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健保ニュース 2025年12月中旬号

介護保険 2割負担対象拡大へ
厚労省 所得基準引き下げ4案
負担増抑制 最大7000円

厚生労働省は1日の社会保障審議会介護保険部会(部会長・菊池馨実早稲田大教授)で、介護保険サービスを利用する2割自己負担の対象者の拡大に向け、所得基準を引き下げる4つの選択肢を示した。現行では単身で年金収入など年収280万円以上を2割負担の対象としているが、選択肢は260万~230万円以上に引き下げる。新たな負担増に対する激変緩和措置として、増加額の上限を当面は月7000円とする案も示した。年末までに一定の結論を出す。

厚労省が選択肢として示した、2割負担の新たな所得基準は、①260万円(夫婦326万円)以上②250万円(同316万円)以上③240万円(同306万円)以上④230万円(同296万円)以上──。

現行の2割負担の基準は、被保険者の所得上位20%が該当するよう設定されている。
 これに対し、①は上位約25%、②と③は上位25~30%の間、④は上位約30%となる。

厚労省は新たに2割負担となる人数を①が約13万人、②が約21万人、③が約28万人、④が約35万人と推計した。

1割から2割負担に引き上げると、高額介護サービス費による自己負担上限額が月4万4000円(一般)に設定されているため、最大で月2万2000円の負担増となる。

厚労省は、急激な負担増とならないよう新たな2割負担対象者に配慮措置を講じる方針で、当面、最大の負担増を月7000円(2万2000円の約3分の1)に抑える案を示した。

厚労省は、こうした配慮措置を講じた上で、2割負担の対象拡大による財政影響試算を示した。

所得基準が下がるほど財政効果は大きく、給付費は①で約80億円減、④で約210億円減と推計した。

65歳以上の1号保険料と40~64歳の2号保険料を合わせた保険料のマイナス効果は、①約40億円減~④約100億円減。国費は①約20億円減~④約50億円減と見込む。

負担軽減の配慮措置については、新たに2割負担となる対象者に対して、預貯金などが一定額以下の人は申請により1割に戻す案も検討しており、この場合の財政影響試算も示した。

厚労省は、1割に戻す預貯金などの基準を単身で700万円以下、500万円以下、300万円以下の3パターンを提示。700万円以下のケースでは、①で新たに2割負担となる約13万人のうち、約6万人が1割に戻る。

財政効果は預貯金などを低く設定するほど大きく、最大で給付費約220億円減、保険料約110億円減、国費約60億円減と試算した。

預貯金などには有価証券、投資信託などを含む。
 1割負担に戻す手順は、市町村が世帯状況と所得状況を毎年把握して2割負担該当者に仮の負担割合証を発行し、預貯金などの申請を勧奨する。

勧奨を受けた被保険者のうち、預貯金などが一定額以下であれば市町村に申請する。
 保険者が預貯金などの額を確認し、要件を満たすか否か判定。その際、預貯金などの額が正しいかを確認するため、必要に応じて金融機関に照会を行う。要件を満たしていたら1割負担の認定証を作成、交付する。

健保連など保険者団体や経済界は2割負担の対象拡大を支持したが、利用者や労働界などは反対した。

伊藤常務
2割「最大限拡大すべき」

健保連の伊藤悦郎常務理事は、原則2割負担とするよう改めて主張した。その上で、厚労省が示した所得基準の選択肢では、対象者を最大限拡大すべきとして、所得上位30%に該当する230万円以上とすることを求めた。

配慮措置については、保険者の事務負担などを考慮して、負担増に当面上限を設定する方法が現実的と指摘した。

大西秀人委員(香川県高松市長)は、介護保険施設の入居者の預貯金などを勘案して、食費・居住費の負担を軽減している補足給付にかかる事務が、現状においても煩雑であると指摘。

これに加え、自己負担の判定に預貯金などの要件が設定されると、「さらなる事務負担増となり、現場の職員が耐えられなくなることを危惧する」と述べた。

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