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健康コラム

ほっとひと息、こころにビタミン vol.93

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

分かり合えない家族関係の難しさ

今回は家族について考えてみることにします。少子化が進んで家族の単位が小さくなった結果、お互いへの期待が強くなり、気持ちのすれ違いも増えてきているように感じるからです。

昨年、私が代表を務めている認定NPO法人東京自殺防止センターが「宛名の無い手紙」というリプライ(返信)機能のない投稿サイトを立ち上げました。他の人からの批判的な書き込みを心配しないで、自分の考えや気持ちを自由に書き込めることからでしょうか、1年余りで3万件近い書き込みがありました。その大半が小学生を含む若い人たちからのもので、家族や周りの人に理解してもらえず孤独を感じている様子が伝わってきます。

一方、いろいろな相談に乗っていると、親世代、祖父母世代も家族のつながりに悩んでいることが分かります。自分が期待するような行動を子どもがしてくれないと訴える人は少なくありません。こうした話を聞いていると、家族関係の難しさを感じます。「家族だから分かってほしい」、いや「家族だから分かってもらえるはずだ」という思いが強すぎて辛くなっているように思えます。

私たちはつい、家族だから分かってもらって当たり前だと考えがちです。でも、家族だからこそ分かり合えないことも少なくありません。だからこそ、自分の考えを丁寧に伝える必要があります。もうひとつ、これも当たり前のことですが、家族であっても別の人間です。自分の思うように家族が動いてくれるとは限らないことを理解しておく必要があります。家族だからこそ、そして親しい人との間でも、相手の人の気持ちや考えを大切にすることが大事です。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。

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