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健保ニュース 2020年11月中旬号

自民党・皆保険を守る議員連盟が会合
佐野副会長 財政支援と現役世代の負担軽減求める
健保連の主張に理解を示す意見相次ぐ

自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(鴨下一郎会長)は5日、衆議院第一議員会館で会合を開き、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている健保組合の状況について聴取した。会合には議員79名、代理を含めて163名が出席した。説明に立った健保連の佐野雅宏副会長は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて健保組合財政は悪化し、来年度には実質保険料率が10.2%に達し、協会けんぽの10%を超える恐れがあると指摘。さらに後期高齢者医療費の増大に合わせて現役世代の拠出金負担が急増し、健保組合財政が急激に悪化する「2022年危機」が、1年前倒しで訪れかねないとの危機感をあらわにした。そのうえで佐野副会長は、宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業など給与や賞与が落ち込んでいる特定の業種の健保組合と、中小企業を中心とする総合健保組合への支援を求めるとともに、保険料の納付猶予で事業運営に支障をきたしている健保組合への支援を要望した。さらに全世代型社会保障改革については、後期高齢者の窓口負担の見直しや、後期高齢者医療の現役並み所得者の判断基準の見直しによる現役世代の負担軽減の実現に向け、協力を要請。出席した議員からは、健保連の主張に理解を示す意見が相次いだ。

開会のあいさつで鴨下会長は、今後、予算や税制改革など年末に向けて議論が集約していくなか、健保連からの要望をもとに、議連として提言をまとめ、政府に要望していくとの意向を示した。さらに新型コロナ禍での医療現場や中小規模の事業者は大変な苦労をしていると指摘したうえで、経済活動を継続しながら、現役世代の可処分所得をできるだけ確保し、現役世代をサポートするという観点から、後期高齢者の窓口負担のあり方など政治的に非常に厳しい決断を迫られる問題について意見集約したいと述べ、協力を求めた。

引き続いて説明に立った佐野副会長は、はじめに健保組合の強みとして、顔の見える距離の近さを生かし、母体・加入企業と連携しコラボヘルスなどを通じ、加入者へきめ細かな保健事業を実施することで、特定健診実施率や加入者1人当たり医療費、ジェネリック医薬品の使用割合など他の医療保険者に比べて効果をあげていると、その長所をアピールした。

一方で、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、健保組合を取り巻く環境は悪化しており、来年度には実質保険料率が10.2%に達し、協会けんぽの10%を超える恐れが出てきたと危機感を表明。健保連の新型コロナウイルス感染拡大による健保組合の財政影響調査の結果をもとに、今年度当初予算に比べ、全業種平均で標準報酬月額が▲1.6%、賞与が▲15.0%落ち込んでいると説明した。

さらに団塊の世代が後期高齢者になり始める令和4年は、後期高齢者医療費の増大に合わせて現役世代の拠出金負担が急増し、健保組合財政が急激に悪化する「2022年危機」と捉えているが、この危機が1年前倒しで訪れかねないとの認識を明らかにした。

今後3年間の健保組合財政の収支見通しでも、医療費は以前の水準に回復するものの、給与・賞与の回復には時間がかかるため、令和2年度の経常収支額▲2400億円から、3年度は▲6700億円、4年度は▲9400億円と赤字額が拡大するとの試算結果を説明するとともに、こうした財政悪化が保険料率の引き上げにつながり、ひいては健保組合の解散を引き起こすのではないかとの懸念を示した。

そのうえで、佐野副会長は出席した議員に対し、財政支援に関する重点要望として、①令和2年度予算の予備費等を活用した「新型コロナ感染症拡大による財政影響が著しい健保組合に対する緊急支援」と「コロナ禍における国の緊急施策に対応した保険者への財政支援」、②令和3年度予算における「新型コロナ感染症拡大の影響により財政がひっ迫した組合の拠出金負担軽減(被用者保険の拠出金に対する支援の大幅な増額)」と「コロナ禍でも保険者業務を継続できるデジタル化の推進」を要請した。

このなかで佐野副会長は宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業など給与や賞与が落ち込んでいる特定の業種の健保組合と、中小企業を中心とする総合健保組合への支援を求めるとともに、保険料の納付猶予で事業運営に支障きたした健保組合への支援を合わせて要請した。

また、全世代型社会保障検討会議の最終報告の取りまとめの議論が年末に向けて加速するなかで、医療保険制度改革については、①後期高齢者の自己負担の見直しは、団塊の世代が後期高齢者に移行する令和4年度までに、低所得者を除いた上で、高額療養費の一般区分該当者すべてに2割負担を導入②現役並み所得者の判断基準の見直しは、現役並み所得者の給付費に公費を投入するとともに、対象者を拡大する場合には、現役世代の負担が増えないようにすべき─などを重点要望として、実現を求めた。

佐野副会長は後期高齢者の自己負担の見直しについて、1割から2割に引き上げても高額療養費制度があるので、負担は必ずしも2倍になるわけではないと述べ、理解を求めた。さらに後期高齢者医療の現役並み所得者の判断基準の見直しについては、現行制度のまま、対象範囲を拡大すると現役世代の負担はさらに増えるという歪な仕組みとなっているため、この是正の実現を求めた。

このあとの質疑応答では、出席した議員から、後期高齢者の自己負担の見直しについて、「医療保険制度の部分的な見直しでは持たないということが見え始めている。大事なことは医療保険制度の持続可能性を高め、守ることが国民にとってメリットがあることをわれわれが訴えることだ。この制度を次世代に引き継いでいくため、政治家として苦しいが、理解を求めなければいけない」という意見があがったほか、健保組合の高齢者医療に対する拠出については「保険料率が上がって維持できずに健保組合を解散し協会けんぽに移行していくという悪循環が続いている。この悪循環をそろそろ断ち切らなくてはいけない。保険料の納付猶予だけでは耐えられない。健保組合の高齢者医療に対する納付金の負担割合を軽減するようなことも合わせて、全体的に考えなくてはいけない時期だ」といった意見があり、健保連の主張に理解を示す発言が相次いだ。

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