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健保ニュース 2023年5月下旬号

財務省が社保改革の方向性を提言
後期医療窓口負担を原則2割
看護配置要件の急性期入院料は廃止検討

財務省は11日、医療・介護・少子化分野における今後の課題と改革の方向性を財政制度等審議会(十倉雅和会長)の財政制度分科会に示した。

総論として、団塊世代が75歳となる「2025年」までに改革を実現するには、事実上本年が最後のチャンスであり、少子化対策だけでなく、「全世代型」の制度を実現するため、医療・介護の改革議論を加速する必要があるとした。

医療・介護の給付費用はこの20年で大幅に増加し、公費負担・保険料負担も増えていると指摘したうえで、診療報酬・介護報酬を1%引き上げると、保険料負担は約3000億円増加するとの試算を明示。

現役世代の負担能力を考えれば、「経済成長率以上に伸びている給付費用は持続可能な状況とは言い難い」と問題提起し、今後、さらに給付費用自体の抑制に取り組むべきとした。

医療分野では、昨年10月に一定所得以上の後期高齢者に導入された窓口2割負担について、「原則2割負担」とする改革を今後の課題に位置づけた。

他方、医療制度を持続可能にするためには、給付と負担のバランスに加え、効果的・効率的な医療提供体制を構築する必要があると主張。そのうえで、▽病院の役割分担(地域医療構想)▽診療所等のかかりつけ医機能の確保・強化▽地域包括ケア(地域における医療・介護の連携)─をあわせて進めていく必要性を強調した。

地域医療構想の実現の必要性、進捗の遅さを踏まえれば、2025年以降の確実な目標実現を見据え、地域医療構想と整合的な対応を行うよう各医療機関に求めるなど、「もう一歩踏み込んだ法制的対応が必要」との考えを示した。

さらに、病床の役割分担を適切に進めるため、「7対1」といった看護配置に依存した診療報酬体系から、患者の重症度、救急受け入れ、手術などの実績をより反映した体系に転換していくべきと指摘。そのうえで、「10対1」といった看護配置を要件とする急性期一般入院料の廃止を検討するよう提言した。

他国と比較した医療費や薬剤費の高さにも焦点を充て、「保険給付が今のままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない」との認識を示した。

公的医療保険の役割は大きなリスクをシェアすることを前提に考えるべきとの観点から、保険給付範囲について、▽高額な医薬品は費用対効果を見て保険対象とするか判断する▽医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす▽薬剤費の一定額までは自己負担とする─見直しの方向性を示し、早急な対応が必要と訴えた。

その他の課題として、令和4年度の診療報酬改定率換算で▲0.1%(医療費470億円程度)と見込んでいたリフィル処方箋の導入・活用促進による医療費効率化効果を試算し、年間▲50億円程度(改定率換算で▲0.01%程度)にとどまると問題視した。

このため、リフィル処方箋の普及促進に向けて周知・広報を図る対応と合わせ、積極的な取り組みを行う保険者を各種インセンティブ措置により評価していくべきと提言。

さらに、薬剤師がリフィル処方箋への切り替えを処方医に提案することを評価する仕組みや、OTC類似薬について、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認める仕組みの検討を求めた。

介護保険の利用者負担
2割拡大へ早急な結論

介護分野では、団塊世代が85歳以上となる10年後には介護費用が激増する一方、介護費用を支える保険料・公費負担の上昇、介護サービスを支える人材確保には限界があるとし、▽ICT機器の活用による人員配置の効率化▽協働化・大規模化による多様な人員配置▽給付の効率化(介護報酬改定、利用者負担、給付範囲の見直し)を3年に1度の制度見直しで毎回、着実に進めるべきとした。

このなかで、現行、所得上位20%とされている介護保険の利用者2割負担の拡大に対し、昨年10月から所得上位30%とされた後期高齢者医療制度における2割負担の導入を踏まえ、ただちに結論を出す必要があると提言。

さらに、利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことについても検討していくべきとの考えを示した。

少子化対策の安定財源
参加者全員が広く負担を

少子化分野では、少子化対策の財源について、全世代型社会保障制度構築の観点から、歳出改革の取り組みを継続しつつ、「骨太方針2022」に沿って、企業を含め社会・経済の参加者全員が公平な立場で広く負担する新たな枠組みを検討する必要があるとした。

社会保障分野の予算について、こども・子育て(8.9兆円、公費82%)は、医療(40.8兆円、公費43%)、介護(13.1兆円、公費55%)に比べ、公費財源の割合が高いと説明。

そのうえで、少子化対策の安定財源を確保する際は、▽企業を含め社会・経済の参加者全員が広く負担することで、子育て世帯が子育て期間全体として手取り増(給付増が負担増を上回る)となるようにする▽医療保険・介護保険制度を持続可能とする改革を継続することで、現役世代等の保険料負担の増加を極力抑制する取り組みを行う─ことが必要と提言した。

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