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ほっとひと息、こころにビタミン vol.89

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

ネット情報だけに とらわれない工夫

ネット時代になって多くの情報を簡単に手に入れることができるようになりました。分からないことがあっても、ネットで調べるとすぐに分かります。記憶するのが苦手な私にとっては、ありがたい時代です。

その一方で、さまざまなネットの問題が指摘されるようになっています。ネットで興味を持ったニュースについて妻と話すことがありますが、それぞれが同じニュースサイトを見ていても、表示されるニュースが微妙に違っていることがあります。主要なニュースは別として、他のニュースは個人の興味に合わせて送られてきているようです。

そうすると、関心がある情報だけに、そこに書かれていることをそのまま信じてしまいそうになります。自分が知っている情報とは違う見方の情報を他の人が口にすると、その人が間違っているように思えてしまいます。その結果、ネットの世界に入り込んでしまって孤立し、精神的に追いつめられてしまうことさえあります。

そうしたことを避けるためには、意識的にいくつかの違う媒体から情報を入手するようにした方が良いでしょう。ネットだけでなく、本や新聞などの紙媒体、さらにはリアルな人間関係など、さまざまな媒体で情報を集めることです。また、自分の考えと違う情報に意識的に目を向けるようにしましょう。自分の思いや考えと違う情報に目を向けるのは気が進まないかもしれませんが、そうした情報こそ、考えの幅を広げるために大切です。その結果、今まで思い付かなかったような発想が生まれることもあります。こうした工夫は、人を介したうわさ話の対処法としても役に立ちます。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる!うつの人が見ている世界』(池田書店)など。

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