健保ニュース
健保ニュース 2025年12月中旬号
改正医療法が成立
医師偏在対策に保険者が拠出
医師の偏在対策や地域医療構想の見直し、医療DXの推進などを柱とする改正医療法が5日の参院本会議で、賛成多数で可決、成立した。2026年4月1日から順次施行する。
医師偏在対策では、都道府県知事が医療計画で「重点的に医師を確保すべき区域」を定めることができ、当該区域で働く医師への手当を保険者からの拠出(保険料)により支給する事業を設ける。施行時期は未定。
一方、外来医師過多区域における無床診療所の開業希望者に対しては、都道府県知事が在宅医療など地域で不足する医療の提供を要請できるようにする。
要請に従わない場合は、勧告や施設名の公表を行う。併せて、保険医療機関の指定期間を通常の6年から3年に短縮する。
また、都道府県が行う医師手当事業について、保険者協議会や医療保険者が意見を述べることができる仕組みの構築を検討し、その結果に基づき所要の措置を講じることを法律の附則に規定した。
地域医療構想については、2040年ごろを展望した医療提供体制を確保するため、病床だけでなく、入院、外来、在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体を構想するものとする。
それに向け、医療機関機能に着目して、地域の実情に応じて、「治す医療」と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、 医療機関の連携・再編・集約化が推進されるよう、医療機関から都道府県に、急性期拠点機能、高齢者救急・地域急性期機能、在宅医療等連携機能など医療機関機能を報告する制度を導入する。
また、与野党による修正で、都道府県が病床数の削減を支援する事業を行えるようにし、国がこの事業に必要な費用を予算の範囲内で負担する規定を盛り込んだ。事業は27年度から開始予定の新たな地域医療構想を見据えた時限措置として実施し、27年4月1日に廃止する。
医療DXの推進に向けては、30年12月31日までに電子カルテの普及率を約100%とする達成目標を規定した。
社会保険診療報酬支払基金については、新たに医療DX業務を追加し、これに合わせて名称、法人の目的、組織体制を見直す。
4日の参院厚生労働委員会では、法案の採決と併せて附帯決議を採択した。
衆院厚労委の附帯決議と同様、医師手当事業の費用に保険料が充当されることを踏まえ、拠出者である保険者の本来の機能を棄損することなく、派遣医師などへの手当増額に使途を限定することや、同事業の実施状況に保険者が意見を述べるなど関与できる体制を確保するとした。
医療法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(一部抜粋)
令和7年12月4日 参院厚生労働委員会
医師手当事業の実施に当たっては、その費用に保険料が充当されることを踏まえ、拠出者である保険者の本来の機能を棄損することなく、また、被保険者の負担や制度の公平性に十分留意し、重点的に医師の確保を図る必要がある区域に派遣された医師及び従事する医師に対して実際に支払われた手当増額に使途を限定した上で、目安を示すほか、拠出者である保険者協議会を含む保険者がその実施状況等について確認や検証を行い、意見を述べるなど関与できる体制を確保すること。加えて、社会保障改革を進めていく中で現役世代の保険料負担を抑えるとの方針の下、当該事業により保険料が上昇しないよう保険給付と一体的に対応を図ること。
また、安易に保険料財源を充てる前例とせず、引き続き医師偏在対策に向けて、憲法上の職業選択の自由や営業の自由と保険医療機関の指定等との関係を整理し、更なる規制的な手法を検討するとともに、対策の効果検証を定期的に行い、必要な見直しを行うこと。