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健保ニュース 2020年2月中旬号

中医協の支払側が会見
幸野理事「前回の修正にとどまった」

中医協の支払側委員は7日、答申後に記者会見を開いた。
 健保連の幸野庄司理事は、全体的な印象として「医療提供側にとっては医師の働き方改革という大きな成果があったと思うが、支払側の視点でみると、今後の医療保険制度改革にあまり大きな道筋を付けるテーマはなかった」とし、平成30年度改定で実施した入院基本料の再編・統合や薬価制度抜本改革などの「修正にとどまった感がある」との認識を示した。

ただ、急性期一般入院料のうち最高報酬区分の重篤患者割合に関する基準値を現行の30%から31%へ見直すことについて、「一見するとわずか1%の引き上げに見えるが、項目の見直しを同時に行って、下振れする方向になるので、実質的に4%程度の引き上げになる。一定の病床転換が図られることに期待したい」と指摘した。

医療従事者の働き方改革をめぐっては、患者の負担増を伴わない環境整備を優先するべきと支払側が主張するなかで、政府が特例的な改定枠を決定した経緯を振り返り、「最初に財源ありきという感は否定できない」とした。そのうえで、特例枠で新設する地域医療体制確保加算について、「真に緊急性が高く、救急医療など厳しい環境にある勤務医の負担軽減や、患者の医療安全に資するところを対象としてほしい。対象となる医療機関はしっかりとした目標を設定し、その進捗とアウトカムを厚労省がしっかり確認していくことを求めたい」と主張した。

健保連が提言した花粉症治療薬の取り扱いなど、保険給付のあり方に関する議論が深まらなかったことは、「非常に残念」とした。団塊の世代が後期高齢者入りする2年後を見据え、政府の全世代型社会保障検討会議が中間報告で示した後期高齢者の窓口負担の見直しなどに加え、給付の議論も「中医協をはじめ関係審議会で今すぐにでも始めなければならない」と強調した。

さらに、今回改定でギャンブル依存症治療を保険適用するほか、ニコチン依存症管理料の対象範囲を拡大することに触れ、「こういったものを保険適用するのであれば、OTC類似薬の保険適用のあり方についても同時に議論すべき。中医協にできることも沢山ある。附帯意見にさえ入れられなかったことは非常に残念」と述べた。

厚生労働省が「使用ガイド付きの医薬品集」との名称で今回改定の論点に位置づけた〝フォーミュラリ〟に関しても、「残念ながら今回改定で診療報酬上の対応がされなかった」とし、厚労省に対して「一旦提案した限りはやり抜いてほしかった」と話した。

機能強化加算の要件見直しについては、「支払側が大きくこだわったところ。とてもこれでかかりつけ医が普及するとは思えず、当初は疾病を限定するか、廃止しても良いと思っていた」と説明した。患者向け文書の作成が要件に加わることを踏まえ、「文書として持ち帰れるという患者への説明責任が義務づけられたことは半歩前進」とした。今後の運用を注視していく考えも示し、「保険者も(かかりつけ医機能の)周知を図るが、各医療機関が独自の考え方でそれぞれの特徴を生かしたかかりつけ医機能をわかりやすく、自分の言葉で丁寧に患者に説明する文書の作成は最低限必要。医療機関の取り組みに期待している」と述べた。

かかりつけ医の普及へ
現場の取り組みに期待

吉森俊和委員(全国健康保険協会)は、「かかりつけ医機能は非常に大事なキーワード」とし、「地域で最初の入り口となるかかりつけ医のあり方、それに対して診療報酬で何ができるのかをしっかり議論する必要がある」と指摘した。かかりつけ医機能に関し、「文書での説明や患者の理解という課題が出てきたが、そもそものところを整理すべきと個人的には思っている。ここをしっかりやって、地域に寄り添った医療提供体制をしっかり構築していく必要がある」と指摘した。

宮近清文委員(経団連)は、急性期一般入院料の見直しを受け、「適切な機能分化が進むことを期待したい」とした。外来では、オンライン診療の要件緩和や対象疾患の拡大に注目し、「少しずつではあるが前進してきている」と評価した。機能強化加算に関しては、「課題は残るものの、かかりつけ医機能について突っ込んだ議論をしたこと自体が有意義だったと思うし、その結果が院内掲示の見直しや書面交付などにつながった。今後、患者が自らのかかりつけ医を選択して適正な受療行動につながる端緒となり、半歩前進が一歩前進になることを期待したい」と述べた。

佐保昌一委員(連合)は、「医療従事者の負担軽減・働き方改革の推進や診療明細書の完全無料発行の実現に向けて一定程度の前進があったことは評価できる」としたうで、明細書については一部例外があるため、「患者の知る権利を担保するために、すべての医療機関で無料で発行すべき」と述べた。

間宮清委員(患者代表)はオンライン診療の推進に向け、「困難を感じている患者の負担を軽減したり、診療の機会が増えることが期待される。医療機関において環境が整うようにしてもらいたい」と指摘したほか、明細書の発行について、2年間の経過措置中に診療所で確実にシステム改修を終えることや、患者から求めがなくても完全無料発行とすべきとした。

染谷絹代委員(静岡県島田市長)は、「機能分化や地域医療のあり方を考えるなかで、医師や地域と支払側であるわれわれがエビデンスを共有し、医療費を削減できる運び方をしていかないといけない」と述べた。

松浦満晴委員(全日本海員組合)は、かかりつけ医の普及について「患者や国民が十分に理解することがすべて。文書も分かりやすくしていかなければならない」と強調した。

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