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健保ニュース 2022年12月上旬号

厚労省が5年度薬価改定の論点
対象範囲や算定ルールなど課題
中医協 両側の主張は平行線

厚生労働省は、11月16日の中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会に令和5年度薬価改定の論点を提示した。診療報酬改定がない年の薬価改定のあり方をはじめ、改定の対象範囲や既収載品目の算定ルール、調整幅のあり方など課題を整理。改定の対象範囲について、健保連の松本真人理事は3年度改定で基準とした平均乖離率の0.625倍がベースとなると指摘する一方、診療側の委員は3年度改定の対象範囲がそのまま5年度改定に踏襲されるものではないと強調し、支払側と診療側の主張は早くも平行線を辿った。

この日の中医協・薬価専門部会は、厚生労働省が令和5年度の毎年薬価改定に向けた論点を提示した。

4年度の薬価制度改革の骨子では、「診療報酬改定がない年の薬価改定のあり方は引き続き検討する」とされていた。

3年度薬価改定は、国民負担軽減の観点から、できる限り広くすることが適当である状況のもと、平均乖離率(8%)の0.625倍(5%)を超える、価格乖離の大きな品目を対象としたうえで、「新型コロナウイルス感染症特例」として薬価の削減幅を0.8%分緩和した。

厚労省は、「総論」として、診療報酬改定がある年と診療報酬改定のない年の薬価改定のあり方を論点として提示。

そのうえで、「各論」は、▽改定の対象範囲▽適用する既収載品目の算定ルール▽医薬品の安定供給確保への対応▽調整幅のあり方─などを論点とした。

3年度薬価改定では、全体の約7割の品目を対象としたが、後発医薬品は8割を超える品目が対象となり、影響額は後発品の市場規模の1割を占めた。

既収載品目の算定ルールは、3年度薬価改定では実勢価改定に連動して、その影響を補正するものが適用されており、「新薬創出等加算」は「累積額控除」は適用せず、「加算」のみ適用。

また、後発品収載後5~10年や10年超を経過した先発品を後発品の置き換え率に応じて引き下げる「長期収載品の薬価改定」も適用しなかった。

医薬品の安定供給確保に向けては、毎年薬価改定による製薬企業への影響や、最近の原材料等の高騰による影響が生じている状況を踏まえ、薬価の観点から対応すべきことや、既収載品目の算定ルールとの関係を課題に位置づけた。

調整幅については、現行の薬価制度全体の中で位置づけられているものであるとし、診療報酬改定がない5年度薬価改定におけるあり方を論点として整理。厚労省が提出した「医薬品のカテゴリー別の薬価差(乖離率)」では、新薬創出等加算品や特許品は値下げ幅が小さいのに対し、後発品は相対的に乖離が大きいことが明らかになった。

論点の「総論」について、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「診療報酬改定のない年に実施される薬価改定は平成28年12月の4大臣合意で、価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う方針が明示されている」と指摘し、2年に1度の通常改定と異なることを基本的な認識として議論していく必要があるとした。

有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、「令和5年度薬価改定は、医薬品の安定供給への支障も勘案し、慎重に実施すべき」と述べ、薬価の削減幅を緩和する特例措置も考慮する必要があると主張した。

健保連の松本真人理事は、「4大臣合意に代わる新たな政府方針が示されない限り、市場実勢価格を適宜、薬価に反映し、国民負担を抑制することを目的に対応すべき」と言及。コロナ特例のような抜本改革時に想定していない特殊事情がある場合でも、薬価制度として対応する合理性がなければ対応は難しいとの認識を示した。

「各論」の「改定の対象範囲」については、松本理事が、「まずは3年度薬価改定で基準とした平均乖離率の0.625倍がベースとなる」と述べ、「これを変えるなら相応の根拠が必要」と指摘。さらに、乖離額も考慮する対応を継続課題に据えた。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)も、「乖離率だけだとカテゴリー別で影響が大きくなる医薬品もあるので、乖離額も考慮に入れ慎重に判断すべき」と要請した。

他方、有澤委員は、「平均乖離率を超えた医薬品のみを対象とすべき」と主張したほか、「全品目を対象とした改定は実施すべきでない」と訴えた。

長島委員は、「3年度薬価改定の対象範囲がそのまま5年度薬価改定の対象範囲となるものではないことを確認すべき」と強調。為替変動や原材料価格の高騰、コロナ第8波といった足元の影響も踏まえながら検討する必要があるとした。

「適用する既収載品目の算定ルール」については、長島委員が、「中間年改定は通常改定とは異なる位置づけであることを踏まえれば、前回の中間年改定である3年度薬価改定あるいはその前の元年度消費増税改定と同様に、実勢価格改定に連動してその影響を補正するルールを適用することが基本的な方向性になる」と言及。

松本理事は、「実勢価格改定に連動する算定ルールに限って適用する考え方を引き続き採用した場合でも、新薬創出等加算の累積額控除と長期収載品の薬価改定を適用する妥当性は十分にある」との見解を示した。

「医薬品の安定供給確保への対応」については、長島委員が、「単に安定供給確保という理由だけで薬価を引き上げるのではなく、患者にとっても納得でき、企業の合理的な対応の有無を踏まえたうえで検討する必要がある」と述べた。

有澤委員は、不採算品の対応は算定ルールとは別に緊急的な対応として実施することが必要と主張。

松本理事は、「物価高騰を理由として一律に引き下げを緩和する対応は容認できない」と強調した。

「調整幅のあり方」については、松本理事が医薬品のカテゴリー別の薬価差(乖離率)を参考に、カテゴリー別の調整幅の適用を検討するよう要望。

長島委員は、「調整幅は現行の薬価制度全体の中で位置づけられていることを踏まえれば、中間年改定で変更することは適当でない」との考えを示した。

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