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健保ニュース 2022年10月上旬号

協会けんぽの5年収支見通し
保険料率10%維持 7~9年度に赤字転落
5年度平均料率は年内に決定

全国健康保険協会(安藤伸樹理事長)は9月14日、令和5年度から9年度まで5年間の協会けんぽ・収支見通しを運営委員会(委員長・田中滋埼玉県立大学理事長)に提示した。

平均保険料率を現行の10%に据え置いたうえで、賃金上昇率を過去5年平均値(0.8%)とした場合、単年度収支は9年度に、賃金上昇率を低く見積もった場合(0.0%)、単年度収支は7年度に赤字へ転落すると見込んだ。同委員会は、年末に向けて、5年度およびそれ以降の保険料率のあるべき水準について議論を進めていく。

試算では、6年度以降の賃金上昇率を①~③の3パターンで集計した。各パターンの前提は、①平均標準報酬月額の増減率の5年(平成27~令和元年度)平均(0.8%)、②①(0.8%)と③(0.0%)の中間(0.4%)、③増減なし(0.0%)─で、それぞれ平成28年4月の標準報酬月額の上限改定の影響(0.5%増)を除いている。

平均保険料率を10%に据え置いた場合、①は令和9年度以降、②は8年度以降、③は7年度以降に赤字の見込みとなった。

①~③の均衡保険料率(単年度収支が均衡する保険料率)をみると、①が▽5年度9.8%▽6年度9.8%▽7年度9.9%▽8年度10.0%▽9年度10.1%─で、赤字が見込まれる9年度の収支均衡には10.1%の保険料率が必要となる。

同様に、②が▽同9.8%▽同9.9%▽同10.0%▽同10.1%▽同10.2%─。③が▽同9.8%▽同9.9%▽同10.1%▽同10.2%▽同10.4%─となった。

事務局は、▽医療費の伸びが賃金の伸びを上回る財政の赤字構造が解消されていない▽医療給付費が新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回る▽後期高齢者支援金の一層の増加が見込まれ、3~7年度で4300億円の追加的な負担が必要となる─などの要因から、「協会けんぽの財政状況は楽観を許さない状況にある」と指摘。

このため、平均保険料率10%を維持した場合、数年後には準備金を取り崩さねばならない事態に直面すると問題提起した。

安藤理事長は、「被保険者が何とか支払える保険料率が現行の10%である」と述べ、今後長きにわたりこの水準を維持していきたいとの考えを示した。

また、協会けんぽの準備金残高についても言及。現在の準備金残高(4兆8500億円)が将来的に十分な額であるかどうかは一概には言えないとの認識を示したうえで、医療費削減に向け加入者と協力し、中長期的な視点から保健事業に取り組むと強調した。

委員からは、次年度への施策改善のために、過去の収支見通しと実状にどの程度の乖離が生じていたのかを明示する資料を作成するよう事務局へ求める意見のほか、コロナの情勢を鑑みると、支部によっては保険料率引き下げを求める声が高まる可能性もあり、合理的かつ丁寧な検討と説明が必要との意見があがった。

5年度の平均保険料率は、支部評議会の意見も踏まえ、12月に決定する予定となっている。

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