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健保ニュース 2023年12月中旬号

医療経済実態調査に健保連が見解
経営的には「総じて堅調」
診療側 コロナ前より厳しい経営

中医協総会は1日、令和6年度の次期診療報酬改定に向けて、医療経済実態調査の結果に対する見解を支払側、診療側のそれぞれから聴取した。

支払側は健保連の松本真人理事が代表し、一般病院、一般診療所、歯科診療所、薬局における損益差額率等の分析結果から、「経営的には総じて堅調であり、資産比率や流動比率をみても余裕度は上がっている」との考えを示した。

診療側は、「医療機関等はコロナ前と比較しても厳しい経営を強いられていることが明らかになった」と主張。

患者へ質の高い医療を継続的に提供するためには、医療従事者に対する賃上げと、その人材確保が急務であると訴え、6年度診療報酬改定が担う役割は非常に重要であると強調した。

健保連は、新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含めた数値で分析した4年度損益差額率について、一般病院の構成割合を補正すると、全体で1.8%の黒字、国公立を除くと3.6%の黒字に拡大すると指摘した。

開設者別にみると、医療法人・公的・その他は3.3~4.4%の黒字の一方、公立は▲7.1%の赤字となったが、元年度と比べると7.1ポイント上昇していると分析。

公立病院では給与費率が62.8%と依然として高い水準にあり、公的病院の給与費率(53.7%)と大きな開きがあると問題視した。

他方、診療側は、新型コロナに関する診療報酬上の特例や補助金およびかかりまし費用等の影響を排除した4年度の損益率は、一般病院が▲6.8%で、一般病院の7割弱が赤字と指摘した。

一般診療所については、健保連が「個人(31.5%)・医療法人(9.7%)とも黒字であり、医療法人は元年度以降で最も高い水準だった」と指摘したのに対し、診療側は一般診療所の約3割が赤字で、経営基盤が脆弱な診療所では倒産が相次ぐ恐れがあるとの認識を示した。

歯科診療所は、健保連が「歯科診療所は個人、医療法人それぞれ24.9%、8.7%の黒字で、医療法人は元年度を上回る水準」と分析したが、診療側は個人立歯科診療所の直近2事業年の医業収益はマイナス0.9%と落ち込み、その経営は依然として回復傾向になく、厳しい状況が続いているとした。

薬局は、健保連が、「個人、法人それぞれ11.4%と5.4%の黒字」と分析したほか、法人は同一グループの店舗数別にみると、20~49店舗(7.4%の黒字)の損益差額率が最も高いと指摘した。

また、調剤基本料別では「調剤基本料1」および「調剤基本料3─ロ」の6.0%の黒字、立地別では医療モール内の損益差額率が8.6%の黒字で最も高い現状も示した。

診療側は、全体平均(法人)でプラス5%程度という状態を維持しているが、物価高騰や賃金上昇への対応のため、対前年比は減少傾向にあり、厳しい経営状況が続いていると主張。

地域の医薬品提供体制の中核を担っている小規模の薬局のうち、特に「1店舗」および「2~5店舗」の施設における損益差額の悪化が目立ち、このままの状況が続けば今後の地域の医薬品供給に支障をきたすことになるとした。

このほか、松本理事は、厚生労働省が11月24日の中医協総会に提出した「第24回医療経済実態調査の補足資料」について、「診療報酬に関係する議論は、実調のデータにもとづくべき」と強調。

仮に、推計を行うのであれば、専門家の意見も踏まえて十分に検討し、推計の目的を含め調査実施小委員会や総会の了承を得たうえで中医協における議論に活用すべきとの考えを示した。

また、医療費の短期予測や医療保険財政の見通しなど様々な要素について、適切な議論と手続きを経るべきと強く指摘した。

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