HOME > けんぽれんの刊行物 > 健保ニュース > 健保ニュース 2020年9月上旬号

健保ニュース

健保ニュース 2020年9月上旬号

直面する課題解決し持続可能性を追求
自民党・皆保険を守る議員連盟が発足
健保組合、現役世代の意見聞き検討

自民党の有志議員による「国民皆保険を守る国会議員連盟」は8月27日、党本部で設立総会を開いた。会長には党社会保障制度調査会会長の鴨下一郎氏(衆院)が就任した。同議連は、健保組合と加入者である現役世代の意見を踏まえて、必要な対策を検討することを目的とする。設立趣意書では、全世代型社会保障改革における給付と負担の見直しの必要性に触れ、「支える側の現役世代の負担に配慮した高齢者医療費の負担構造改革が急務である」との認識を示した。設立総会には議員約120名、代理を含めて合計約220名が出席した。鴨下氏は、設立総会の冒頭、同議連の呼びかけ人を代表してあいさつし、皆保険を守るため、健保組合をしっかりと支えて、現役世代を応援すると強調した。健保連本部・都道府県連合会などの役職員も出席し、佐野雅宏副会長が代表してあいさつ。健保組合の現状や保険者としての役割などを説明するなかで、同議連の発足に謝意を示し、現役世代への支援を要請した。

趣意書に「負担構造改革が急務」

設立総会の会場には健保連本部・都道府県連合会、全国総合健保組合協議会、東京都総合健保組合協議会など健保組合関係者が多数出席した。

自民党が、健保組合と支え手である現役世代への支援に着眼した議員連盟を発足させたのは、初めてとなる。

同日の設立総会は、同議連の呼びかけ人である、党年金委員会事務局長の村井英樹氏(衆院)が進行し、鴨下氏の呼びかけ人代表あいさつに続き、社会保障に精通する党総務会長の鈴木俊一氏(衆院)、党社会保障制度調査会最高顧問の野田毅氏(衆院)があいさつした。その後、議事に入り、鴨下氏を会長に選出するとともに、その他の役員人事を会長一任とした。また、同議連の設立趣意書、規約を了承した。

鴨下氏は、呼びかけ人代表のあいさつで、数年前から実施してきた自民党議員と健保連との勉強会を通じて、国民皆保険を守ることが重要な政治的テーマであることを参加者が自覚し始めて、同議員連盟の発足につながった経緯を説明した。

皆保険を取り巻く現況については、新型コロナウイルス感染拡大に伴う不況業種の出現などもあって、「健保組合が今までのような順調な状況でなくなってきた」との認識を示し、こうしたなかで、皆保険を必ず守ることを掲げる今回の議員連盟の設立は「極めて重要だと確信している」と指摘。今後、皆保険に綻びが生じることのないよう健保組合をしっかりと支えて、これにより現役世代を応援する必要性に言及した。

鈴木氏は、日本で新型コロナウイルス感染症の重症化率や死亡率が諸外国に比べて低い要因のひとつに、皆保険制度があるとの認識を示した。

一方、新型コロナウイルスの影響で報酬が減少し、健保組合の財政悪化が深刻化することを危惧した。現役世代の高齢者への支援が限界に来ているなど根源的な議論が同議連で展開されることを期待し、「健保組合を支えることが、国民皆保険を支えることにつながる。そういう意味で大変意義のある議連だと思っている」と述べた。

野田氏は、健保組合が存続できなくなっている現実があると指摘し、このままでは、「皆保険の根幹が崩れてしまう」と強い危機感を示した。健保組合に課している現行の過度な負担を問題視し、安定財源を確保しながら皆保険を維持することを最重要課題にあげた。

設立趣意書では、少子高齢化の進行に伴い皆保険制度を財政的に維持することが難しい状況にあるとして、この難局を乗り越えるためには、全世代で公平に費用を負担する仕組みの構築が必要であり、「高齢者医療費の負担構造改革が急務である」ことを明示した。

同議連の目的については、規約に定められ、「健康保険組合とそこに所属する現役世代の意見を聞きつつ、国民皆保険を守るために必要な対応を検討する」としている。

設立総会の終了後、呼びかけ人である、党社会保障制度調査会副会長の丸川珠代氏(参院)は、記者団に対し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済へのダメージなどを受け、「解散の危機を迎えるかもしれない健保組合がある」と懸念し、「保健事業を優秀に実施している健保組合が踏みとどまるために、どのような支援ができるのかという課題から取り組んでいきたい。現役世代への支援を健保組合への支援を通じて行っていくことが大きなテーマなので、そういう方向で議論したい」と述べた。

村井氏は、「健保組合の声を聞いて、支援を深めることが国民皆保険を守ることにつながる」と強調し、今後、同議連として「必要に応じて提言をまとめていく」との考えを示した。

佐野副会長が設立総会であいさつ
健保組合の厳しい局面打開
保険者機能の発揮に尽力

同議連の設立総会では、会長選出、設立趣意書などの了承後、健保連の佐野副会長があいさつした。

佐野副会長は、少子高齢化の進展により健保組合を取り巻く環境は厳しさを増しており、さらに新型コロナウイルス感染拡大に伴い一層厳しい状況になると予測した。こうした状況下で同議連が設立されたことに謝意を示した。

健保連の基本的な考え方については、▽国民皆保険を守ること▽その支え手である現役世代を守ること▽これに向けて、われわれ自身の保険者機能を高めること─との方針を示した。皆保険を守るためには、国、国民、保険者、医療提供者の各主体が自らの役割を果たす必要性を指摘し、保険者の役割については、保険給付、適切な受診の働きかけ、データヘルスや健診等の保健事業の推進を重視した。

皆保険を取り巻く状況は、団塊の世代が75歳に到達する2022年から後期高齢者が急増する一方、支え手である現役世代の減少が続く「2022年危機」を迎え厳しい局面になると訴えた。さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気低迷を受けて、保険料収入の元となる報酬の減少が見込まれると指摘した。

新型コロナウイルスによる健保組合への財政影響については、健保連が実施した緊急調査で、令和2年度の保険料収入が当初見込みよりも全体で約5%、4000億円減少する見込みで、業種・業態の格差が極めて大きいとした。支出の保険給付も受診控えなどの影響で減少しているとしたが、収入については、リーマンショック時の例を引き合いに、報酬低下の影響が長期化する傾向を踏まえ、来年度以降も厳しい状況を予測した。

佐野副会長は、こうした状況にあっても「保険者としての役割をより高めていく必要がある」との考えを強調した。

特に保健事業の重要性について、▽生活習慣病などの早期発見の観点から、健診受診は大切で、健保組合は保険者全体のなかで特定健診実施率が高い▽保健指導の面でも健保組合は加入者に近い存在としての強みを生かし、企業と連携して加入者の健康意識を高めている─などを指摘し、「糖尿病などのハイリスク要因を減らしていく取り組みは重要と考えている」と述べた。

締めくくりとして、「大切な国民皆保険を守りたいと強く願っている。そのため将来にわたって国民皆保険を支え続けたい、この一心である」と表明し、国民皆保険と皆保険を支える現役世代を守るためのさらなる支援を要請した。

佐野副会長のあいさつに続いて、同議連の設立総会に出席した厚生労働省の濵谷浩樹保険局長が健保組合の現状を中心に国民皆保険の現状と課題について説明した。

けんぽれんの刊行物
KENPOREN Publication

2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年