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ほっとひと息、こころにビタミン vol.90

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

人との比較、大切なのは自分の気持ち

私たちは、気が付かないうちに人と自分を比べています。しかも、「隣の芝は青い」と言われるように、他人のものはよく見えてしまいがちです。

そのように他の人のことがよく見えるのは当然です。誰でも自分の良くない部分は人に見えないようにするので、他の人の目には良い面ばかりが入るからです。一方で、自分のことは自分に隠しようがないので、良くない面も含めて、全てが目に入ってきます。

そうすると、自分が人よりも劣っているように思えたり、人が自分よりも優れているように思えて、うらやましく感じたりして、落ちこんだり、さらには嫉妬したりするようになります。

人と自分を比較するのは、悪いことではありません。人と比べることで、自分の足りないところが分かって、それを改善していくきっかけになります。しかし、自分の役に立てるためには、他の人との比較が自分の役に立っているかどうかを、冷静に確認する必要があります。

そのきっかけとして使えるのが、自分の気持ちです。他人と比較することで自分がどのような気持ちになっているかを確認してみると良いでしょう。冷静に比較して安心できているようであれば、自分の良い面が見えています。

もし、どこか引っかかるような気持ちがあるようならば、比較することが自分の役に立っていない可能性があります。その場合には、比較するのをやめて、自分がどうなると良いのかを考えてみてください。そして、自分が希望する状況を実現するための手立てを具体的に考えて、少しずつ取り組んでいくようにすると良いでしょう。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。

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