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健保ニュース 2023年6月中旬号

政府が「こども未来戦略方針」案
社会保障改革で追加負担ゼロ
支援金制度 賦課対象など年末結論

政府は1日の第5回こども未来戦略会議(議長・岸田文雄首相)に、「こども未来戦略方針」案を提示した。年間で約3.5兆円の予算規模を見込む「加速化プラン」等を支える安定財源の確保に向け、社会・経済の参加者全員が連帯し公平な立場で広く負担する「支援金制度」を構築。社会保険の賦課・徴収ルート活用などの詳細について年末に結論を示す。一方、令和6年度から10年度の5年間、社会保障の歳出改革を徹底し、実質的に追加負担を生じさせない対応を図るほか、既定予算も最大限活用。所要の改正法案を6年通常国会に提出する。政府は、6月中旬に策定する「骨太方針2023」に向け、次回会合で「こども未来戦略方針」を取りまとめる。

この日の会合では、次元の異なる少子化対策を実現するための「こども未来戦略方針案」を政府が示した。

こども・子育て政策の基本的な考え方として、若年人口が急激に減少する令和12年までに少子化トレンドを反転できなければ、人口減少を食い止められなくなり、持続的な経済成長の達成も困難となると指摘。

ラストチャンスの12年までに、日本の持てる力を総動員して、少子化対策と経済成長実現に不退転の決意で取り組む必要があると強調した。

今回の少子化対策で特に重視しているのは、若者・子育て世代の所得を伸ばさない限り、少子化を反転させることはできないことを明確に打ち出した点にあるとした。

次元の異なる少子化対策としては、▽構造的賃上げ等とあわせて経済的支援を充実させ、若い世代の所得を増やす▽社会全体の構造や意識を変える▽すべてのこども・子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援する─ことを基本理念に、抜本的に政策を強化する。

若者・子育て世代の所得向上と次元の異なる少子化対策を、「車の両輪」として進めていくことを重要視し、少子化対策の財源を確保するため、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがあってはならないとの考えを示した。

児童手当の拡充など
加速化プランに3兆円

令和6年度から8年度を集中期間とする「こども・子育て支援加速化プラン」は、年間で約3兆円を予算規模とし、①ライフステージを通じた子育てにかかる経済的支援の強化(予算規模1.5~1.6兆円)②すべてのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充(同0.7~0.8兆円)③共働き・共育ての推進(同0.7~0.8兆円)─に取り組む。

①は、▽児童手当の拡充▽出産等の経済的負担の軽減▽医療費等の負担軽減▽いわゆる「年収の壁(106万円/130万円)」への対応─などを具体的な施策とする。

このうち、「児童手当の拡充」は、▽所得制限の撤廃(0.15兆円)▽支給期間を高校卒業まで延長(0.4兆円)▽第3子以降3万円(0.6兆円)─の総額約1.2兆円の予算規模で、6年度中の実施を検討。

また、「出産等の経済的負担の軽減」は、来年度からの出産費用の見える化の実施に向けた具体化を進めたうえで、8年度を目途に出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め、出産支援のさらなる強化について検討を進める。

「医療費等の負担軽減」は、概ねすべての地方自治体で実施されている「こども医療費助成」について、国民健康保険の減額調整措置を廃止する。

「いわゆる年収の壁(106万円/130万円)への対応」は、被用者が新たに106万円の壁を超えても手取り収入が逆転しないよう、労働時間の延長や賃上げに取り組む企業に対し、必要な費用を補助するなどの支援強化パッケージを本年中に決定し実行。制度の見直しにも取り組む意向を明示した。

歳出の改革工程表策定
6年通常国会に法案提出

「加速化プラン」を支える安定的な財源の確保に向けて、こども家庭庁のもとに、こども・子育て支援のための新たな特別会計(こども金庫)を創設し、こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進める。

財源については、令和6年度から10年度までの5年間に徹底した歳出改革を行い、それにより得られる公費節減および社会保険負担軽減の効果を活用しながら、「実質的に追加負担を生じさせない」ことをめざす。

具体的な改革工程表の策定による社会保障の制度改革や歳出の見直し、既定予算の最大限の活用などに取り組む。消費税など、こども・子育て関連予算充実のための財源確保を目的とした増税は行わないと明記した。

さらに、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯して、公平な立場で広く負担していく新たな枠組みである「支援金制度(仮称)」を構築。その詳細について年末に結論を出す考えだ。

「支援金制度」は、労使を含めた国民各層および公費で負担することとし、その賦課・徴収方法は賦課上限のあり方や賦課対象、低所得者に対する配慮措置を含め、負担能力に応じた公平な負担とすることを検討。全世代型で子育て世帯を支える観点から、賦課対象者の広さを考慮しつつ、社会保険の賦課・徴収ルートを活用すると明記し、医療保険の仕組みも想定した。

全世代型構築へ徹底した社会保障制度改革により、「支援金制度」の創設に伴う保険料負担の上昇抑制をめざす。

安定財源は、「加速化プラン」の実施が完了する10年度までに確保する。その間に財源不足が生じないよう、必要に応じ、つなぎとして、こども特例公債(こども金庫が発行する特会債)を発行。必要な制度改正のための所要の法案を6年通常国会に提出する方針を表明した。

予算規模3兆半に拡充
年末までに「戦略」策定

年間で約3兆円と見込んだ「加速化プラン」の予算規模は、今後こども大綱で具体化する貧困、虐待防止、障害児・医療的ケア児に関する支援策について、予算編成過程で施策の拡充を検討し、全体として3兆円半ばの充実を図る方向性を示した。

現時点の「加速化プラン」を実施することで、国のこども家庭庁予算(令和4年度4.7兆円)は約5割増加する見通し。12年代初頭までに、こども家庭庁予算やこども1人当たりで見た予算の倍増をめざす。

「加速化プラン」の実施状況や各種施策の効果等を検証しつつ、こども・子育て政策の適切な見直しを行い、PDCAを推進していく。その際は、費用負担など財政構造も制度ごとに異なっている状況を見直す。

「総合的な制度体系」を構築する観点から、現行の関連制度を1つの制度に統合していくことも視野に、給付と負担の関係を含め、その全体像が国民にとって分かりやすい制度としていくと明記した。

今後、「こども未来戦略方針」の具体化を進め、年末までに「戦略」を策定するとした。

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