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健保ニュース 2021年11月下旬号

中医協が不妊治療の保険適用を議論
対象範囲 ガイドラインの推奨度で判断

中医協総会は17日、令和4年度の次期診療報酬改定に向けて、「不妊治療の保険適用」をテーマに議論した。

有効性・安全性の観点から、学会のガイドラインにおける推奨度を基準に、保険適用の対象とする医療技術などの範囲を判断していく方向性で一致した。

厚生労働省は、不妊治療の保険適用に向けて、①対象医療技術等の範囲②運用にかかる課題─を論点に位置づけた。

①は、診療全体における位置づけや現在の実施状況、ガイドラインにおける推奨度等のエビデンスを踏まえ、有効性・安全性等の観点から、不妊治療にかかる個々の医療技術、医薬品、医療機器等の評価のあり方を論点として提案。

②は、▽特定治療支援事業における取扱い等を踏まえた患者の定義や年齢・回数にかかる要件▽患者への情報提供内容も含め、不妊治療を実施する医療機関の施設基準のあり方▽関係学会で行われている議論の状況を踏まえた着床前診断の取扱い▽第三者の卵子または精子を用いた生殖補助医療等の取扱い─を論点として示した。

論点①について、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「基本的には学会のガイドラインの推奨度を参考に、有効性・安全性が高い技術や付随する医薬品、医療機器は保険適用するべき」と主張。

他方、有効性・安全性に関するデータが蓄積されていない技術等についても、診療実態と齟齬がないよう配慮しながら、先進医療の枠組みなどを活用しつつ、保険診療との併用が可能となるよう検討を進めていくべきとの考えを示した。

健保連の松本真人理事も、「安全性と有効性の観点からすると、保険適用の対象範囲はガイドラインの推奨度が基準になる」と言及。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、保険適用時に既に治療を行っている患者へ不利益を与えないような仕組みにする必要があるとした。

論点②については、城守委員が、「患者の定義や年齢、不妊治療を実施する医療機関の施設基準は、ガイドラインの内容や特定治療支援事業と齟齬のない形で導入することが重要である」と指摘。

一方、着床前診断や第三者の卵子や精子を用いた生殖補助医療は、「現在、様々な分野の専門家も含めた議論が行われている段階であり、国民の倫理観や家族観も関与する大きなテーマであることから、中医協で診療報酬上の取扱いを議論するのは時期尚早」と問題提起した。

松本真人理事は、不妊治療を実施する医療機関の施設基準について、「患者の安全や安心の観点から、可能な限りアウトカムを情報公開していくことが重要なポイントになる」との見解を示した。

着床前診断や第三者の卵子または精子を用いた生殖補助医療の取扱いは、学会の検討結果や規制のあり方のまとめを踏まえ、改めて検討すべきとした。

なお、この日の中医協総会は、不妊治療の保険適用や生殖医療ガイドラインの考え方について、▽日本生殖医学会▽日本産婦人科医会▽一般社団法人JISART▽NPO法人Fine─から意見聴取し、フリーディスカッションを行った。

リハビリテーションの評価
摂食嚥下支援加算など論点

また、この日の中医協総会では、「リハビリテーション」について議論し、厚生労働省から、①疾患別リハビリの適切な実施②摂食嚥下支援加算③慢性維持透析患者のリハビリ─にかかる論点が示された。

①は、▽標準的算定日数を超えたリハビリは、医師が改善の見込みがあると判断した場合、医療保険の対象として提供▽「リハビリ実施計画書」への患者や家族からの署名が困難─とされる疾患別リハビリにおける評価のあり方を論点とした。

②は、「摂食嚥下支援加算(週1回200点)」で満たすことが難しい施設基準は「摂食嚥下支援チームの設置」、チームの職種は看護師(経験5年以上かつ適切な研修修了者)が多く、届出施設が少ないなどの課題に対応するため、要件緩和を論点として提案。

③は、慢性維持透析患者が血液透析中に運動療法を実施・指導されている場合があることを踏まえた評価のあり方を論点とした。

論点①については、城守委員が、「リハビリ難民が生じないよう、標準的算定日数の制限があっても医学的なリハビリが必要と判断されれば継続可能とすべき」と主張した。

松本理事は、運用の適正化に向けて、医師の判断で標準的算定日数の上限から除外された患者のリハビリによる改善状態などのデータにもとづき除外要件のあり方について検討を進めるべきとの考えを示した。

他方、「リハビリ実施計画書」については、城守委員が簡素化を主張したほか、記載項目の多さが現場で負担になっている実態も検討課題に位置づけた。

佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)は、「メールでのやりとりを確認し、電子的記録で保存する方法も考えても良い」と問題提起。松本理事も、患者や家族の確認は必要と指摘し、メールやファックスなど様々なICTの手段を考慮する必要があるとした。

論点②については、松本理事が安易な要件緩和に明確に反対。質が低下しないようアウトカム評価を改めて設けるなどの形で、嚥下機能をしっかり評価することが不可欠と強調した。

城守委員は、アウトカム評価はクリームスキミング問題への配慮に加え、厳しい要件とした場合、摂食嚥下支援が進まなくなるといったことも踏まえた設定が必要との考えを示した。

論点③については、松本理事が運動療法の実施のみでの評価に反対する一方、城守委員は、適切な評価を求めた。

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