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健保ニュース 2026年1月中旬号

出産費用の無償化や高額療養費見直し
総合的なパッケージで改革推進
医療保険部会が「議論の整理」

社会保障審議会医療保険部会(部会長・田辺国昭東京大大学院教授)は12月25日、高額療養費制度の在り方に関する専門委員会(田辺委員長)との合同会議で、医療保険制度改革に向けた議論をまとめた「議論の整理」を部会長一任で了承した。持続可能な医療保険制度の構築に向け、標準的な出産費用の無償化に向けた制度の創設や高額療養費制度の見直し、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しなどについて、「総合的なパッケージとして改革を進める必要がある」として、厚生労働省に取り組みを進めるよう求めた。高齢者の窓口負担割合については、今後の政府・与党における議論に期待するとした。

議論の整理は「中長期的にあるべき姿から逆算した必要な政策、理念および全体像を示していくことが国民の理解・納得感を得るためにも極めて重要」とした上で、①セーフティーネット機能の確保②現役世代からの予防・健康づくりや次世代の支援強化③世代内・世代間の公平の確保④必要な医療の提供と効率的な給付の推進──の4つの視点に沿った議論をまとめた。

①は厚労省の専門委員会の取りまとめに沿って、高額療養費制度の見直しを挙げた。8年8月に自己負担限度額の引き上げと負担の年間上限の設定を実施し、9年に所得区分を細分化する。外来特例については、8年と9年の2回に分け、段階的に限度額を引き上げる。

②は標準的な出産費用の無償化に向けた制度の創設や国民健康保険制度の子育て世代への支援拡充、協会けんぽの予防・健康づくりの取り組みの強化を並べた。

出産費用の無償化にあたっては、現行の出産育児一時金を廃止し、保険診療以外の分娩にかかる費用について、全国一律の水準で「現物給付化を図るべき」と指摘した。療養の給付とは異なる出産独自の給付類型を設け、10割保険給付とすることで、妊婦の自己負担が生じない仕組みにする。全ての妊婦を対象とした現金給付も設ける。

分娩1件あたりの基本単価を国が定め、ハイリスク妊婦を積極的に受け入れる体制を整備している場合など、施設の体制や役割を評価して基本単価に加算を設ける。

給付水準については保険財政と分娩施設の経営の双方に与える影響のバランスを考慮しながら、保険料を負担する被保険者の理解を得られるかという観点も含め検討する。また、物価や賃金の動向などを踏まえた分娩施設の経営実態なども考慮しつつ、定期的に検証、見直しができる仕組みにする。

お祝い膳など出産に付随するサービス(アメニティー)については、妊産婦がニーズに応じて選択し、保険給付の対象にせず自己負担とする。その際、妊産婦が納得してサービスを選べるよう、分娩施設が提供するサービス内容とその費用の「見える化」を徹底するため、厚労省が運営するウェブサイト「出産なび」への分娩施設の情報掲載を法令上義務化する。

新たな制度には、各分娩施設に十分な準備期間を確保する観点から、移行可能な施設から移行する。給付事務を担う保険者の過度な負担にならないよう、新制度への移行に向けては「関係者の意見を丁寧に聞きながら進める必要がある」とした。国による十分な説明も求めた。

③は医療保険における金融所得の勘案を掲げた。上場株式の配当などの金融所得については現状、確定申告を行う場合は課税所得に計上され、保険料や窓口負担割合の算定に勘案されている一方、源泉徴収で済ませた場合は課税所得に含まれず、不公平な取り扱いになっている。

そのため、まずは後期高齢者医療制度について、金融機関が税務署に提出する法定調書を活用し、保険料や窓口負担割合の決定に金融所得を勘案すべきと提起した。

高齢者医療の窓口負担や現役並み所得の基準については、11月に閣議決定された政府の総合経済対策で、令和8年度中に具体的な制度設計を行うとされたことから、引き続き検討すべきとした。

④はOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しや長期収載品の選定療養の見直し、入院時の食費・光熱水費の引き上げ、医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進など。

OTC類似薬については保険適用を維持した上で、薬剤費の一部を保険給付の対象から外し、患者に「特別の料金」を求める新たな仕組みを、保険外併用療養費制度の中に創設すべきとした。9年3月に実施する。

ただし、▽子ども▽がん患者や難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている人▽入院患者や処置などの一環でOTC類似薬の処方が必要な人▽医師が対象医薬品の長期使用が医療上必要と考える人──は「配慮が必要な者」として特別の料金を徴収しない。

特別の料金の対象になるのは、OTC医薬品と成分が同一の医療用医薬品のうち、最大用量や投与経路、効能・効果を考慮してOTC医薬品との代替性が高いと思われる医薬品。厚労省による機械的な選択では、77成分、1100品目に及ぶ。

新たな仕組みの実施に向けては、特別の料金の対象になる医薬品の範囲や医療上の必要性を判断する考え方などについて、専門家の意見を聞きつつ技術的な検討を行うべきとした。加えて、セルフメディケーションに関する国民の理解向上などOTC医薬品を使用する環境整備を進めるよう求めた。

長期収載品の選定療養の見直しについては、後発医薬品の安定供給の確保に取り組むとともに、患者負担の水準を長期収載品と後発品との価格差を、現行の4分の1から2分の1に引き上げる方向で検討すべきとした。

バイオ医薬品に関しては、まずバイオ後続品の有効性・安全性を医師や薬剤師、患者に啓発し、バイオ後続品を使用する環境を整備する。先行バイオ医薬品の薬剤自己負担は、環境整備の進捗を注視しつつ検討する。

医療機関の業務効率化・職場環境改善の推進にあたっては、特に医療DXの推進について、▽7年度補正予算で生産性向上支援として200億円を計上▽業務効率化・勤務環境改善に計画的に取り組む病院の公的な認定▽医療機関の責務の明確化──などに対応が必要だとした。

入院時の食費は1食あたり40円、光熱水費は1日あたり60円それぞれ引き上げる。いずれも患者負担を増やすが、低所得者には一定の配慮を設ける。

「効果が乏しい医療」の適正化に向けては、厚生労働科学研究などの提案を募り、医療費適正化計画への追加や診療報酬上の取り扱いなどについて引き続き検討する。

このほか、国民健康保険制度の見直しは、「結論が得られた事項に限り実施すべき」とした。

見直しは痛みの分かち合い
健保連・佐野会長代理

健保連の佐野雅宏会長代理はこれまでの議論を振り返り、「医療保険制度の見直しは痛みを伴うことばかりで、痛みの分かち合いを決めることになる」と指摘した。その上で、「健保連の立場として、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの考え方を大きく変えていく必要がある」と訴えた。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は国民皆保険の持続可能性確保のため、「全世代型社会保障の実現に向け、年齢にかかわらず能力に応じた負担の分かち合いが必要だ」と述べ、現役世代の負担軽減に向けた制度見直しの議論を医療保険部会で続けるよう要望した。

横本美津子委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部長)は、引き続きの検討事項となった高齢者医療の窓口負担の見直しなどについて、「医療保険制度の持続可能性や現役世代の負担軽減の観点から、改革を実施する方向で、8年に結論を得ることが重要だ」と指摘した。

城守国斗委員(日本医師会常任理事)は出産費用の無償化に向けた制度創設について、分娩施設に混乱が生じないような水準の基本単価の設定を強調するとともに、慎重な制度の開始や現場への影響の検証、適時適切な見直し対応を求めた。

田辺部会長はこの日の意見の反映や細かな修正を引き取り、議論を締めくくった。厚労省は同日付で「議論の整理」を公表している。

この日の会議に出席した間隆一郎保険局長は、制度見直しに向け多岐にわたり議論してきた医療保険部会と高額療養費の専門委の委員に謝意を示した。その上で、法改正が必要な見直し項目について、「次期通常国会に法案を提出すべく与党との調整を始め、所要の準備を進めたい」と述べた。

また、「今を生きる我々、そして次世代のためにも、しっかりとした内容を考えなければならないと責任を感じている」として今後の議論への協力を求めた。

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