HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2025年5月合併号

健保ニュース

健保ニュース 2025年5月合併号

7年度健保組合予算早期集計
経常収支3782億円の赤字
支援金増加 保険料率過去最高の9.34%

健保連は4月23日、厚生労働省内で記者会見を開き、令和7年度健保組合予算早期集計の結果を発表した。7年度の健保組合全体の経常収支差引額は、高齢者拠出金や保険給付費の増大に伴い、3782億円の赤字となる見込み。赤字額は前年度予算の6582億円から2800億円減少したが、赤字組合は全組合の8割に迫る。平均保険料率は、前年度比0.03ポイント増の9.34%で過去最高を更新し、協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は全体の約25%を占める。高齢者等拠出金は0.4%増の3兆8933億円に増加した。佐野雅宏会長代理は、「全世代型社会保障の構築、現役世代の負担軽減は喫緊の課題」と強調し、改革工程表の項目を着実に進めるよう訴えた。

赤字幅縮小も
8割近くの組合が赤字

7年4月1日現在の健保組合数は、前年度比7組合減の1372組合で、7年度予算早期集計は7年3月31日までに報告のあった1368組合の財政状況を推計したもの。

被保険者数は16万3364人(1.0%)増の1702万8075人となった一方で、被扶養者数は1104万3419人で35万5353人(3.1%)減少し、扶養率は0.03ポイント減の0.65人となった。

保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は、40万2342円で1万697円(2.7%)増加し、平均標準賞与額は3万6647円(3.1%)増の123万5195円だった。

平均標準報酬月額と平均標準賞与額は、昨年度の33年ぶりとなる5%超の賃上げが大きなプラス要因となった。

経常収入のうち保険料収入は9兆2685億円と、3829億円、4.3%増加し、被保険者数の堅調な伸びや賃金の引き上げ効果を反映している。経常収入は9兆3936億円で、3878億円、4.3%の増加となった。

支出面では、保険給付費が785億円、1.5%増の5兆1524億円で、5年度までは新型コロナ感染症やその他の感染症の流行によって高い伸びとなっていたが、6年度が比較的落ち着いたことを見込んだ。

高齢者拠出金は142億円、0.4%増の3兆8933億円となった。このうち前期高齢者納付金は、4年度の新型コロナの拡大の影響を反映した6年度納付金の反動もあり、435億円、2.7%減少する一方で、後期高齢者支援金は団塊の世代全員が75歳に到達し後期高齢者数が増加するため、保険給付費の伸びを上回る576億円、2.5%増の2兆3353億円となった。

このほかの支出では、データヘルス計画など、加入者の健康維持・増進のための保健事業費に4765億円(92億円、2.0%増)を計上し、経常支出全体では1078億円、1.1%増の9兆7717億円となった。

この結果、7年度予算の経常収支差引額は3782億円の赤字だった。
 赤字組合は147組合減の1043組合(全組合の76.0%)となる一方、黒字組合は140組合増の329組合(同24.0%)で、組合全体の約8割が赤字となった。

平均保険料率9.34%
実質料率は依然10%超

7年度予算における平均保険料率(調整保険料率を含む)は9.34%で、前年度比0.03ポイント上昇し、過去最高となった。単一組合(1113組合)は9.21%、総合組合(255組合)は9.88%となる。

被保険者1人当たり保険料負担額は1万7269円増の54万4143円だった。
 保険料を引き上げた組合は149組合、引き下げた組合は71組合、据え置いた組合は1147組合で、協会けんぽの平均保険料率(10%)以上の組合は335組合、全組合の24.5%となった。

また、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率は、0.24ポイント減少したが、平均保険料率を0.68ポイント上回る10.02%となり、依然として10%を超える見通し。

高齢者拠出金の試算
毎年1000億円規模で増加

増大する高齢者拠出金に対し、加入者数を固定し、標準報酬総額と1人当たり医療費について、2026年以降は経済成長(過去投影ケース)を反映する試算を実施した。

その結果、7年度の高齢者拠出金は、概算額ベースで3兆8100億円(前年度比700億円増)、納付額ベースで3兆8800億円となった。また、8年度は概算額3兆9100億円(同1000億円増)で、以降も毎年1000億~1600億円増加することが想定される。

今年度は、団塊の世代が全員後期高齢者になる一方で、9年ごろから前期高齢者が増加するため、今後も拠出金負担の増加が見込まれる。

義務的経費に占める拠出金
50%以上の組合は1割

法定給付費と高齢者等拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金の負担割合は、43.6%(後期高齢者支援金26.1%、前期高齢者納付金等17.5%)で、負担割合が50%以上の組合数は143と全体の10.5%を占めた。

拠出金制度の見直しを
佐野会長代理が要望

佐野会長代理は、7年度健保組合予算編成について、「昨年度と比較して改善傾向にあるが、大きな赤字であることは変わりない」と述べた上で、赤字の大きな要因は「高齢者拠出金だ」と強調し、「現役世代の負担と高齢者の給付のアンバランスを見直す必要がある」と訴えた。

一方で、制度見直しの際には「安定的な財源の確保も大きなポイントだ」と指摘した。
 また、政府に対して、「全世代型社会保障の構築、現役世代の負担軽減は喫緊の課題」とし、改革工程表の項目を着実に進めることを求めた。

このほか、記者から当初予定していた「ポスト2025」の新提言の公表延期の理由を問われ、佐野会長代理は「個別の事案に影響されて延期したものではなく、社会情勢が大きく動いている中で、現段階で発表することは適切でないと判断した」と述べた。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年