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健保ニュース 2021年8月合併号

外来機能報告WG
重点外来などの報告項目を議論
在宅医療・地域連携も対象

厚生労働省の外来機能報告等に関するワーキンググループ(座長・尾形裕也九州大学名誉教授)は7月28日、令和4年度からスタートする外来機能報告制度での報告項目などを議論した。

外来機能報告制度は、病院・有床診療所の管理者に対し、医療資源を重点的に活用する外来(重点外来)の実施状況、紹介患者が中心の重点外来を地域で基幹的に担う医療機関(重点外来医療機関)となる意向の有無などを毎年度、都道府県に報告することを義務づける。無床診療所の報告は任意とする。

厚労省はこの日の会合で、報告項目の基本的な考え方について、▽重点外来医療機関の明確化に資するもの(重点外来の実施状況、重点外来医療機関の意向の有無、紹介・逆紹介の状況など)▽「地域の協議の場」での外来機能の明確化・連携に向けた議論に資するもの(重点外来の実施状況、その他の外来・在宅医療・地域連携の実施状況、救急医療の実施状況、紹介・逆紹介の状況、人材の配置状況、高額等の医療機器・設備の保有状況など)─の2つの観点から整理することを提案した。

また、医療機関の負担を軽減する観点から、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)で把握できる報告項目を基本とし、それで把握できないものは病床機能報告など既存データの活用による報告の省略を可能とする。

重点外来の機能は、①医療資源を重点的に活用する入院前後の外来②高額等の医療機器・設備を必要とする外来(外来化学療法加算や外来放射線治療加算などを算定)③特定の領域に特化した機能を有する外来(診療情報提供料Ⅰを算定した30日以内に別の医療機関を受診した場合、当該「別の医療機関の外来」)─の3類型が考えられている。なお、検討事項とされている透析は重点外来に含み、高額医薬品は含まない方向を提起した。

そのうえで、厚労省は、医療機関が報告する項目として、▽重点外来の実施状況▽重点外来医療機関の意向の有無▽地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項─のそれぞれに具体案を示した。

このうち、「重点外来の実施状況」は、地域の協議の場での議論に役立つよう、概況と詳細に分けて項目を提示。いずれの報告項目もNDBで把握できるもので、厚労省が前年度1年間(4~3月)の実施状況データを医療機関に提供し、医療機関は提供されたデータを確認して報告する。

概況では、初・再診での①~③の実施状況を報告する。詳細は、外来化学療法加算、外来放射線治療加算、CT撮影の算定、悪性腫瘍手術の算定などの実施状況を報告する。

「重点外来医療機関となる意向の有無」は、国が示す基準を踏まえ、自院が重点外来医療機関となる意向の有無を報告する。

「地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項」は、在宅医療・地域連携の実施状況など5つの事項に着目して報告項目を整理した。

具体的には、(1)その他の外来・在宅医療・地域連携の実施状況として、生活習慣病管理料、機能強化加算、地域包括診療料、オンライン診療料などの算定状況を報告する。いずれもNDBで把握できる項目。

(2)救急医療の実施状況として、休日受診、夜間・時間外受診、救急車の受入件数を報告する。

(3)紹介・逆紹介の状況を報告。(4)人材の配置状況として、医師(施設全体)、看護師・助産師・理学療法士・薬剤師・管理栄養士など外来部門の職員数を報告する。(5)高額等の医療機器・設備の保有状況として、マルチスライスCT、MRI、内視鏡手術用支援機器などの台数を報告する。

厚労省は、医療機関を対象に紹介率・逆紹介率を調査する意向を示した。重点外来の実施状況でNDBから得られないデータを把握し、外来機能報告の施行に向けて必要な検討を行うために調査する。8月に調査し、9月に分析する。

令和4年度からスタートする外来機能報告のスケジュールは、4月から対象医療機関を抽出、NDBデータ(前年度4~3月)を対象医療機関別に集計、9月に対象医療機関にNDBデータを提供、10月に対象医療機関が報告、翌年1~3月に地域の協議の場で協議、重点外来医療機関を公表する、との予定が厚労省から示された。

健保連の幸野庄司理事は、「外来機能報告については、地域でデータにもとづき議論することが前提なので、外来機能の明確化・連携に向けた協議に必要な事項を幅広く報告項目とすることが必要だ」と述べ、厚労省案を基本的に支持した。

重点外来医療機関については、手上げ方式で報告するが、「国の基準を満たしても手を上げないケースや、逆に基準を下回っても手を上げることもあると思う。結局、手を上げたところのみが重点外来医療機関となる、ということであってはならない。地方の協議の場が標準化され、適切な医療機関が重点外来医療機関となるよう実効ある会議体とする方式を検討する必要がある」と指摘した。

紹介・逆紹介の状況では、連携している診療所の数も報告すべきと主張した。
 高額等の医療機器・設備の保有状況では、医療機関間での共同利用の状況も報告することを提案した。

このほか委員からは、CKD(慢性腎臓病)予防を推進する観点から透析を重点外来に含めることに反対する意見や、高額医薬品を含めるべきなどの意見が出され、賛否がわかれた。

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