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健保ニュース 2019年11月下旬号

第22回医療経済実態調査報告
診療所と薬局は黒字を維持
病院は赤字も収支改善

中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)は13日、次期診療報酬改定の基礎資料となる第22回医療経済実態調査の報告書をまとめた。医療機関や薬局の経営状況について、平成30年度改定の前後で収益に対する損益差額の割合を表す「損益率」をみると、一般診療所は12.9%で前年度から0.1ポイント減ったが二桁の黒字を確保した。薬局は5.5%で前年度から1.4ポイント減となっており、30年度改定で適正化された門前薬局や法人のチェーン薬局などで減収が目立ったものの、黒字を維持した。一般病院は▲2.7%と赤字だったものの、前年度から0.3ポイント改善した。

調査は、全国から層化無作為抽出した施設を対象として29、30年度の診療収益、介護収益、給与費、医薬品費、減価償却費などを把握した。

一般病院の30年度平均収支を介護収益の少ない施設に限った集計値でみると、医業収益が前年度比1.9%増の36億1478万円、介護収益が同16.3%増の496万円、医業と介護を合わせた費用が同1.5%増の37億1612万円となり、差し引き9637万円の赤字となった。

損益率は同0.3ポイント増の▲2.7%だった。支出面では医業・介護費用の55%を占める給与費が増えた。

医療法人は約3%黒字

設置主体別の損益率をみると、医療法人は同0.2ポイント増の2.8%の黒字となっている。一方、国立は同0.2ポイント減の▲2.3%、公立は同0.2ポイント減の▲13.2%と、ともに前年度を下回った。支出面で給与や医薬品費などが大きく伸びた。日赤や済生会などの公的病院は同1.1ポイント増の▲0.3%の赤字となった。国公立を除いた一般病院の損益率は0.9%となっている。

一般病院に常勤する職員の賞与を含めた1人当たり年間給与額は、院長2675万円(前年度比0.1%減)、医師1491万円(同0.0%増)、歯科医師1210万円(同0.5%増)、薬剤師559万円(同0.3%増)、看護職員507万円(同0.4%増)、看護補助職員302万円(同1.6%増)、医療技術員465万円(同0.1%増)だった。

精神科病院の平均収支は、医業収益が同0.8%減の14億605万円、介護収益が同86.1%減の17万円だったのに対し、医療・介護費用が同0.8%増の14億305万円で、損益差額が317万円の黒字となっている。損益率は同0.2ポイント減の0.2%だった。

機能別に損益率をみると、特定機能病院が同0.3ポイント減の▲6.0%、DPC病院が同0.4ポイント増の▲2.8%、こども病院が同1.0ポイント増の▲11.6%だった。

病院の損益率を30年度改定で看護配置に応じた基本的な評価と診療実績に応じた段階的な評価を組み合わせた評価体系に再編した一般病棟入院基本料別にみると、最も評価が高く患者7人ごとに1人の看護配置を要件とする「急性期一般入院料1」の算定施設は前年度比0.5ポイント増の▲2.3%、旧7対1病棟と旧10対1病棟の中間的評価として新設した「急性期一般入院料2~3」の算定施設は同0.2ポイント増の▲4.5%、旧10対1病棟で「急性期一般入院料4~7」を算定した施設は同ヨコバイの▲4.3%だった。

地域一般入院料1~2(旧13対1病棟)」の算定施設は同0.1ポイント増の▲3.7%、「地域一般入院料3(旧15対1病棟)」の算定施設は同0.3ポイント増の▲7.6%だった。全体的に収支が改善し、とくに急性期一般入院料1で目立った。

療養病棟入院基本料別の損益率は、「基本料1」の算定施設が同0.2ポイント増の1.5%と黒字で、「基本料2」が同0.1ポイント増の▲5.0%と赤字だった。

ケアミックスは堅調

一般病院について療養病床の保有状況による収支の違いをみると、療養病床が60%以上を占める施設の損益率は前年度から0.1ポイント減少したが4.5%と引き続き黒字を維持した。このうち医療法人は、同0.3ポイント増の5.2%でとくに高かった。

一般病院の病床規模別損益率は「20~49床」が同0.4ポイント増の▲4.2%、「50~99床」が同0.2ポイント増の▲3.5%、「100~199床」が同0.4ポイント増の▲1.3%、「200~299床」が同0.3ポイント増の▲3.7%、「300~499床」が同0.6ポイント増の▲2.0%、「500床以上」が同0.1ポイント増の▲3.9%と、いずれも収支が改善した。

一般診療所の30年度平均収支は、医業収益が前年度比0.2%増の1億3671円、介護収益が同1.9%増の200万円に対し、医業・介護費用が同0.4%増の1億2086万円と伸びたが、差し引き1785万円の黒字で、損益率が同0.1ポイント減の12.9%と概ねヨコバイで推移した。

開設主体別に損益率をみると、個人診療所は同0.1ポイント減の31.8%、医療法人は同0.1ポイント減の6.0%と概ね同水準で推移し、黒字を確保した。

入院収益のない診療所は平均1744億円の黒字で、損益率が同ヨコバイの13.5%だった。個人では損益率が32.0%にのぼる。入院収益のある診療所は平均2413万円の黒字となり、損益率が1.9ポイント減の8.3%で、入院収益のない診療所と同様に個人の損益率が29.9%と高かった。

主たる診療科別の損益率は、内科が同0.5ポイント増の12.0%、小児科が同0.4ポイント減の15.4%、精神科が同1.4ポイント減の18.1%、外科が同0.6ポイント減の9.8%、整形外科が同0.6ポイント減の8.6%、産婦人科が同1.6ポイント減の11.9%、眼科が同0.1ポイント増の17.3%、耳鼻咽喉科が同ヨコバイの15.9%、皮膚科が同0.4ポイント増の22.9%とすべて黒字で、内科、眼科、皮膚科が増益となった。

医科診療所の常勤職員1人当たり年間給与額は、院長2763万円(前年度比0.6%減)、医師1063万円(同4.3%減)、歯科医師573万円(同2.2%増)薬剤師930万円(同4.6%増)、看護職員386万円(同1.2%増)、医療技術員434万円(同1.3%増)で、薬剤師が大幅に上昇した。

歯科診療所の30年度平均収支は、医業収益が前年度比1.2%増の5403万円、介護収益が同5.7%増の80万円に対し、医業・介護費用が同1.0%増の4360万円となり、差し引き1123万円の黒字で、損益率が同0.3ポイント増の20.5%と伸びた。とくに個人診療所の損益率は同0.5ポイント増の28.5%と高かった。医療法人の損益率は同0.2ポイント増の9.1%だった。

歯科診療所の常勤職員1人当たり年間給与額は、院長1413万円(前年度比1.0%増)歯科医師618万円(同0.6%減)、歯科衛生士293万円(同2.4%増)、歯科技工士398万円(同2.3%増)だった。

薬局の30年度平均収支は、収益が前年度比1.2%減の1億890万円、介護収益が同18.5%増の54万円で、費用が同0.3%増の1億7908万円となり、損益差額が縮小したが、1043万円の黒字を維持した。損益率は5.5%で前年度から1.4ポイント減少した。

個人薬局は費用が減ったが、それを上回る減収となったため、損益率が同0.9ポイント減の9.8%に悪化した。法人薬局は費用が増えた一方、収益が減ったことで、損益率が同1.4ポイント減の5.4%に落ち込んだ。

法人についてチェーン店舗数別に損益率をみると、1店舗が同0.7ポイント減の1.2%、2~5店舗が同1.9ポイント減の2.0%、6~19店舗が同1.1ポイント減の7.2%、20店舗以上が同1.3ポイント減の7.6%といずれも前年度を下回ったが、大規模チェーンほど業績が良かった。

立地の違いで損益率を比較した場合、「診療所前」は6.0%、「中小病院前」は3.5%、「大病院前」は2.5%、「病院敷地内」は3.7%、「診療所敷地内」は11.5%、「医療モール内」は5.6%、「それ以外」は7.4%で、診療所の敷地内にある薬局が目立って高い。収益でみると、診療所前、中小病院前、大病院前といった門前薬局と、医療モールが減収だった一方、敷地内は増収となった。

特定の医療機関と不動産の賃貸借関係に「ある」薬局は増収で損益率が前年度比0.1ポイント減の13.7%、「ない」薬局は減収で損益率が同1.5ポイント減の5.0%だった。

薬局の常勤職員1人当たり年間給与額は、管理薬剤師は前年度比0.1%減の752万円だった。薬剤師は同0.5%減の474万円で、個人の薬剤師の給与が同5.8%と高い伸びを示した一方、法人の薬剤師は同0.6%低下した。

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