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健保ニュース 2019年8月合併号

中医協が一巡目の議論とりまとめ
機能強化加算など対立軸

中央社会保険医療協議会(田辺国昭会長)は7月24日、次期定時診療報酬改定に向けた一巡目の議論の概要をまとめた。乳幼児期から高齢期、人生の最終段階までの年代別・世代別の課題と、患者・国民に身近な医療のあり方や働き方改革など、昨今の医療と関連性の高いテーマに関する課題を整理した。

年代別の課題では、発達障害児や慢性疾患を持つ子どもに学童期以降も継続的なケアが必要とする意見や、働く世代で生活習慣病の対策と合わせて女性に多く見られる疾患に対応するなど、さらに取り組みを進める意見が出ている。

患者・国民に身近な医療のあり方では、かかりつけ医機能の推進に向けて、前回改定で新設した機能強化加算について、支払側委員から算定状況のデータをもとに有効に機能しているかどうかなどの検討を求める意見が出ている。診療側委員からは、一定以上の技術を提供する体制をとっていることを明示できる仕組みが必要とする意見があった。かかりつけ薬剤師に関しては、医療機関における薬剤師業務の評価や、地域に貢献する薬局と調剤に偏重する薬局で調剤報酬上の差別化を進める必要性を指摘する意見があった。このほか、まずはかかりつけ医に行くことを患者に意識づけるため、前回改定で400床以上の病院まで拡大した定額負担の対象範囲を広げるよう求める意見が出ている。

秋からの二巡目は、従来どおり入院、外来、調剤といった個別テーマに分けて議論する。1月から凍結されている妊婦加算は二巡目から議論され、委員から妊産婦が納得して対価を支払う仕組みの構築とともに、産婦人科以外に受診したときの情報連携が重要とする意見が出ている。(主な課題に対する意見は次のとおり)

【働き方改革と医療のあり方】

働き方改革に伴う費用をめぐっては、支払側から▽入院基本料の議論を行う前に非効率な医療がないか検証する必要がある▽医師の働き方改革に伴って追加的に生じるコストを患者が負担することは非常に違和感を覚える─といった意見があったのに対し、診療側は、▽働き方改革により医療従事者の勤務体系が変わり、人件費等の増加が見込まれるため、入院基本料のあり方を検討する必要がある▽医療を受ける患者・国民の医療安全に資するものであり、それを支えるためには一定財源が必要である─など、両側で意見が分かれている。

看護師や歯科医師、薬剤師に関しては、働き方改革の観点から、看護師の月平均夜勤時間72時間要件や2人夜勤体制について柔軟な方法を検討するなど、実態を踏まえた対応を求める意見があがっている。

【医薬品の効率的で安全な使用】

経済性や安全性を踏まえた医薬品の採用リスト「フォーミュラリー」については、病院や地域の取り組み自体は評価するが、診療報酬上で評価する性質のものではないとの意見があった。健保連の幸野庄司理事はこの日の会合で、「たとえば何らかの算定要件にフォーミュラリーの策定を盛り込むというような診療報酬上の対応については必要である」と述べた。

長期処方の適正化に向けた対応では、分割調剤に関して認知度が低く、処方せんが複数枚に分かれるなど、制度が複雑で普及が進んでいないため、活用しやすい仕組みの検討を求める意見が出ている。このほか、多剤服用により副作用などの有害事象を起こすポリファーマシーへの対応で、外来時のかかりつけ医と薬局との連携や、入院時の医療機関における病院薬剤師の役割を重視する意見があがっている。

【地域づくりにおける医療】

地域の状況を踏まえた入院医療については、支払側が前回改定による評価体系見直しの効果検証を最優先で実施し、今後の対応を検討する必要性を指摘した。診療側は病床数が要件に入っている診療報酬の項目について、地域によっては病床数に関係なく役割を果たしている医療機関があることに留意が必要であるとした。

地域医療構想への対応は、診療報酬で後押ししていく観点から議論していく必要があるとする意見があった一方、地域医療構想に寄り添う範囲での診療報酬上の対応にとどめるべきとの意見もあった。

【ICTの利活用】

オンライン診療について、支払側から厳格な要件により算定が少ない状況や、働く世代で治療の脱落を防止する観点から、安全性に支障がない範囲で要件を緩和して普及を求める意見がある一方、診療側からオンライン診療が対面診療と同等である根拠を求める意見や、対面診療を受けられる環境づくりが重要で医療にアクセスできない場合に限ってオンライン診療を活用するといった意見が出ている。

オンライン服薬指導に関しても医薬品医療機器等法改正の動向を踏まえて推進を求める支払側と、オンライン服薬指導が可能となる医薬品の範囲を必要最低限にとどめる必要性を訴える診療側とで意見が異なっている。

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