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健保ニュース 2022年6月下旬号

厚労省・江口保険課長インタビュー
マイナ保険証利用登録促進 健保組合に協力依頼
7月組合会を取り組みの契機に

厚生労働省保険局の江口満保険課長は6月13日付の事務連絡の発出に合わせ、本誌のインタビューに応じ、「骨太方針2022」に盛り込まれたオンライン資格確認の導入目標を達成するためのさらなる対策や促進に向けた課題などを語った。医療機関等のオンライン資格確認の導入と保険者のマイナンバーカードの保険証利用登録を同時並行的に進めていくべきとの考えを示し、健保組合には加入者に対する働きかけの協力を依頼。事務連絡の内容を7月の組合会で紹介し、保険証利用登録などに積極的に取り組む契機となることを期待した。(江口保険課長の発言要旨は次のとおり。)

「骨太方針2022」踏まえ
さらなる対策を事務連絡

オンライン資格確認については、令和5年3月までに概ねすべての医療機関、薬局で導入をめざすという目標を掲げて取り組んでいますが、直近で全体の2割弱の導入状況にとどまっています。

目標期限まで既に1年を切っているタイミングであることを踏まえると、取り組みの加速化が必要ということで、5月25日の社会保障審議会医療保険部会に、オンライン資格確認の導入目標を達成するためのさらなる対策を提案しました。

1点目は、5年4月から医療機関等におけるオンライン資格確認の導入を原則として義務化することです。

2点目は、医療機関等でのオンライン資格確認の導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する財政措置を見直すことです。

3点目は、6年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指し、医療機関等以外で保険証を利用している訪問看護、柔整あはき等でのオンライン資格確認の導入状況を踏まえ、最終的には保険証の原則廃止を目指すことです。

医療保険部会に提案後、政府・与党内で調整を進め、オンライン資格確認の導入目標を達成するためのさらなる対策が盛り込まれた「骨太方針2022」が6月7日に閣議決定されました。

こういう状況の変化を踏まえ、厚生労働省としても、保険局内の関係4課の連名で各保険者宛てに、6月13日付で事務連絡「オンライン資格確認の推進に向けたマイナンバーカードの取得、健康保険証利用申込および利用の促進について(協力依頼)」を発出しました。

事務連絡では、「骨太方針2022」で決定されたオンライン資格確認の導入目標を達成するためのさらなる対策を紹介するとともに、令和3年度補正予算による第2弾のマイナポイント事業について、6月30日から健康保険証の利用申込みに対するマイナポイントの付与が開始されることを周知しました。

マイナンバーカードを取得した後、保険証として利用申し込みした場合に7500円分のポイント、さらには公金受け取り口座の登録を行った場合にプラス7500円分のポイントが付与される事業が今回スタートしました。

そういった取り組みも合わせて紹介し、マイナンバーカードの取得、保険証利用登録の促進を厚労省から各保険者に改めて協力依頼させていただきました。

医療機関等の導入促進へ
保険者も同時並行で対応を

現状、医療機関等でのオンライン資格確認の導入がまだ2割弱という状況のなかで、導入が進まない理由はいろいろあると思いますが、医療機関等が二の足を踏んでいる理由の1つには、オンライン資格確認を導入しても実際にマイナンバーカードで受診する患者が少ないと思われていることもあげられています。

一方、今回、さらなる対策として、来年4月から医療機関等に対するオンライン資格確認の導入を原則義務化することなどを打ち出していますので、そういった取り組みを進めていくことで、医療機関等でのオンライン資格確認の導入が進み、マイナンバーカードで医療機関等を受診できる環境は当然、整っていくことになります。

ただ、実際に医療機関等の環境が整ったとしても、マイナンバーカードでの受診が進むためには、マイナンバーカードを取得し保険証利用登録をしてもらっていることが前提です。

現在は、医療機関等でのオンライン資格確認の導入が進んでいないことに関心が集まっていますが、医療機関等での環境が整えば、次は、各医療保険の加入者がマイナンバーカードを取得し保険証利用登録をしているかということに関心が移っていくと思います。

各保険者の利用登録の現状を見ると、加入者のうちマイナンバーカードの保険証利用登録をしている者の割合は全体で5.48%、健保組合は平均より少し高い6.07%という状況です。

医療機関等のオンライン資格確認の導入が進んでいない一方で、そもそも利用する側の各医療保険の加入者もマイナンバーカードの保険証利用登録が進んでいない状況にあります。

今回さらなる対策を打ち出して、今後取り組みを進めていくなか、医療機関等サイドでの取り組みと同時並行で、保険者サイドでの保険証利用登録の取り組みにも力を入れていく必要があると思っています。保険者サイドでの取り組みが進むことによって、医療機関等サイドの懸念も払拭でき、オンライン資格確認の導入がさらに進む相乗効果もあると考えています。

保険者にも大きなメリット
マイナ保険証の機運醸成を

もちろん、実際にマイナンバーカードで受診してもらうことを考えた時、保険証による受診にはないメリットがあるという点が重要です。

マイナンバーカードで受診した場合、本人同意により、過去の特定健診結果や今までに使った薬剤の情報が医師・薬剤師等と共有可能で、それを元により良い医療が受けられるメリットがあります。そういった点を保険者としても加入者にしっかり周知していただきたいと思います。

なお、セキュリティ面の問題はないのですが、マイナンバーカードを持ち歩くことに不安を感じられる方がいるのも事実です。この点については、現在、マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載が検討されており、この中には保険証利用も含まれていますので、これが実現すればマイナンバーカードを持参せずに受診が可能となりますので、不安は大きく払拭されると思います。

また、マイナンバーカードの保険証利用登録に関心を持ってもらうという意味では、マイナポイント事業の第2弾として、マイナンバーカードの保険証利用登録をすれば7500円分のポイントが付与されることも積極的にPRし、まずは保険証利用の登録につなげてほしいと考えています。

また、今回のさらなる対策では、保険証発行の選択制の導入、さらに保険証の原則廃止を目指すことも打ち出しています。マイナンバーカードでの受診が一般的になれば、最終的には保険者が保険証を交付しなくてもよくなる道筋を示しましたので、そういった意味では、加入者がより良い医療を受けられることと合わせ、保険者自身にとっても事務負担の削減という大きなメリットを受けられます。

そういった面からも、健保組合をはじめ保険者の皆さんには、マイナンバーカードの保険証利用登録に積極的に取り組んでいただきたいと思っています。

保険証発行の選択制の導入や保険証の原則廃止に向けては、加入者に不利益を与えないという視点が大事だと考えています。また、実務面での課題もあると思いますので、健保組合の現場の皆さんと意見交換しながら円滑に対応できるよう、今後議論していきたいと考えています。

マイナンバーカードの保険証利用登録、そしてマイナンバーカードでの医療機関等の受診を進めていくためには、加入者にとってのメリットを伝えながら地道に取り組んでいくことが必要なことはもちろんですが、これを大きく前進させるためには、もう一段の取り組みが必要ではないかと感じています。具体的には「機運の醸成」です。加入者、保険者の双方にとってメリットのある取り組みですので、健保組合全体で「医療機関等の受診はマイナンバーカードで」という機運の醸成、雰囲気づくりに是非、積極的に取り組んでいただきたいと思います。

厚労省としても、できることは最大限サポートしていくつもりですので、健保組合の皆さんには率先した取り組みを期待しています。

今回の事務連絡は、7月に開かれる組合会でその内容を紹介し、各健保組合が積極的に取り組む契機にしていただけるよう、それに間に合うタイミングで発出したという経緯もありますので、健保組合の皆さんのご協力をお願いします。

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