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健保ニュース 2021年4月下旬号

令和3年度健保組合予算早期集計
経常収支 5098億円の大幅赤字
実質保険料率が初の10%超

健保連は22日、厚生労働省内で記者会見を開き、令和3年度健保組合予算早期集計の結果を発表した。それによると、3年度の健保組合全体の経常収支差引額は5098億円の大幅な赤字となることが明らかになった。赤字組合数は1080組合で、全組合の8割に迫る。平均保険料率は9.23%で、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率(調整保険料率を含む)は、過去最高の10.06%となり、初めて10%を超えた。赤字は、報酬の低下による保険料収入の減少と高齢者医療への拠出金の増加が要因。義務的経費に占める拠出金割合が50%超の組合は全体の3割に達する。佐野雅宏副会長は、「団塊の世代が後期高齢者入りする4年以降、拠出金負担の急増が見込まれていたが、新型コロナウイルスが組合財政に大きな影響を与え、1年早く危機が到来した」と述べ、さらなる制度改革や財政が厳しい健保組合への支援を訴えた。

3年4月1日現在の健保組合数は、前年度から2組合減少し1387となっている。3年度予算早期集計は、報告のあった1330組合の数値をもとに1387組合の財政状況を推計したもの。

被保険者数は1651万6963人で前年度に比べ3万2394人(0.2%)減少した。被扶養者数は1223万5433人で同24万2183人(1.9%)減少した。

保険料の基礎となる被保険者1人当たり平均標準報酬月額は37万2794円で同4744円(1.3%)減少した。平均標準賞与額は104万1513円で同8万1361円(7.2%)減と大幅な減少となった。

このため、収入総額の98.6%を占める保険料収入が8兆60億円と同2167億円、2.6%減少し、経常収入は8兆1181億円と同2242億円、2.7%の減少となった。

支出面をみると、保険給付費は、新型コロナ禍での受診控えなどの影響を考慮した結果、4兆2980億円と同654億円、1.5%の減少を見込んだ。

その一方で、拠出金については、前期高齢者納付金が前年度から1007億円(6.5%)増と著しく伸び、1兆6467億円となったほか、後期高齢者支援金が同287億円(1.4%)増の2兆158億円、退職者給付拠出金が同6億円(85.7%)減の1億円と見込み、拠出金全体で3兆6627億円と同1289億円、3.6%増となった。

このほかの支出では、保健事業費4409億円(前年度比15億円、0.3%増)を計上し、経常支出全体では8兆6279億円(同550億円、0.6%増)となった。

この結果、3年度予算の経常収支差引額は、5098億円の赤字となり、前年度から赤字額が2792億円拡大した。今回、大幅な赤字に陥る主な要因は、標準報酬月額や標準賞与額の低下による保険料収入の減少と、著しい前期高齢者納付金の伸びによる拠出金の増加があげられている。

経常収支差引額が赤字の組合は1080組合で、前年度比169組合増加した。赤字組合の赤字総額は同2284億円増の5602億円。

黒字組合は307組合で、同171組合減少した。黒字総額は同507億円減の505億円となった。

115組合が料率上げ
10%以上は297組合

3年度予算における平均保険料率は9.23%で、前年度から0.01ポイント上昇した。保険料率を引き上げたのは115組合。協会けんぽの平均保険料率10.0%以上の組合は297組合で、報告のあった1330組合の22.3%を占める。被保険者1人当たり保険料負担額は同5280円減の年間49万1582円となった。

また、収支均衡に必要な財源を賄うための実質保険料率(調整保険料率を含む)は、平均保険料率を0.83ポイント上回る10.06%で、今回はじめて10%を超えて過去最高となる見通しとなった。

義務的経費に占める拠出金
50%以上が349組合

保険給付費と拠出金を合わせた義務的経費に占める拠出金負担割合は組合平均で46.6%。50%以上を占める組合は349組合で、全体の26.2%に達し、依然として拠出金負担に耐えかねている健保組合の現状がうかがわれる。

保険料の基礎となる標準報酬月額と標準賞与額を業種ごとに前年度と比較すると、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた特定の業種(宿泊業、飲食サービス業:月額6.8%減、賞与36.8%減、生活関連サービス業、娯楽業:月額6.0%減、賞与51.4%減)で著しく悪化している。

介護保険料率1.77%
4割超の組合が料率上げ

3年度予算の平均介護保険料率は1.77%で、前年度に比べ0.09ポイント増加した。1人当たり年間保険料負担額は11万2209円で、同2939円(2.7%)増となった。

介護保険料率を引き上げた組合は、報告のあった1330組合のうち565組合で42.5%を占める。また、全体の5割相当の664組合(同49.9%)が料率を1.8%以上に設定した。

予算早期集計資料「令和3年度健康保険組合予算編成状況について-予算早期集計結果の概要-」(PDF)

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