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健保ニュース 2023年6月下旬号

厚労省・検討会が「報告書」
長期収載品 薬価上の措置を見直し
総価取引改善へ流通GL改訂

厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」は9日、産業構造、薬価制度、流通における現状の課題を踏まえた対応策の方向性を盛り込んだ「報告書」を取りまとめた。

これを受け、厚労省は、後発品の産業構造は新設する会議体、薬価制度は中央社会保険医療協議会、医薬品流通は医療用医薬品の流通改善に関する懇談会で具体的な検討を進めていく方針を示した。

「報告書」は、革新的医薬品の日本への早期上市や医薬品の安定的な供給を図る観点から、①安定供給の確保②創薬力の強化③ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消④適切な医薬品流通に向けた取組─の4テーマを柱とし、産業構造、薬価制度、流通などの現状課題を踏まえた対策を提言した。

このうち、①は、小規模で生産能力も限定的な企業が多いなか、少量多品目生産が行われるといった後発品産業の構造的課題が存在していると指摘し、安定供給等にかかる企業情報を踏まえた新規収載や、改定時の薬価のあり方を検討する方向性を示した。

また、後発品以外も含む医療上必要性の高い品目の安定供給の確保に向け、薬価の下支え制度の運用改善、中長期的には、採算性を維持するための仕組みを検討。後発品産業のあるべき姿の策定やその実現に向けた議論を行う会議体を新設する。

②は、日本起源品目の世界市場シェアが低下するなど、日本の創薬力が低下し、新たなモダリティへの移行に立ち遅れるなど、研究開発型のビジネスモデルへの転換促進が必要な状況にあると問題提起。

長期収載品による収益への依存から脱却を促すため、長期収載品の様々な使用実態に応じた評価を行う観点から、選定療養の活用や、現行の薬価上の措置の見直しを含め対応を検討するよう提言した。

③は、欧米では承認されている143品目が日本未承認で、このうち国内開発未着手の医薬品が希少疾患用、小児用を中心に86品目あり、ドラッグ・ロスを懸念。

日本市場の魅力を向上させる薬価制度に向け、▽新規モダリティなどの革新的医薬品についての新たな評価方法▽医療上特に必要な革新的医薬品の迅速導入に向けた新たなインセンティブ▽ベンチャー発品目の新薬創出等加算における適切な評価のあり方▽医療上特に必要な革新的医薬品について、特許期間中の薬価維持の仕組みの強化▽市場拡大再算定の対象となる類似品の考え方の見直し▽医療保険財政への影響を考慮しメリハリをつけた対応─などを検討するよう訴えた。

④は、経営原資を得ることを目的に医薬品の価値に関わりなく前回改定時と同じベースでの総価値引き交渉が行われているなど、薬価差を得る目的での取引が増加し、一部で過度な薬価差の偏在が課題となっていると指摘。

特に、品目数が多い長期収載品や後発品は、価格交渉の実務的な負担を減らす観点から総価取引が行われることが多く、値引きの際の調整に使用されるため、薬価の下落幅が大きくなっている現状を課題に据えた。

流通関係者全員が医薬品特有の取引慣行や過度な薬価差等の是正を図り、適切な流通取引が行われる環境を整備するため、医療上の必要性の高い医薬品を従来の取引と別枠とするなど、総価取引改善に向け流通改善ガイドラインを改訂する対策を明示した。

このほか、薬剤流通安定のためのものとされている「調整幅」について、「流通コストの状況等を踏まえ、どのような対応を取り得るか」を引き続き検討すべき課題に位置づけた。

このほか、「産業育成を公的保険の枠内のみで考えるのではなく、枠外も含めて考えることも必要ではないか」などの意見を、その他の課題として明記した。

各会議体の検討状況や、政府における対応策の実施状況のフォローアップを行うため、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」は、引き続き議論を行うとともに、人口構造の変化や技術革新など、医薬品産業を取り巻く環境の変化を踏まえ、新たな課題等の検討を行うとした。

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