健康コラム
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。
企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~
コクヨ株式会社
健診と健康行動調査の結果を分析してより精緻な対策を実施
コクヨ株式会社は、1905年創業で昨年120周年を迎えた。グローバルステーショナリー事業(文具)、グローバルワークプレイス事業(オフィス空間デザイン)、ビジネスサプイ事業(通販)、インテリアリテール事業(家具)を展開している。2019年に「健康経営宣言」し、2025年に「健康経営銘柄」に初選定、「健康経営優良法人(ホワイト500)」に認定(7年連続8度目)された。健康管理、メンタルヘルス、健康意識の向上、働く環境、新しい働き方、ワークエンゲージメントを健康経営推進のための重点取り組み項目と設定し、各種施策を推進している。健診結果と2025年度に社内で実施した健康行動調査の結果の相関分析を実施し、従来よりもさらに精緻な施策へとアップデートを図っている。同社の健康経営の取り組みについて、ヒューマン&カルチャー本部HR戦略推進部統括部長の肥田雅之さん、同部グローバル企画推進ユニットの中川具子さん、同部ビジネスライフサポート&HRISユニットの三浦義継さん、コクヨ健康保険組合理事長の大江浩己さんに聞いた。
【コクヨ株式会社】
設立:1905年10月
本社:大阪府大阪市東成区大今里南6丁目1番1号
取締役 代表執行役社長:黒田英邦
従業員数:連結7,647人、単体2,261人(2024年12月末現在)
2019年に「健康経営宣言」
──従業員の健康は「Well−being」の基盤

コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部
HR戦略推進部統括部長
肥田 雅之 さん
肥田さん ▶
当社では、従業員の健康とワークエンゲージメントの維持向上を「Well−being」の基盤と考え、健康経営を推進しています。従業員1人ひとりが能力を発揮し、仕事を通じて成長していくためのベースは、やはり従業員とその家族の健康だと考えています。
2019年に制定した(2022年10月にアップデート)健康経営宣言では、年齢や性別、得手不得手にかかわらず、多様な人材が健康なカラダとココロで生き生きとワークに取り組み、顧客や社会に対する従業員のヨコク(未来への挑戦)とクリエイティブを支えることを掲げています。健康経営宣言に基づいて、「働きがい」「働きやすさ」「関係性の質」を高め、健康経営の施策、組織・人材戦略、人的資本投資を進めています。
Well−being推進体制として、全執行役員で構成するサステナブル経営会議の中にWell−being部会を設置し、Well−beingの向上に向けた取り組みを進めています。この部会の中に健康経営タスクフォースを設置しています。
中川さん ▶
タスクフォースでは、健康経営に係る施策の企画・実行・推進を図っています。メンバーには、産業医にも加わっていただいています。データ分析に医師の視点を反映させることで健康経営施策の質の向上につなげています。
大江さん ▶
健康経営推進のため、健保組合もタスクフォースと連携しています。健保組合では毎年「コラボヘルス推進会議」を開催し、グループ各社の健康推進者を集めて作成した「健康白書」を共有しています。タスクフォースとも健康課題を常時共有し、対応を検討しています。
肥田さん ▶
健康経営推進のため、2022年に「健康管理」「働く環境」「メンタルヘルス」「新しい働き方」「健康意識の向上」「ワークエンゲージメント」という6つの重点取り組み項目を設定しています(図)。体系立てて対策を講じ、PDCAサイクルを回せるようになりました。1つひとつの対策がどこに効いていくのか、次の課題は何かといった分析ができることで、健康経営の取り組みをさらに磨いていくことにつながりつつあると感じています。

図 健康経営6つの重点取り組み項目
──女性の健康課題セミナー開催等取り組みを強化

コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部
HR戦略推進部
グローバル企画推進ユニット
中川 具子 さん
中川さん ▶
健康戦略マップは、具体的な取り組みを推進していくためブラッシュアップを行っています。意識・行動変容指標として、総実労働時間減、定期健診有所見率低下、ストレスチェック・パルスサーベイスコアの向上を、最終目標指標として、プレゼンティズムの低減、アブセンティズムの低減、ワークエンゲージメントの向上を設定し、これに向けた各種の取り組みを進めています。
現在の主な取り組みとして、「マネジメント改革」では、組織風土改革や長時間労働対策を進めています。
「女性の健康課題」に対しては、PMSや更年期といった女性の健康課題に対す産業医による相談窓口の設置やセミナーの開催等の取り組みを強化しています。
「生活習慣病対策」では、ウォーキングキャンペーン、がん検診の促進や禁煙対策、health−upセミナーの実施等、健保組合とのコラボで推進しています。2025年度に社内で実施した「健康行動調査」で把握された睡眠、食生活、飲酒といったさまざまな健康課題が、従業員のヘルスリテラシーの低さに起因していると考え、リテラシー向上の取り組みとして、今年度からhealth−upセミナーなど各種施策を実施しています。
「定期健診結果の活用」として、全国約800カ所の医療機関と提携したネットワーク健診を利用して、地域に関係なく、受診しやすい環境を整えています。健診結果については、産業医の視点も踏まえて、施策との相関を分析し、今後の施策展開に反映させています。
近年は海外事業展開も広がってきていますので、2024年からリモートによる海外赴任従業員向けの健康相談窓口を設置しています。
「メンタルヘルス対策」では、EAP(外部相談窓口)を設置しているほか、メンタルヘルス、フィジカル悪化予防として品川オフィスではテスト的に「ウェルネスステーション」を設置しました。保健師が定期的に所定の場所で在席し、メンタルヘルスあるいは女性の健康課題など、従業員のさまざまな相談を受ける場所として活用しています。品川でのテスト運用を見ながら名古屋や九州のオフィスでも展開し始めているところです。

コクヨ健康保険組合
理事長 大江 浩己 さん
大江さん ▶
健保組合では、がん検診、特定保健指導、また、健康アプリを使ったヘルスリテラシー向上に注力しています。事業主と健保で同じネットワーク健診を利用することで、被保険者(従業員)と__被扶養者(家族)の同時申し込みが可能となり、被扶養者の受診率向上につながっています。被扶養者の一般健診は無料、人間ドックも自己負担1万円で受診できるようにしています。被扶養者の特定健診受診率は約60%で、この5〜6年の間で約10ポイント改善しています。
健保組合は40歳以上の特定健診の結果を対象に特定保健指導を実施しますが、会社は40歳未満の従業員に対する指導をスタートしてくれているので、この辺りも役割分担しながら一緒に取り組んでいるという状況です。
中川さん ▶
生活習慣病の予防対策を進める中で、さらなる課題が見えてきました。現状の健康状態把握が不十分であること、健診結果だけでは詳細な分析ができていないこと、従業員の健康意識(ヘルスリテラシー)レベルが見えないことです。
三浦さん ▶
健診結果を分析すると、ミドルシニア層の生活習慣の悪化が顕著に表れています。平均有所見率は、脂質、糖代謝の項目で年齢とともに増加する傾向が見られます。こうした結果を踏まえ、2025年度から従業員に対して実施している「健康行動調査」と、健診結果の相関関係を分析することで、より精緻な対策について検討しています。
「健康行動調査」では、健康診断の問診を抜粋したアンケート形式で、健康経営の認知度・理解度、運動習慣、喫煙率、飲酒習慣、睡眠状況、食生活習慣、職場状況等を調査します。これにより、ヘルスリテラシー傾向、強化すべき課題(優先順位)、年代別・職場別のアプローチの方向性、健康への行動変容の状況を把握することとしています。
中川さん ▶
健診結果、健康行動調査結果の分析も踏まえた今後の取り組みとしては、第一優先課題として睡眠環境の改善、第二優先課題として適正飲酒の推進を予定しています。

コクヨ株式会社
ヒューマン&カルチャー本部
HR戦略推進部
ビジネスライフサポート&
HRISユニット
三浦 義継 さん
三浦さん ▶
睡眠環境の改善に向けて、長時間労働の是正といった働き方改革との連動、睡眠環境プログラム(40〜50代向けの睡眠の質向上セミナーの実施)、育児・介護との両立支援のための女性向け睡眠相談窓口の設置などを実施していきたいと考えています。
適正飲酒推進では、40〜50代男性のリスクの高い層への産業保健スタッフによる個別アプローチ、職場文化の見直しといえるかもしれませんが懇親会でのノンアルコール飲料の推奨、飲酒リスクの教育といったことや、在宅勤務時の飲酒対策として、オンライン相談窓口の設置などを実施していきたいと考えています。
──チャレンジを繰り返しノウハウを蓄積
中川さん ▶
今後の課題として、両立支援にも焦点を当てていきたいと考えています。現在の両立支援は、育児・介護と仕事の両立が中心だと思いますが、病気になっても仕事を続けたいという従業員に対する両立支援にも取り組みたいと考えています。働きたい人が安心して働くことができる会社とすることは、健康経営の取り組みとしても必要だと考えています。
三浦さん ▶
従来の健康経営施策は、何をどの程度進めれば良いかの判断材料がない中で、できる範囲の取り組みを実施してきたということだと思います。健診結果の分析や健康行動調査との相関分析により、ようやく判断の物差しが持てるようになったと感じています。意図を持って、どの層にどのような施策を実施するのかを検討し、より効果的な施策を展開していきたいと考えています。
大江さん ▶
会社と健保組合は緊密に連携してコラボヘルスを実施しており、今後も取り組みを推進していきます。そうした中で、家族の健康があってこそ被保険者(従業員)も安心して働けるということだと思いますので、家族への取り組みにも注力したいと考えています。
また、健保組合だけが持っているデータとして、レセプトのデータがあります。この分析も活用して、会社と連携を図りながら施策を推進したいと考えています。
肥田さん ▶
Well−beingの向上の基盤として、「健康」があると捉えていますが、「健康」だけで実現できるということではありません。「働きがい」「働きやすさ」「関係性の質」の3つを向上させていくため、健康経営、組織・人材戦略、人的資本投資の取り組みを含め、どの施策のどのボタンを押せばどういった効果が出て、どういった課題が解消できるのか、実験、チャレンジを繰り返し、ノウハウとして蓄積していくことが重要と考えています。