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健保ニュース 2025年12月中旬号

米川副会長インタビュー
健保組合支援 個々の状況に応じて
「4つの約束」「5つのチャレンジ」を実現

健保連の米川孝副会長は11月11日、本誌の単独インタビューに応じ、9月に健保連が発表した「『ポスト2025』健康保険組合の提言」を踏まえた今後の活動方針などを語った。提言は、「加入者(国民)の皆さまへの3つのお願い」と、それを後押しする「健康保険組合の4つの約束」、個々の健保組合の状況や加入者の特性に応じた先進的な取り組みに挑戦する「健康保険組合が取り組む5つのチャレンジ」を掲げているが、「4つの約束」、「5つのチャレンジ」を健保組合が実現するために、健保連は個々の健保組合の状況を把握し、それに応じて支援していく考えを示した。


─ 健保組合を取り巻く状況と、それを踏まえて「『ポスト2025』健康保険組合の提言」で強調したいポイント

近年の賃金の上昇もあって健保組合を取り巻く状況は一息ついたかのように見えるかもしれないが、決して先行きは楽観できない。将来に向けて安定した運営ができるのかということについて大きな懸念を持っている。

一つは医療保険制度だが、急速な高齢化や医療の高度化の影響で医療費は大幅に増大し、2040年には70兆円を超えると予測され、その半分は後期高齢者の医療費が占める。このままだと、減少する現役世代では支えきれない深刻な状況を迎えることになる。

これから起こるであろう将来予想を踏まえ、医療保険制度を将来にわたって安定的に運営できる形にしなければならない。

こうした観点から、提言では、国に対して▽負担の公平性の確保▽保険料と公費(税)の負担構造の見直し▽保険給付の見直し▽医療提供体制の改革▽医療DX施策の強化──などを柱とする制度改革を求めた。

もう一つは、これまでも我々は必要な制度改革を主張してきたが、客観的に現在の状況と、なぜ改革が必要なのかという問題意識を、まずは加入者、国民、そして事業主の皆さんと共有しなければならないと強く思う。そうでなければ我々の一方的な発信と受け止められかねない。

医療保険制度の現状と課題、危機感を多くの関係者と共有し、理解を得て改革を進めていきたい。各々が自分たちのポジションに応じた主張をぶつけ合うだけではなかなか前進しない。

問題意識を共有することが何よりも大切であり、今回の提言をまとめるにあたっては、加入者、国民の声を生かして、それによって支持を得ることを最も重視した。


─ 提言に対する健保組合の評価

提言の内容は新聞各紙などで取り上げられ、世論に訴求できたと思うが、一番の効果は健保組合の皆さんが自分たちの取り組むことを非常に好意的に、前向きに捉えていただいたことだと感じている。

異論があってもおかしくないと思ったが、加入者、国民にもっと向き合おう、そして自分たちはどう取り組んでいくのかということについて、「3つのお願い」、「4つの約束」、「5つのチャレンジ」と伝わりやすい形で前面に打ち出したのが良かったと思っている。


─ 健保連の主張を展開するにあたって大切なポイント

第一に情報発信が重要と考えている。1月に日本経済新聞に掲載された健保連の広告が、日経広告賞で最優秀賞を受賞した。広告の中身は医療や健康保険に関する知識、実情を大学入学共通テストの問題に模して出題するものだが、医療や健康保険制度への関心を喚起したものであったと認識している。

情報発信については、特に将来世代という意味で若者向けを重視している。従来以上に若者が情報を得て、若者同士が医療保険制度のあり方について、どうあるべきかなどを議論してもらえたらありがたい。情報発信はあらゆる形で努めていく必要があり、健保連はもちろん、健保組合の皆さんも加入者、事業主に積極的に発信していただきたい。


─ 健保組合の「4つの約束」、「5つのチャレンジ」を実現するための取り組み

「4つの約束」、「5つのチャレンジ」について、各健保組合がどう取り組み、それをどう健保連として応援するのかということだが、まずは個々の健保組合の状況を理解することが重要だ。

一つひとつの健保組合の立ち位置、状況は違うので、そのことを健保連としてよく理解した上で、個々の健保組合がどのステージにあるのかを把握し、丁寧に接して支援する必要がある。

「4つの約束」の実行に苦労している健保組合もあれば、そうでない健保組合もあると思う。「4つの約束」、「5つのチャレンジ」について、まだ体制が整っていない健保組合への支援と、例えばDXにチャレンジしているが、「この部分が少しわからない」と悩んでいる健保組合などではおのずと支援の仕方も違ってくる。フェーズの違いに応じた支援を類型化して提供したいと考えている。

健保組合それぞれが加入者の声を聞きながら、加入者のためにより良いサービスを提供していくことによって健保組合の存在価値を高める。健保組合の皆さんには、加入者、国民に「3つのお願い」をして、健康保険制度をより良いものにしていこうと訴える以上、自分たちもより魅力ある健保組合にしていこうと志向していただきたい。それが十分にできない事情があるということであれば、健保連として個別にサポートする手立てを考えたい。

「ポスト2025」健康保険組合の提言

◇ 加入者(国民)の皆さまへの3つのお願い

①医療費のしくみや国民皆保険制度の厳しい状況についてもっと知ってください
②自分自身で健康を守る意識をもってください。健診をきちんと受けてください
③軽度な身体の不調は自分で手当てするセルフメディケーションを心がけてください


◇ 健康保険組合の4つの約束

①各種健診を受診しやすいよう、こまめに働きかけます
②一人ひとりの健康状態に合わせた丁寧な保健指導を実施します
③予防・健康づくりに役立つ情報を提供します
④職場環境に応じた予防・健康づくりに取り組みます(事業主との連携)


◇ 健康保険組合が取り組む5つのチャレンジ

①多様な働き方に対応した保健事業の充実強化
②かかりつけ医との連携
③健康保険組合の発信力強化
④データ分析強化による加入者サービスの充実
⑤デジタル化による健康保険組合業務革新


「ポスト2025」健康保険組合の提言

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