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健保ニュース 2023年8月下旬号

薬価適正化と医薬品安定供給へ
後発品と長期品のあり方論点
松本理事 G1・2ルールの運用見直しを

中医協の薬価専門部会は2日、令和6年度の次期薬価改定に向けて、後発医薬品と長期収載品をテーマに議論した。

厚生労働省はこの日の会合に、薬価の適正化と医薬品の安定供給確保の観点から、①後発品の薬価(収載時の薬価、改定時の価格帯など)②長期収載品にかかる薬価改定ルール③価格の下支え制度と安定供給が確保できる企業の考え方─の現状と論点を示した。

このうち、①は、▽後発品の収載時薬価は先発品の薬価に0.5を乗じた額等と定められており、新薬創出等加算の対象品であっても累積加算額が増大すると、後発品の収載時薬価に影響する▽後発品の収載後の薬価改定では、同じ価格帯のなかで実勢価の高い医薬品は実勢価に比べ薬価が引き下げられ、実勢価の低い医薬品は実勢価に比べ薬価が引き上げられる─などの現状を説明し、後発品の収載時薬価および収載後の価格帯集約のあり方を論点とした。

また、②は、日本の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換する方針のなかで、後発品への置き換えを迅速に進める観点からの長期収載品の薬価のあり方を論点として提示した。

③は、不採算品再算定が行われた品目であっても、製薬企業が設定する仕切り価率が下がっている品目もある現状を説明。

後発品等の安定供給にかかる現状を踏まえ、企業における製造体制等の確保の必要性や、少量多品目生産といった構造的課題の解消の観点等から、価格の下支え制度や安定供給が確保できる企業の考え方を含む後発品等の薬価のあり方を論点とした。

論点①について、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「未だに先発品に対して10品目以上の後発品が一定数存在している」として、「後発品の収載時薬価は、さらに適切な価格付けが考えられる」と主張した。

論点②について、健保連の松本真人理事は、「特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲るという考え方で、新薬創出等加算の累積控除のタイミングを考えるべき」と言及したうえで、「置き換え期間を経た後は早期に長期収載品と後発品の価格差がなくなるよう、G1、G2ルールの運用を見直すべき」と訴えた。

また、松本理事は、論点③について、「急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するために前回の薬価改定で実施した不採算品再算定の品目は、仕切り価格が同水準になっているのが最も多く、低下した品目もある」と指摘し、「このデータをみる限りでは、前回の薬価改定で実施した対応がうまく反映されず、残念な結果になっていると言わざるを得ない」と問題提起した。

このほか、松本理事は、政府の「骨太方針2023」に「長期収載品等の自己負担のあり方の見直し、検討を進める」と明記されたことについて、「医療保険財政の持続可能性の観点からも、薬剤負担のあり方にメリハリをきかせていくことは極めて重要だ」と強調。

社会保障審議会医療保険部会で給付と負担のあり方について制度的な議論を進めていくべきとの考えを示した。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「医薬品の安定供給確保や企業の創薬力強化に向けて、長期収載品の自己負担のあり方について制度的な議論が必要不可欠」と主張し、厚労省に対して前向きな検討を要請。

他方、「現状、既に後発品の使用割合が一定程度の水準に達し、患者側にも後発品を選ぶ習慣が浸透していると考えられる状況を踏まえると、後発品の使用促進に向けた診療報酬上の加算について、段階的な廃止を検討すべき」と主張した。

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