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健保ニュース 2022年9月中旬号

新感染症流行初期の医療確保措置
河本専務理事 全額公費負担を再度強調

社会保障審議会医療部会(永井良三部会長)は5日、現行の感染症法等における課題と対応をテーマに議論した。

前回の8月17日に引き続き、2度目の議論となったが、健保連の河本滋史専務理事は、新たな感染症の流行初期に必要な医療機関を確保するための費用について、全額公費で賄うべきとの考えを改めて強調した。

この日の会合では厚生労働省が、9月2日に政府が決定した「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取り組みを踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策」について説明した。

「対応の具体策」は、▽感染症発生・まん延時における保健・医療提供体制の整備等(感染症法、地域保健法、健康保険法、医療法等)▽機動的なワクチン接種に関する体制の整備等(予防接種法、特措法等)▽水際対策の実効性の確保(検疫法等)─などの方向で検討し、速やかに必要な法律案の提出を図る方針を示した内容。

このなかで、「感染症発生・まん延時における確実な医療の提供」として、都道府県は初動対応等を含む「特別な協定」を締結した医療機関に対し、感染症流行初期に流行前と同水準の医療の確保を可能とする措置(流行初期医療確保措置)を講ずることとした。

「流行初期医療確保措置」は、感染症に対する診療報酬の上乗せや補助金による支援が充実するまでの暫定的な支援として位置づける。措置額は、感染症発生・まん延時の初期に「特別な協定」にもとづき対応した月の診療報酬と感染症発生前の同月の診療報酬を勘案。そのための費用は、「公費とともに、保険としても負担すること」とされた。

河本専務理事は、医療機関の減収補償について、「診療実績が発生しなくても保険者に費用負担を求める内容だが、一方で、実際に感染症が発生した場合の診療にかかる医療費は保険者が負担している」と指摘。

患者の自己負担部分のみが公費負担となっている新型コロナの診療にかかる医療費に被用者保険全体で令和3年度に4000億円を超える給付を行った現状を訴えるとともに、新型コロナのまん延初期は民間企業も保険者も大変厳しい状況に置かれていた実態への理解も求めた。

そのうえで、「新たな感染症まん延時に必要な医療機関を維持するための費用は、全額公費で賄うべきとの考えは変わっていない」と強調した。

佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「医療機関の減収補てんの費用を保険料財源から拠出する考えには納得できない」と問題視。

感染症まん延時に必要な医療機能や保険診療体制を維持するための費用は、基本的に公費で賄うべきとの考えを示した。

神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、「被保険者の病気の早期発見・治療など、いわゆる健康経営に保険者の責務としてインセンティブが生じるのは当然」との認識を示す一方、「こういったパンデミックに関し、そこまで保険者に責任を負わせるのか」と疑問視し、「こういう有事に関しては保険ではなく公費で対応すべきだと強く申し上げたい」と言及した。

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