健保ニュース
健保ニュース 2025年5月合併号
財政審が社保改革の方向性
かかりつけ評価精査し初再診を抜本的見直し
病診の差異踏まえ改定を
財務省は4月23日の財政制度等審議会(十倉雅和会長)の財政制度分科会に、持続可能な社会保障制度の構築に向けた今後の改革の方向性を示した。
4月の「かかりつけ医機能報告制度」のスタートを契機に、全人的なケアを重点的に評価する診療報酬体系の構築に向け、かかりつけ医機能の診療報酬上の評価の精査・整理、「外来管理加算」「機能強化加算」といった初再診料加算の抜本的な見直しを提言した。
今後、国民・患者が地域のかかりつけ医機能を有する医療機関を選択し、利用することを見据え、令和8年度の診療報酬改定では、「診療側の提供体制や経営上の都合ではなく、真に患者本位の治療を実現できる報酬体系に再構築すべき」と訴えた。
財務省は、地域住民に身近な立場で全人的なケアを総合的かつ継続的に行う医療機関が選択されることが重要と考え、現行のかかりつけ医機能の診療報酬上の評価を改めて精査・整理した上で、初再診加算を見直すよう提案した。
具体的には、「計画的な医学管理」を評価し、再診料に加算する「外来管理加算」は再診料に包括化し、他のかかりつけ医機能を評価する管理料・加算の間で役割や機能を整理・統合する。
また、継続的管理が必要な患者に対し、質の高い診療機能を発揮することを評価する「機能強化加算」は、初診時に的確に評価しているか検証した上で廃止を含めて見直す。
さらに、「地域包括診療料・加算」「認知症地域包括診療料・加算」は、認知症を含めた複数の慢性疾患を有する患者への全人的なケアを評価するにふさわしい報酬となっているか検証した上で、両者を統合し、評価体系を再構築する。
財務省は5年度の医療機関の経営状況について、「無床診療所のみ経営する医療法人の利益率は、8.6%と中小企業の全産業平均よりも高い水準になる」と指摘し、病院と診療所では経営状況や費用構造が異なることを踏まえ、メリハリのある改定が必要と訴えた。
また、病院・診療所間の偏在を是正する経済的インセンティブ措置として、「地域別診療報酬の仕組みの活用の検討」を提案した。ただ、当面は、「診療所過剰地域で1点当たり単価の引き下げを先行し、公費の節減効果を活用した医師不足地域での対策を別途強化することも考えられる」とした。
一方、診療報酬上のディスインセンティブ措置として、アウトカム指標導入とセットで「特定過剰サービス」に対する減算措置の導入を求めた。
併せて、後発医薬品の数量シェアが9割に迫っている状況を指摘し、「これまで政策推進のために手厚く評価した加算でも、政策目標の達成状況を踏まえながら報酬体系の再編を検討すべき」とした。現在、調剤基本料を算定している約8割の薬局が後発医薬品調剤体制加算を算定しており、医療費換算で年間約1600億円に上ると試算した。
給付範囲見直しで
保険料負担を極力抑制
財務省は、報酬の3割に迫る現役世代の保険料率は今後も継続的に上昇すると見込み、「保険給付範囲の見直しを引き続き実施しつつ、経済・物価等に適切に配慮することで、現役世代の保険料負担増を可能な限り抑制することが重要」とした。
予算統制外で行われる新規医薬品の保険収載などが医療費の伸びの大きなシェアを占めると指摘。「高額薬剤が続々と登場し、普及する中で、保険料負担の軽減を含め、医療保険財政の持続可能性の確保が大きな課題」とした。
その上で、「最適な医療が患者に適切に提供されることを前提に、能力に応じた負担への制度の見直しと併せて、高額薬剤を含めた最先端医療へのアクセスをどのように確保すべきか」と問題提起。費用対効果評価制度の活用を含めた薬価制度上の最大限の対応をはじめ、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大、民間保険の活用について検討を求めた。
また、セルフケア・セルフメディケーションの推進、リスクに応じた自己負担、必要な医療へのアクセスの確保といった点を踏まえ、OTC類似薬に係る保険給付のあり方の見直しを具体的に進めるべきとした。
負担の公平化をめぐっては、後期高齢者医療制度の自己負担割合が3割となる「現役並み所得」の判定基準の見直しとともに、現役世代との公平性を図る観点から、世帯収入要件の見直しを求めた。
介護分野では、介護保険費用が経済の伸びを超えて大幅に増加すると見込み、現役世代の保険料負担の伸びを抑制するため、介護保険サービスの利用者負担が所得・資産に応じた負担となるよう見直しの着実な実施を求めた。
政府が5年末に閣議決定した「改革工程」に沿い、「2割負担の対象者の範囲拡大を早急に実現すべき」と指摘。利用者負担の原則2割や現役世代並み所得の判断基準の見直しを検討すべきとした。