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健保ニュース 2023年12月中旬号

介護利用者負担の所得判断基準
6年度予算編成過程で決着
伊藤常務理事 原則2割へ確実な検討を

社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長)は7日、介護保険制度の「給付と負担」をテーマに議論した。

利用者2割負担の一定以上所得の判断基準について、令和6年度介護報酬改定での対応とあわせ、年末の予算編成過程で検討する対応を決めた。後日、予算編成過程で決定した内容を同部会に報告する。

全世代型社会保障構築会議が5日に取りまとめた「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)」を踏まえた対応で、厚生労働省は、利用者2割負担の一定所得以上の判断基準を見直す場合、最速で7年8月から負担割合が変更されるとの見通しを示した。

介護保険制度における利用者負担は、平成12年4月の制度創設以来、1割だったが、世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、27年8月に被保険者の上位20%を2割負担、30年8月に現役並み所得者を3割負担へと見直した。

このうち、利用者負担が2割となる「被保険者の上位20%」は、「合計所得金額160万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額280万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合346万円以上)」の場合に該当。利用者に占める割合は4.6%(約24万人)となる。

一方、75歳以上の後期高齢者における医療保険の患者負担は、令和4年10月から「被保険者の上位30%」を2割とする見直しを実施。75歳以上の被保険者に占める割合は約20%となる。

この日の会合では、厚生労働省が11月6日に開催した前回会合の議論を踏まえ、「75歳以上における単身・夫婦2人世帯の収入と支出の状況(年収別モデル)」の追加試算や、利用者2割負担の所得・収入基準を見直した場合の影響、世帯主75歳以上世帯の貯蓄状況を提示した。

このうち、利用者2割負担の所得・収入基準を見直した場合の影響は、「所得・収入基準」を①「合計所得金額150万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額270万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合336万円以上)」②「合計所得金額70万円以上」かつ「年金収入+その他合計所得金額190万円以上(単身世帯の場合。夫婦世帯の場合256万円以上)」─などのケースを試算。①のケースでは、▽被保険者数62万人▽影響者数8万人▽給付影響額▲90億円─、②のケースでは、▽被保険者数570万人▽影響者数75万人▽給付影響額▲800億円─の影響を見込んだ。

他方、厚労省は、5日の経済財政諮問会議に提出された全世代型社会保障構築会議の「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)」のなかで、介護保険制度における利用者2割負担の一定所得以上の判断基準は、「本年末の予算編成過程で検討すべき」と明記されたことを説明。

このため、利用者2割負担の一定所得以上の判断基準のあり方については、負担能力に応じた給付と負担の不断の見直しの観点から、現場の従事者の処遇改善をはじめ、地域におけるサービス提供体制の確保にかかる介護報酬改定での対応と合わせ、予算編成過程で検討する対応を提案した。

その際、▽医療サービスと利用実態が異なるため、単純な比較は困難である▽判断基準の見直しの検討は、見直しによるサービスの利用への影響について留意する▽仮に判断基準の見直しを行う場合、保険者の実務への影響や利用者への周知期間に配慮する観点から、十分な準備期間を設ける─ことに留意しつつ、検討するとした。

健保連の伊藤悦郎常務理事は、「昨年から2回の先送りも含め、利用者2割負担について介護保険部会で十分な検討が行われないなか、予算編成過程に検討を委ねることは部会の存在意義が問われるものであり、極めて遺憾と言わざるを得ない」との考えを示し、今後このような事態が起こらないよう厚労省に強く要望した。

利用者2割負担については、「高齢者と現役世代の世代間バランスを考えると、フローだけでなくストックも考慮した検討が求められる」と指摘。そのうえで、介護保険制度の安定性、持続可能性を確保していくためには、既に限界に達している現役世代の負担軽減に向けた見直しを進めていく必要があると強調し、低所得者に配慮しつつ、利用者負担を原則2割とする踏み込んだ見直しを確実に実施していく検討を行うよう訴えた。

厚労省は、これまでの介護保険部会における意見を反映したうえで、予算編成過程で検討する意向を示した。

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