0.11%)──となった。

リフィル発行しない理由
長期処方で対応可

病院・診療所調査では、リフィル処方箋制度の認知度を調査した。リフィル処方箋の発行実績のない病院でも「制度の内容まで知っている」との回答割合が85.8%と高い一方、発行実績のない診療所では64.3%となり、20ポイント以上の開きがあった。

今後の見通しについて聞いたところ、発行実績のない病院では「患者希望があれば検討」(52.5%)が最多となる一方、診療所では「検討には消極的」が最も多く、59.5%を占めた。

医師調査によると、「リフィル処方箋を発行したことがある」と回答した医師が病院では19.0%、診療所は58.0%と診療所の方が多かった。

リフィル処方箋を発行しなかった理由は、「長期処方で対応が可能だったから」が病院で57.1%、診療所で59.6%と最も多かった。リフィル処方箋の発行ではなく長期処方を行った理由を聞いたところ、病院は「患者にリフィル処方箋が必要とされていない」が62.0%、次いで「薬を処方する際には医師の判断が毎回必須と考える」が49.0%と続いた。診療所もほぼ同様の傾向が見られた。

保険薬局調査では、かかりつけ薬剤師指導料などの施設基準の届出を行っている薬局は、リフィル処方箋の受付実績のある薬局で75.7%、受付実績がない薬局でも59.2%となることがわかった。

また、患者からリフィル処方箋の相談を受けた薬局は、処方箋を受け付けた薬局で23.9%、受け付けたことのない薬局では3.6%だった。相談者は長期処方を受けている患者が最も多く44.3%。相談内容は、「リフィル処方箋の制度内容を知りたい」が66.2%と最も多かった。

患者のメリットに
通院時間と医療費の減

患者調査(郵送)では、①長期処方②リフィル処方箋──を使用するメリットとデメリット(複数回答)を聞いた。メリットは「通院にかかる時間的負担(予約・移動・待ち時間)を減らせる」がともに最も多く①86.2%②84.3%、次いで「通院によってかかる医療費が安くなる」が多く①58.4%②62.3%だった。

一方、デメリットは「医師に診てもらう機会が減る」がともに最も多く①66.4%②55.1%だった。このほか②では「処方箋を保管しておくことが手間」が49.2%、「調剤予定日の前後7日でしか薬を受け取れないのは不便」が37.1%となった。

今後、症状が安定している場合に長期処方を利用したいか聞いたところ、「利用したい」(51.1%)と「どちらかと言えば利用したい」(31.2%)を合わせると8割に達した。

リフィル処方箋では、「利用したい」(31.8%)と「どちらかと言えば利用したい」(28.5%)を合わせると6割で、「どちらかと言えば利用したくない」(22.8%)と「利用したくない」(15.1%)の合計は約38%だった。

また、「利用に必要だと感じること」は、「信頼する「かかりつけ医」がいること」が最も多く①73.3%②70.7%だった。

調査結果を受け、健保連の松本真人理事は、「リフィル処方箋による財政効果は4年度改定で見込まれたマイナス0.1%に及ばないことは明らかだ」と強調した。

患者の認知度向上に保険者として取り組む姿勢を示す一方、「医師の認知度にも課題がある」と指摘した。その上で、「医学的判断を前提としつつ、可能な限り患者の希望に沿い、リフィル処方箋をより積極的に活用してほしい」と要望した。

また、リフィル処方箋を発行しなかった理由のうち、「長期処方で対応可能」という理由が最も多かったことに対し、「そもそも4年度改定のマイナス0.1%は、受診回数の適正化効果を見込むもので、長期処方の期間をより長くすることで患者の通院負担を軽減することは重要だ」と主張した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年