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健保ニュース 2020年11月中旬号

自民党・人生100年時代戦略本部
健保連、日医などからヒアリング
後期2割負担に慎重意見も

自民党の人生100年時代戦略本部(下村博文本部長)は9日、健保連、日本経済団体連合会、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、4病院団体協議会から医療改革に関するヒアリングを行い、意見交換を行った。

健保連の佐野雅宏副会長は、後期高齢者の自己負担と現役並み所得者の判断基準の見直しを中心に意見を訴えた。

後期高齢者の自己負担の見直しは、現役世代の負担軽減につながるよう、低所得者に配慮しつつ、原則2割負担とすべきと主張した。

一定所得以上の者を2割負担とする場合は、少なくとも高額療養費の一般区分該当者(約53%)すべてに2割負担を導入するよう要望。高額療養費制度は自己負担に上限があるため、必ずしも負担が2倍になるわけではないと言及し、要望に対する理解を求めた。

現役並み所得者の判断基準の見直しは、対象拡大に合わせ、75歳以上の現役並み所得者の給付費に公費を投入することを要請。公費負担の減少分が現役世代の負担増とならないよう、少なくとも後期高齢者支援金を負担する現役世代への財政支援を実施すべきと強調した。

経団連の井上隆常務理事は、世代間の給付と負担のアンバランスを是正し公平に支え合う真の意味での全世代型社会保障を構築するため、後期高齢者医療制度の見直しと少子化対策に早急に取り組むことが必要とした。

現役世代の社会保険料負担の上昇を抑制するための改革が急務と指摘し、後期高齢者の自己負担割合について、2022年度初めまでに原則2割を基本に高額療養費制度の一般区分該当者を対象とすることを求めた。

大病院受診時の定額負担のあり方については、定額負担拡大の対象となる医療機関を明確化する枠組みを早期に構築すべきとした。

一方、日本医師会の今村聡副会長は、後期高齢者の患者負担割合の引き上げによる受診控えを懸念し、応能負担は本来、保険料と税で求めるべきとの観点から、患者一部負担での応能負担は、財務省が提言する「可能な限り広範囲」ではなく、「限定的」にしか認められないと主張。実施する場合も所得上位の20%を対象とする介護保険以上に対象を限定すべきとした。

200床以上の一般病院への定額負担拡大について猪口雄二副会長は、「病院の機能は規模だけで決まるものではない」と指摘。特定機能病院で慢性期の外来診療が多数行われる一方、基幹的病院が地域医療支援病院になっていないという現状を適正化することにより、病院や外来の機能分化は推進可能との考えを示した。

4病院団体協議会は、日本病院会の相澤孝夫会長が、一般病床200床以上の病院でも急性期以外の病床を有する病院が相当数あるとのデータを示したうえで、病院の規模ではなく機能に着目した対応を求めた。

出席議員からは、「原則2割は反対」など、後期高齢者の自己負担割合の見直しに慎重な意見が目立った。

後期高齢者の所得水準にかかる精緻な議論を積み重ね対象範囲を整理すべきとの意見や自己負担割合の見直しの前に現役並み所得者の給付費に対する公費投入を優先し対応すべきとの意見、健康寿命の延伸に向けた予防・健康づくりを強化すべきとの意見などがあった。

大病院受診時の定額負担拡大については、多くの議員が200床以上の一般病院に一律対象を拡大する政府方針に反対した。大病院でも慢性期患者を多く診ている地域の医療を守る観点から、病院の機能に応じて対象を検討すべきとの意見のほか、患者負担分について公的医療保険の負担を軽減するよう改める方針は病院経営のインセンティブを阻害するので取り下げるべきとの意見などがあった。

下村本部長は、国民皆保険制度を次世代につなぐことは使命であると述べ、国民の納得が得られるよう、丁寧な議論を積み重ねていく意向を示した。

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