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健保ニュース 2025年12月上旬号

第25回医療経済実調(医療機関等調査)
病院赤字 診療所は黒字維持
歯科、薬局も黒字

中央社会保険医療協議会(会長・小塩隆士一橋大経済研究所特任教授)は11月26日、令和8年度診療報酬改定の基礎資料となる第25回医療経済実態調査の報告書をまとめた。

医療機関や薬局の経営状況などを把握するために行われた医療機関等調査によると、一般病院の6年度の損益率(収益に対する損益差額の割合)は全体でマイナス7.3%の赤字となった一方、一般診療所は個人が28.8%(前年度比3.2ポイント減)、医療法人が4.8%(同3.5ポイント減)と黒字を維持した。

全般的に医療機関経営は悪化しているものの病診の間で格差がみられる。
 歯科診療所の損益率は、個人が27.6%(同増減なし)、医療法人が5.5%(同0.1ポイント増)と前年度と同水準の黒字。薬局も黒字で個人が11.2%(同0.5ポイント減)、法人が4.9%(同0.2ポイント減)だった。

医療経済実態調査は、医療機関等調査と保険者の財政状況などを把握するために行われる保険者調査で構成される。

医療機関等調査は、全国から層化無作為抽出した施設を対象に、改定前後の5年度と6年度の医業収益、介護収益、給与費や医薬品費、減価償却費などを調べた。

医業・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の施設を集計した、一般病院における6年度の1施設あたりの収支は、医業収益が36億3167万円(同2.5%増)、介護収益が737万円(同2.6%増)に対し、医療・介護費用は39億628万円(同2.3%増)で、差し引き2億6724万円の赤字。

この結果、医業利益率に相当する損益率はマイナス7.3%となるが、前年度よりも0.2ポイント低下した。

一般病院の損益率を設置主体別にみると、医療法人はマイナス1.0%(同0.1ポイント減)、国立はマイナス5.4%(同0.4ポイント減)、公立はマイナス18.5%(同1.4ポイント増)、公的はマイナス4.1%(同1.4ポイント減)で、公立が悪化した。

国公立を除いた一般病院の損益率はマイナス2.9%(同0.8ポイント減)、国公立はマイナス16.3%(同1.0ポイント増)となっている。

精神科病院の損益率はマイナス6.3%(同1.7ポイント増)だった。
 病院機能別の損益率は、特定機能病院がマイナス8.9%(同0.8ポイント増)、DPC対象病院がマイナス7.4%(同0.4ポイント増)、こども病院がマイナス16.6%(同0.1ポイント減)で、こども病院の赤字が大きい。

入院基本料別の損益率は、急性期一般入院料1の算定病院はマイナス6.1%(同0.6ポイント減)、同2~3の算定病院はマイナス11.5%(同0.8ポイント減)、同4~6の算定病院はマイナス10.3%(同0.5ポイント増)。

療養病棟入院基本料別の損益率は、基本料1の算定病院がマイナス2.7%(同0.4ポイント増)、基本料2の算定病院はマイナス16.3%(同1.2ポイント増)だった。

一般診療所のうち、入院収益のない診療所の損益率は、個人が29.1%(同3.2ポイント減)、医療法人が5.4%(同3.9ポイント減)でどちらも黒字だった。入院収益のある診療所も個人が23.0%(同2.1ポイント減)、医療法人が1.4ポイント(同1.1ポイント減)の黒字となっている。

主な診療科別の損益率は、▽内科9.4%(同5.5ポイント減)▽小児科12.5%(同11.8ポイント減)▽精神科19.0%(同1.6ポイント減)▽外科7.1%(同2.9ポイント減)▽整形外科7.2%(同0.6ポイント減)▽産婦人科4.2%(同2.1ポイント減)▽眼科13.4%(同1.3ポイント減)▽耳鼻咽喉科17.6%(同7.0ポイント減)▽皮膚科12.2%(同2.1ポイント減)──など収益は悪化したがすべて黒字だった。

薬局の収益率について、法人の同一グループ店舗数別の状況をみると、▽1店舗が5.2%(同0.1ポイント増)▽2~5店舗が3.2%(同0.8ポイント減)▽6~19店舗が7.6%(同0.5ポイント減)▽20~49店舗が10.2%(同0.4ポイント減)▽50~99店舗が5.1%(同0.4ポイント増)▽100~199店舗が4.9%(同0.2ポイント減)▽200~299店舗がマイナス1.2%(同2.0ポイント減)▽300店舗以上が4.1%(同0.1ポイント減)──で、20~49店舗で二桁に達するが、規模による大きな格差は見られない。

立地の違いで損益率を比較すると、「診療所前」は6.0%、「中小病院前」は4.7%、「大病院前」は2.0%、「中小病院敷地内」は3.4%「診療所敷地内」は11.2%、「医療モール内」は7.4%などで、診療所の敷地内にある薬局が特に高い。

医療機関の職種別常勤職員1人あたりの年間給与額は、一般病院が病院長2587万円(同2.1%減)、医師1485万円(同0.2%増)、歯科医師1291万円(同4.3%増)、薬剤師581万円(同2.1%増)、看護職員541万円(同2.4%増)など。

一般診療所は、医療法人が院長2898万円(同4.2%増)、医師1099万円(同6.0%増)、薬剤師661万円(同2.7%増)、看護職員413万円(同1.2%増)などで、医師を中心にいずれも増加した。

個人は医師1114万円(同2.0%減)、薬剤師613万円(同5.0%増)、看護職員375万円(同0.3%増)などとなっている。

歯科診療所は、医療法人が院長1458万円(同1.3%減)、歯科医師646万円(同5.1%減)、歯科衛生士338万円(同2.9%増)、歯科技工士478万円(同4.2%増)など。

個人は歯科医師764万円(同5.6%増)、歯科衛生士313万円(同3.6%増)、歯科技工士423万円(同0.7%減)などとなっている。

薬局は、法人が管理薬剤師726万円(同0.2%増)、薬剤師480万円(同0.3%増)。個人は薬剤師401万円(同2.8%増)だった。

医療機関と薬局の6年度1施設あたりの資本(資産-負債)の状況は、一般病院20億9411万円(同2.7%減)、一般診療所1億3877万円(同1.4%増)、歯科診療所3942万円(同5.9%増)、薬局2592万円(同1.9%減)で一般病院と薬局以外で増加した。

病院機能別に特別集計
利益率に格差

また、厚生労働省は、医療経済実態調査の調査票データを特別集計し、医療法人情報データベースシステム(MCDB)と同じ手法で分析した結果を26日の中医協総会に報告した。

6年度の病院機能大分類別の経営状況は、いずれも営業利益率(平均)が前年度から悪化したが、急性期がマイナス9.9%~マイナス12.0%、回復期がマイナス0.5%、慢性期がマイナス1.0%などと機能によって格差があり、急性期がより厳しい内容となっている。

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