健保ニュース
健保ニュース 2025年11月下旬号
医師偏在の重点対策
区域設定に保険者協議会も関与
厚生労働省は14日の地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(座長・遠藤久夫学習院大学長)に、人口減少より医療機関の減少スピードが速いなどの「重点医師偏在対策支援区域」について、昨年末にまとめられた「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」に沿って、同省が提示した候補区域を参考に都道府県が地域医療対策協議会、保険者協議会と協議した上で設定することを提案した。
併せて、当該区域で優先的に支援する医療機関を選ぶ際の考え方を整理して示すことなどを提起した。委員から異論はなかった。
医師偏在対策に向けては、対策パッケージで、各都道府県が医師の偏在状況を示す指標などを考慮して重点区域を設定し、優先的かつ重点的に対策することとされている。
また、当該区域の医師確保推進のための医師偏在是正プランの策定も盛り込まれている。この中には経済的インセンティブも含まれており、当該区域で従事する医師や、当該区域に派遣される医師への手当の増額を保険者が負担することとしている。
この改正を含む医療法改正案は、先の通常国会で提出されたものの審議入りせず、臨時国会で審議される予定になっている。
健保連の伊藤悦郎常務理事は医師偏在是正対策について、「医師少数区域だけでなく、多数区域もセットで総合的に取り組むことが重要だ」と指摘した。
その上で、支援対象の医療機関を選定する協議に保険者が参加することを踏まえ、「保険者にもわかりやすいように、データや考え方を示してほしい」と要望した。
川又竹男構成員(全国健康保険協会理事)は医師偏在是正プランについて、「都道府県の医師偏在対策の策定、実施の際に保険者が適切に関与できるよう、ガイドラインに記載してほしい」と述べ、厚労省の提案を支持した。
医師少数区域設定に
「へき地尺度」を反映
厚労省はこの日の会議に、令和9年度からの次期医師確保計画における医師少数区域の設定にあたり、現行の医師偏在指標に「へき地尺度」を組み込み、区域の地理的要素を反映させることを提案した。
具体的には、現状の「医師偏在指標の下位3分の1に該当する区域」に加え、「中位3分の1の区域のうち、へき地尺度が特に高い(上位10%の)区域」を新たに医師少数区域に設定するとした。委員から異論はなかった。
同検討会では、医師少数区域の設定に地理的要素を反映することで合意している。厚労省はへき地尺度の導入でこれを具体化する方針だ。
へき地尺度は、▽人口密度▽最寄りの2次・救急医療機関までの直線距離▽離島▽特別豪雪地帯──の4項目をもとに算出される。今年度の厚生科学研究班で、松田晋哉構成員(福岡国際医療福祉大ヘルスデータサイエンスセンター所長)を研究代表者として、より精緻なへき地尺度の開発に取り組んでいる。
伊藤常務理事はへき地尺度を組み込むことで、医師少数区域を「うまく補正できるという印象だ」と評価した。
その上で、追加される区域について「医師数が少ないわけではないので、目標医師数は増やさずに、幅広い診療機能の強化やオンライン診療の活用などで、地域で不足する機能を補完すべきだ」と主張した。
土居丈朗構成員(慶應義塾大教授)はへき地尺度について、「医師偏在指標と組み合わせることに意味がある。医師偏在指標だけでは取りこぼしていた区域をきちんとカバーできるようにしてほしい」と述べ、研究に期待を寄せた。