健保ニュース
健保ニュース 2025年12月上旬号
健保連・保健事業セミナー 取り組み事例発表
女性の健康、ICT活用で4組合
健保連は11月21日、オンライン形式で「KENPO Action!──取り組もう、はじめの一歩──」と題する保健事業セミナーを開催した。
各健保組合が保健事業のはじめの一歩を踏み出す際の参考として、花王健保組合とファイザー健保組合が女性の健康課題をテーマに、計機健保組合とデンソー健保組合がICT活用をテーマに自組合の取り組みを事例発表した。
「女性の健康ニュース」
閲覧6割は男性社員
花王健保組合常務理事の守谷祐子氏は事業主とのコラボレーションで進めている女性の健康支援の取り組みを報告した。
健康支援の取り組みの6つの柱とそれを支える基盤活動を定めた「Kao健康2025」では、「女性」を柱の一つとし、女性社員が月経や更年期を上手く管理して健やかにいきいきと、また安心して働き続けられるよう取り組むことを掲げた。
「女性の健康ニュース」をイントラネットを通じて社員に配信し、1号あたりの平均アクセス数は3500回に上る。そのうち6割は男性社員が占めており、共に働く仲間への理解浸透に役立っている。
このほか、女性の健康に関する相談を受ける健康窓口を設置。相談者はスマートフォンでQRコードを読み取るだけで簡単にアクセス可能で、いつでもどこでも相談でき、産婦人科専門の産業医が回答する仕組みを整えていることなど様々な取り組みを紹介した。
婦人科受診ハードル下げ
かかりつけ医を
ファイザー健保組合常務理事の小川佳政氏は、アブセンティーズムの軽減、女性の活躍支援を目的に2020年頃から注力している女性特有の健康課題への取り組みについて報告した。
女性の加入者に対しては産婦人科受診のハードルを下げ、産婦人科のかかりつけ医を持ってもらうことを狙いとする。男性加入者に対しても女性が通院、休暇を取得できる組織風土・家庭環境を作るための理解向上を図っている。
また、オンライン健康セミナーは年3~4回実施するうち約半数の1~2回は女性の健康課題をテーマとする。小川常務理事は加入者に直接訴えかけることができることをセミナーのメリットとして強調。▽開催時間を母体企業の休憩時間とする▽アーカイブ動画を用意する──配慮のほか、リアルタイム視聴者にグッズなどと交換可能な健康ポイントを付与するインセンティブや機関誌に同梱したグッズの使い方をセミナーで説明し両者の連携を図るなど様々な工夫を行っている。
加入者に身近な
LINE接点に情報発信
計機健保組合事務長の吉田若菜氏は健保公式LINEとインセンティブを活用した上手な医療のかかり方推進事業をプレゼンした。
同健保組合は、加入者に身近なLINEを活用した保健事業支援サービスを導入し、健保組合の公式LINEとしてオリジナルのアカウントを新たに作成した。
上手な医療のかかり方のプロモーションにおいては、LINEで月2回配信する啓発資材からOTC医薬品の購入サイトへ誘導することで、啓発と実践をつなげた。また、市販薬を学ぶチェックテストの全問正解者にはクーポンを進呈し、OTC医薬品の購入を支援するとともにコンテンツ開封率の向上を図っている。
また、対象に定めた疾患の受診者にダイレクトメールを送付したところ、21%の対象者の受診回数が減少し、医療費適正化効果は約1200万円に上ると推計された。
吉田氏は、今後もICT活用による接点拡大を継続し、財政改善と健康増進の両立を目指すと方針を語った。
コラボヘルス強化へ
トップ層と個別対話
デンソー健保組合常務理事の永井立美氏は、データに基づいた事業主とのコラボヘルスの強化について報告した。
母体企業、労働組合と三者で平成28年に健康協議会を発足させ、データ蓄積を生かした効果的・効率的な保健事業を展開する中、健康経営優良法人の認定取得に前向きな事業所が多い一方、特定保健指導の実施率は30%以下にとどまっていた。そこで、経営陣・マネジメント層が健保組合について十分理解できていないことを課題とし、令和3年からトップ層と個別対話の機会を作り、意識改革を図った。
また、特定保健指導の実施率をグループ会社社長会で各事業所の社名入りで開示するほか、特定保健指導の費用の全額を健保組合が負担し、受けやすい環境を整備。生活習慣の改善が将来の医療費増加リスクや休業リスク、生産性低下リスクを抑制し、会社の競争力に資すると説明。事業所トップが特定保健指導の完了に責任を持つことを求めてきた結果、実施率が上昇している。