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健保ニュース 2020年12月中旬号

厚労省が3年度薬価改定の試算提示
乖離率の1倍超で全品目の半数対象
支払側と診療側の意見は平行線

厚生労働省は、令和3年度の毎年薬価改定における対象品目の範囲や医療費への影響などを試算し、9日に開催した中医協の薬価専門部会に提示した。

2年度薬価調査の平均乖離率8.0%の「1倍超の場合」、3年度薬価改定の対象品目は全品目の半数にとどまり、そのうちの8割近くを後発医薬品が占める結果が明らかになった。また、医療費への影響額は、「全品目を対象とした場合」は▲4700億円、「1割超の場合」は▲3600億円と試算した。

この結果を受け、支払側は、「後発品を狙い撃ちするような、いびつな改定が中間年改定のあるべき姿として妥当なのか」と問題提起し、「新薬、長期収載品、後発品の偏りなく、広範囲で対象品目を選定すべき」と改めて主張した。

一方、診療側は、「医療費への影響に十分配慮したうえで、乖離率の大きな品目に注目した改定を行うべき」との認識を示し、極めて限定的な内容の中間年改定とするよう要望した。

政府の3年度予算編成が目前に差し迫るなか、支払側と診療側の意見は一致せず、議論は依然として平行線を辿った。次回は関係業界からの意見聴取を行う。

この日の会合では、厚労省から、2年度薬価調査の結果を踏まえた対象品目の範囲や医療費への影響、改定対象範囲ごとの品目数にかかる試算が示された。

平均乖離率(約8.0%)に着目して試算した結果、①1倍超で8700品目(全品目の約5割)②1.2倍以上で7100品目(同4割)③1.5倍以上で5300品目(同3割)④2倍以上で3200品目(同2割)─となり、対象品目は最大でも全品目の半数にとどまった。

このうち、カテゴリー別の品目数は、①新薬476品目、長期収載品1100品目、後発品6600品目②同196品目、同800品目、同5800品目③同39品目、同390品目、同4700品目④同2品目、同55品目、同3000品目─となる。

対象品目に占める割合は、①新薬5.5%、長期収載品12.6%、後発品75.9%②同2.8%、同11.3%、同81.7%③同0.7%、同7.4%、同88.7%④同0.1%、同1.7%、同93.8%─で、平均乖離率が大きくなるほど後発品の割合は高くなる一方、新薬と長期収載品の割合は低くなる。

また、全品目(1万7600品目)に占める割合をみると、対象品目の範囲が最大の①でも、新薬2.7%、長期収載品6.3%、後発品37.5%となり、後発品の割合が圧倒的に多い。新薬創出等加算の対象品目は、①が32品目、②は7品目で、③と④は対象品目すらなかった。

一方、医療費への影響額は、①▲3600億円、②▲3000億円、③▲2100億円、④▲1200億円となり、医薬品卸、医療機関、薬局、製薬企業のいずれかに影響が帰着するとした。

医療費への影響額は、平成30年度の消費増税に伴う臨時薬価改定で適用した算定ルールから試算。新薬創出等加算の加算や基礎的医薬品の薬価維持などを適用する一方、新薬創出等加算の累積額控除や長期収載品の引下げなどは適用していない。

前回の会合で支払側が要望した価格帯別に見た場合の乖離率と乖離額の分布や、新薬創出等加算の累積額控除を実施する場合の対象品目と控除額にかかるデータは提示されなかった。

健保連の幸野庄司理事は、「対象品目の範囲を最大でも平均乖離率の1倍超にとどめ、後発品を狙い撃ちするいびつな改定が、中間年改定のあるべき姿として本当に妥当なのか」と問題提起。

そのうえで、「新薬、長期収載品、後発品が偏りなく広範囲で対象となることがポイントとなる」と強調し、後発品に偏った試算結果を元に中間年改定を行った場合、「話にならない改定になる」と断じた。

支払側が要望した一部のデータが示されず、年末の令和3年度予算編成という時間的制約もあるなかで、今回の試算結果から3年度の中間年改定が本来あるべき姿とかけ離れたルールでまとめられようとしていることは、「非常に遺憾な感じを受ける」と言及し、中医協の議論のあり方自体を疑問視した。

診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、3年度の中間年改定は、「個々の医薬品の価値に着目したうえで、市場実勢価格との乖離を是正することが最大の目的である」との認識を示し、「医療費への影響に十分配慮したうえで、乖離率の大きな品目に着目した中間年改定を行うべき」と主張した。

診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、2年度薬価調査の平均乖離率8.0%は、同じく中間年に該当した平成30年度の平均乖離率(7.2%)に比べると、「異常な数値と言わざるを得ない」と指摘。

さらに、調剤報酬の約8割を薬剤費が占めるなかで薬価改定を行った場合、「薬局の経営に大きな影響を与えることとなる」と見通し、「極めて限定的な内容の中間年改定にとどめるべき」と訴えた。

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