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健保ニュース 2025年4月下旬号

支払基金と7年度契約を締結
レセプト審査不適切行為 原因究明と再発防止を
支払基金、厚労省に要請書提出

健保連は4月1日付で、社会保険診療報酬支払基金(神田裕二理事長)と令和7年度診療報酬の審査支払事務手数料などを定めた契約を締結した。昨年11月に発覚した支払基金によるレセプト審査業務における不適切行為(自動遷移ツールの使用)への対応として、委託元監査の実施や目視対象レセプトの全件目視などを追加し、契約を一部改定した。18日には健保連の松本真人理事が、原因分析と再発防止、事業計画の確実な実施を求める神田理事長宛ての要請書を、高橋和久理事長特任補佐に手交した。松本理事は支払基金に対し、原因究明と再発防止策の確実な実施で審査の確実性を担保し、信頼回復につなげることを強く求めた。厚労省にも同日、支払基金の指導・監督を求める鹿沼均保険局長宛ての要請書を保険課に提出した。

契約に委託元監査など追加

支払基金との令和7年度契約は、①審査支払事務手数料(レセプト1件当たり)医科・歯科(一般レセプト)56.20円、医科・歯科(判断が明らかなレセプト)34.70円、調剤28.50円②レセプト電子データ提供事業利用料(レセプト1件当たり)電子レセプト1.50円、紙レセプト8.70円(基本セット5.20円、オプション3.50円)③出産育児一時金等の支払に係る手数料103円──などとなった。

契約内容は審査支払対策委員会の審議を経て、3月21日の理事会で承認された。その際、レセプト審査業務における不適切行為に関する審議を優先させるため、例年、契約更改を機に健保連会長名で支払基金理事長と厚労省保険局長に対し要請書を手交する通常スケジュールの見直しを報告。要請内容は、4月14日の同委員会で審議し、了承された。

支払基金に対する要請書は、不適切行為の原因分析と再発防止、「令和7事業年度社会保険診療報酬支払基金事業計画」の確実な実施を求めるとともに、①レセプト自動遷移ツール事案に伴う令和7年度契約更改事項の遂行②令和8年度に向けた対応③従来からの取り組みの継続(審査、財政運営)④新組織への移行による医療DXの推進──を盛り込んだ。

①は自動遷移ツール使用レセプトや目視で審査しなかったレセプトの実態と原因の説明、Officeソフトの使用に関する再発防止策の再提示を5月末日までに書面で回答・説明すること。また、社会的責任を負う機関として、トップ自らの説明によるアカウンタビリティーの遂行を求めた。

②は8年度の新たな手数料の枠組みについて、監事検証計画の検証結果や委託元による監査の結果、再発防止策の実行状況を踏まえて再検討すること。これを前提に、原審査の3階層化、再審査手数料導入議論時における各審査区分と処理コストの「見える化」を求めた。

③は新組織への移行に伴い、医療DXに人的資源を振り向けることで審査支払業務の質の低下を起こさないこと。マイナ保険証を基本とする仕組みの対応、全国医療情報プラットフォームの構築に向けた対応の着実な進行を求めた。

松本理事
審査の確実性担保し
信頼回復へ取り組みを

支払基金の高橋理事長特任補佐に要請書を手交した健保連の松本理事は、「今回発生した事案により、審査業務に対する信頼を著しく損ない、業務を委託する健保組合に大きなショックを与えたことを改めて認識してほしい」と訴えた。

また、今回の事案は、厚労相による記者会見や国会で取り上げられるほど重く、社会的責任が問われる問題だと指摘。「原因究明と再発防止策の確実な実施により、審査の確実性を担保し、失われつつある信頼の回復につなげてほしい」と述べた。

8年度の新たな手数料の枠組みについては、「審査の質に疑義が生じていることが理事会などでも指摘されている」とし、「信頼回復のために、早期の監事検証計画の結果公表や委託元監査、再発防止策を行って次に進んでほしい」と強く要望した。

高橋理事長特任補佐は、健保連が期限を定めて回答を求めている自動遷移ツールを使用したレセプトの実態や再発防止策について、「審査業務の効率化や再発防止策とのバランスなどを踏まえ、今後、正式に回答したい」と応じた。その上で、「審査業務に誤解がある点は、説明責任を果たしていく」との姿勢を示した。

厚労省に提出した要請書は、支払基金への「要請事項」に盛り込んだ各項目に対する支援を求めた。レセプト審査業務における不適切行為について、原因究明と再発防止に向けた取り組みを徹底するよう支払基金への指導を求めるとともに、支払基金を監督する官庁として、支払基金法第28条に基づく厚労省監査の定期的な実施を要請した。

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