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健保ニュース 2021年11月中旬号

健保連が調査研究報告書
高齢者医療の税財源など考察
適格性は世代間公平など消費税

健保連はこのほど、公的医療保険の持続可能性に対応した公費のあり方に関する調査研究報告書をまとめた。後期高齢者医療制度を存続させていくための財源については、「今後も公費投入は避けられず、増税せざるを得ない」と増税の必要性と合わせて、世代間の公平性などの面で消費税を最も優位性のある税財源に位置づけた。

報告書は、健保組合関係者と学識者で構成する委員会の検討結果をまとめたもので、高齢化に伴う医療費の増加傾向とこれを支える医療保険財政が厳しい状況にあるとの認識のもと、公費をはじめ高齢者医療制度の財源の適格性や望ましい税財源を考察し、今後の政策議論の基礎資料とする。

現行の保険者間・制度間における費用負担調整は、保険料と公費の役割が不明確なまま保険機能と所得再分配機能が混在していることを問題点にあげ、保険料が保険機能、公費が所得再分配機能と両者の役割を明確に分ける必要性に言及した。

こうした観点から、健保組合の保険料収入の約半分を前期高齢者納付金や後期高齢者支援金といった形で別制度に拠出している実態について、保険料が現役世代から高齢者世代への一方的な財政移転の原資となっているが、独立した後期高齢者医療制度と現役世代との間に同一集団に属する連帯的要素はないと指摘し、「保険料で財政支援を行うことは適切でない」とした。

現行制度のままでは世代間の不公平が増して、制度に対する現役世代からの支持が得られなくなる可能性が高いとみて、「少なくとも、保険集団内の保険給付費より保険外集団である高齢者医療への拠出金が多くなることのないよう、制度的な歯止めをかける必要がある」と改善の方向性を提起した。

高齢者の負担判定の基礎とする年金収入の捉え方では、遺族年金の非課税や年金所得控除などの適用により、現役世代と同じ収入であっても課税所得が異なるなど、こうした年金税制上の優遇措置によるゆがみが自己負担割合など各種判定に反映されていると問題視。「負担の公平化を図る観点から、年金税制のゆがみや医療保険における年収の基準を早急に見直すことが強く求められる」と訴えた。

自己負担のあり方は、年齢に応じて変える現行の仕組みに対し保険としての合理性が見いだせず、世代間の不公平さを生む原因となっていると捉え、給付率の格差を改め、原則一律3割の適用を主張した。

自己負担引き上げなど給付と負担の見直しを行いつつ、後期高齢者医療制度の存続性を確保するためには、今後の人口バラスを考慮すると、「現役世代からの〝支援〟には限界がある」と指摘し、増税の必要性を強調した。そのうえで、税財源の適格性では、消費税の特色として、経済活動に中立的な点など経済への影響がない点や、全国民が消費水準に応じて負担するなど世代間の公平性などを挙げ、所得税、目的税(一般社会税)と比較考量し、「多くの面で消費税の優位性を指摘できる」と結論づけた。

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