健保ニュース
健保ニュース 2025年6月下旬号
新しい資本主義実行計画
バイオ後続品 選定療養化を検討
政府が13日に閣議決定した成長戦略「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」は、国民の安心、経営の持続可能性を目指す医療分野の取り組みとして、バイオ後続品(バイオシミラー)の選定療養化の検討と保険外併用療養費制度の対象範囲を拡大する方針を盛り込んだ。
2029年度までの5年間で、日本経済全体で実質賃金年1%程度の上昇を「賃上げのノルム(社会通念)」として定着させる方針を掲げ▽賃上げと投資がけん引する成長経済の実現▽中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の推進▽投資立国の実現▽科学技術・イノベーション力の強化──などの政策に官民連携で取り組むとした。
科学技術・イノベーション力の強化では、健康・医療分野の「国民の安心・経営の持続可能性─質の確保と選択肢の拡大─」の中で、バイオ後続品について、24年10月から施行された長期収載品の選定療養を参考にしながら、保険給付のあり方を検討するとした。
さらに、国民や医療関係団体から導入すべき選定療養の事例を意見募集し、26年度診療報酬改定に向けた議論の中で検討する。
また、有効性評価が十分ではない最先端医療について、希望する患者が保険収載を待つことなく利用できるよう、保険診療と保険外診療の併用を認める保険外併用療養費制度の対象範囲を拡大する。特に再生医療は、薬事承認と同等の有効性・安全性を前提に、先進医療として取り組めるよう運用を工夫するとした。
加えて、国民によるサービス選択と品質向上、健全なマーケット形成につなげるために、予防・健康づくり領域の質の見える化を推進し、エビデンス整理などの枠組みづくりを促す。こうした取り組みを踏まえ、質が確保されたサービスの保険者による積極的な活用を推進するとした。
中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の推進では、地域で活躍する人材の育成と処遇改善に向け、医療・介護・保育・福祉分野の現場での公定価格を引き上げる方針を打ち出した。物価や賃金が上がる中で、公定価格で処遇が定まる分野であっても、賃上げや経営の安定、離職防止、人材確保が図られるようにコストカット型からの転換を図る必要があると指摘した。
こうした考えに基づき、これまでの歳出改革を通じた保険料負担の抑制努力も継続しつつ、次期報酬改定をはじめとした必要な対応策について、25年春季労使交渉による力強い賃上げの実現や、昨今の物価上昇による影響などを踏まえながら的確に対応すると明記した。
また、高齢者数の増加と生産年齢人口の減少に伴い、医療従事者の確保はさらに困難になると見込み、働き方改革による労働環境改善や医療DX、タスクシフト・シェアなどの省力化を着実に推進する。電子カルテ情報の標準化など、医療DX推進のための情報基盤の整備を進めるとともに、30年までにおおむね全ての医療機関に電子カルテを導入するとした。
投資立国の実現では、医療DXのさらなる推進を掲げ、健康・医療に関する情報などPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を有機的に連結できる環境整備や適切なオンライン診療を含む遠隔医療の推進、ウェアラブルデバイスなどを用いたヘルスケアにおけるDXなどを並べた。